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★人物紹介【ミーチュン編】

人物紹介というよりは20話の補足みたいな内容です。

もちろんこの挿話を読まなくても、話がわかるように21話は打っていきたいと思っています。(´ω`)ノ

例によって人物イメージが壊れるかもしれないので要注意です。


全然明るい話になりませんかった!


ミーチュンはまだまともに人の知り合い居ないので、シャルロードとキュアンに焦点当ててるってことで許して下さいΣ(´Д`;)

ミーチュンのお兄様達は一切登場してないので、紹介してもしょうがないですし。


ほいでわ、読了お願いします。

 魔界『シャングリラ』を東に抜けた場所。

 そこに人族の国『ムーア連邦国』がある。

 そのムーア国内を更に東に行くと人族の集落『クロロフィルンの町』がある。

 そして、その町に『冒険者ギルド』という人族の集まりがある。

 そのギルドが所有する蔵の近くで、我は一人の子供を抱えていた。その子供には我の暗朱色の上着を着せている。


 子供の名前は『シャルロード』。

 人族の『法術師』である。


 シャルロードが複数の暴漢に囲まれ、あわやという所で救出に成功する。思考能力を著しく奪うような薬物を使用されている事が分かり、その解除の為、それと・・・その自我を喪失している状態を利用し、『契約』を完了させた。


 その直後の事。


 背筋にヒヤリとした殺気を向けられ、我はその場からシャルロードを抱えたまま飛び退いた。半拍も遅れずにその場の空を斬る音がした。


 この太刀筋、殺気の主は理解している。


「用事は済んだのであるか?キュアン殿。」


 シャルロードをその場に残しても怪我をさせられる恐れはない相手だが、逆に我が身が危なくなるであろう。


「・・・・・・。」


 降って湧いたように突然現れた気配、そして無言と無表情の返答無しの様子。今現在進行形で隙など全く無い。分かってはいたが、相手はかなりの手練れである。本調子でない我がその相手をするには、腕の中でボンヤリとした表情を浮かべる切り札が必要なのだ。

 案の定、相手の無表情な視線が我の腕で抱えているものに移った。


「これは我がやった状態ではないのであるぞ。」


 これは暴漢の使った薬による症状である。我との『契約』にて多少、状態異常耐性が付与された筈であるから、次期に目を覚ます筈。

 しかし、相手から返ってきたのは意外にも感情の込もった視線。


「シャルから、お前の魔力の気配がする。」

「っ!?・・・貴殿、そこまで分かるのであるか。本当に何者なのだ?」


 これには驚いた。我の記憶違いでなければ、目の前の人族の剣士はかの『法術』の使い手ではなかっただろうか。それなのに『魔力』の気配を、しかも人物の特定までも可能な様子である。


「前にも言った。お前には関係無い。それより、早く離せ。」

「さすれば、貴殿は我を斬るであろう?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そんな事はしない。」


 溜めが長すぎるのである。


 それに、相手は我だけを的確に狙って殺気を込めて斬りつけてきた相手なのだ。そんな安易に信じられるわけがない。

 我は疑いの視線を相手に向けた。


「本当、だ。俺としては今すぐ斬り殺してもいいが。」


 予想であるが、我に害する事を子供に知られたくないと思われる。


「俺をギルドに足止めさせるようにご丁寧に妨害術を組んでいた挙句、シャルを助ける事すらしなかったら直ぐにでも切り刻んでいた。」


 ・・・我の『切り札』はその威力を遺憾無く発揮してくれているようだ。

 事実、相手の視線は未だに我が抱えている人物から離れていない。その視線に僅かではあるが、異常な執着心にも似た『ズレ』が垣間見えた。普通だと認識される範囲には本来無い筈の『ズレ』である。


「簡易『契約』しただろ。」

「・・・。」

「俺が少し目を離した隙にヤってくれるもんだ。」

「・・・・・・。」


 初めとは立場が真逆に黙秘を決め込んだ我に、相手は殺気を容赦なく送ってくる。周囲の空気がピリピリと痛いくらいに張りつめているのは、夜風の所為だけではないであろう。下手な返答をした瞬間にその右手に構えられている刃が我を襲うのは容易に想像できた。その相手は先程『そんな事はしない』と言っていたばかりなのだが。


 暫く互いに沈黙を保った後。

 剣士はゆっくりと口を開いた。


「一つ聞くが・・・契る為にした行為は何なんだ?」


 『契約』には当然、それを施行する為の術言とお互いにを認識する為に『ある行為』をしなければならない。それが『契る』という事になるのだ。

 魔力を認識し、その術様式まで見抜く相手には脱帽ものである。


 剣士の視線が『コレには答えろ』と語っていた為、我は暫し逡巡して返答した。


「・・・それを知ってどうするのであるか?」

「時と場合によっては少し、斬る、・・・・・・かもしれん。」

「・・・・・・。」


 我の中で『黙秘続行』で定まったことは説明するまでも無い。

 かなりの高確率で斬り捨てられるであろう。


「うぅ・・・。」


 これは子供の声ではない。我の傍ではなく、少し離れた街灯や月明かりが届かぬ場所で呻き声が聞こえた。つまりは先程我が昏倒させた暴漢共である。

 理解の早い目の前の相手の眼付が鋭くなった。


「生かしておいたのか?」

「我の目的は無益な殺し合いではないのでな。」

「なら、始末は俺に任せてもらう。」


 相手はゆっくりと立ち上がり、呻き声が聞こえた暗がりに歩を進めていった。しかし数歩で振り返り、こちらを見遣ってきた。


「『契約』については後で聞かせてもらう。それと、服。前をきっちり合わせろ。」


 シャルロードをすんでの所で救出した際、あられもない姿だった。それ故現在着せている我の服の合わせ目が、若干肌蹴ていた。・・・細かい奴である。

 そして『契約』については言い逃れができそうに無い事に溜息をついた。出来れば子供が目を覚ました後に実行しなければ、自分の命の危険を伴うであろう。


 その姿が闇へと呑まれた後、更に離れた場所で悲鳴や許しを請う声が聞こえたような気がしたが、聞こえなかった事として処理した。

 自分の腕の中で眠っている人物へと視線を遣る。


 『僕はシャルロード・キアっていう冒険者。』

 

 そう名乗られたのは数日前の事。


 初めはその身に着用していた服の効果もあったのか、特に何を思うでもなかった。しかし、始め以降も度々垣間見せる才能の他に、その性格・思考に興味を引かれた。

 そう、『興味』であって『好意』では無い。

 この子供は『法術』の使い手で、『人族』である。

 関心の強さならキュアンという法術も使う事のできる剣士の方が高い。我と同等、もしかするとそれ以上の剣の使い手。しかも現在進行形で謎が増え続けている要注意人物である。しかしながら、その性格は冷静なようで少々破綻しているようにも思う。シャルロードと一緒に居る時は比較的保護者としてまともに見えるが、シャルロードが居なければ、周囲に対して恐ろしい程冷徹になれる様子。


 話を戻す。


 そんな子供に我が今回『契約』まで至った理由。それは『魔力』である。この子供は『法力』の他に『魔力』をも宿していた。人族にこれ程まで珍しい才能を持つ者がいただろうか?今までお目に掛かった事が無い。

 特にあの移動術。その奇異性と共に多くの魔力を浪費するようである。つまり、子供の『魔力』の保有量はかなり高い水準にあるという事。

 定期的に自身以外からの『魔力』の補給が必要な我には願ってもない『獲物』であった。・・・筈であったのだ。


 『ミーちゃんがいい。ミーちゃんだからいいって事だよ!』


 我は分からなくなっていた。

 この子供を犠牲にしてまで己がしたかった事は、本当に魔族、兄者達にとって良い事であるのか。今の自分が、本当にそれを望んでいるのか。

 我は分からなくなってしまっているのだ。


「・・・『女神』の伝説。今一度信じてもよいのか?」


 我は、独り呟いた。


 しかし、遅い。

 月明かりに照らされたその寝顔は安らかであるが、一向に目を覚まさない。我の魔力は『契約』にて効力を発揮しない程、既に枯渇し切っていたのであろうか?それとも薬の副作用なのであるのか?


 この子供が二度と眼を覚まさない。


 そんな事を想像して戦慄する自分が居た。

 あの剣士に殺されるからであろうか。我の身にかかる術が解除され、人族の研究が進まなくなるからだでろうか。魔力の補給が出来なくなるからであろうか。それとも・・・と、頭の中で言い訳を並べ続ける。後々隠匿し、蓋をしたいある感情が、この時既に生まれ始めていたのかもしれない。

 だがしかし、後で思えばなんと愚かな事か。我と子供は『契約』を施行している。契約相手の身体に著明な変化があれば直ぐに分かった筈だ。だが、思考が及ばなかった我は焦燥に駆られた。


「シャルロードっ!」


 常の我ならあり得ない程大きな声で子供の名前を呼んだ。



***



「血の匂いがするのであるな。・・・殺ったであるのか?」

「まさか。」


 シャルロードが目を覚ました後の事である。

 

 戻った剣士から僅かではあるが、血臭がするのを声を潜めて指摘する。

 剣士は我の言葉に意外な返答を返してきた。周囲に対して無関心な相手が自ら始末を買って出たのだ。それ相応の事をしていると思ったのだが・・・。


「一瞬で楽にするのは惜しいだろ?精々長く苦痛を味わって貰うさ。散り際までそうでないと、俺の気が済まない。」

「・・・・・・。」

「どーした?ミーチュン。」


 我は呆れを通り越してしまった。

 この剣士を敵に回すのは、現在の我では分が悪過ぎであろう。


 才能はあるが浅慮な子供法術師と性格も能力も全て破綻しているような剣士。

 今後、もう少し人族に対しての考察が必要である、と、我は考えた。

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