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【14】特上級魔族『皇魔』

今回は週末に更新できました!ヨカッタ!

登録、評価ありがとうございます。

嬉しいので一人でニヨニヨしてしまいました。(´ω`)ええ、危ないヤツです。


それでは読了お願いします。

 正座した私の前には、仁王立ちしたキュアン。


「その上級魔族を連れて歩く?・・・バカか。」

「で、でも見た目はフツーの人っぽいよ?」

「ハイクラス魔族特有の気配は隠せないだろーが。しかも言葉が通じないんじゃ猶更怪しまれるてあっさりバレるのがオチだ。」


 現在ミーちゃんを連れて行けないかキュアンに交渉中だ。

 彼のBL将来に大きく関わる相手かもしれないってのに、当の本人はつれない反応だ。痛いところを突きまくられて、オチまでつけられてしまった。


 因みにキュアンのミーちゃんにやられた傷は極軽傷だった。だけどやっぱり靄みたいなものが掛かっていたので取り除いて治癒したら、キュアンは何だか例えようのない複雑そうな表情をしていた。声を掛けたら直ぐにいつもの顔に戻ったから、気の所為だったのかもしれないけど。


 話を戻して考える。キュアンが頑ななのはミーちゃんが魔族っていう事から来る蟠りも少しはあるやもしれない。いや、そこが一番大きそうだけど。キュアンは何度もグールと戦った事あるらしいし。


「そこは何とかします!」

「そんな事出来る訳ないだろ。」


 やってみんとわからないっスよ!


 スクッ、___ビターン!


「シャル!?」


 善は急げとBLワールド堪能の為の行動を起こそうとしたが、それに気後れしたのか、足がその情熱に付いてこれなかったようだ。

 ・・・つまり、勢いよく立ち上がろうとしたけど、正座で痺れた足の為に転んだ。


[大丈夫であるか?シャル殿。]

「あ、ありがと。」


 あのキュアンよりも素早く動いた人物が。

 行き成り恥ずかしい場面を見られたが、ミーちゃんは動じる事無く私を助け起こしてくれた。


 ジェーントールメーン!

 マジ惚れる!


 私の後ろ頭にキュアンのブリザード級の冷たい視線が突き刺さっているけど、今は何とかスルーの方向へ。後頭部が凍傷気味だけど、今は先にするべき事があるのだ!

 だってキュアンとミーちゃんなら、外見だけ考慮したとしてもBLカップルとしては破格レベルだ。こんな機会この先あるか分からないし、絶対逃がしたくない。


 より強固に決意を固めた私は、姿勢を正してミーちゃん本人に聞いてみる。


「ミーちゃん、魔族の気配は消せないの?」

[それが出来れば一番よいが、無理だ。気配とは万物が存在する上でどうしても発生するもの。一時的に消したり縮小する事は可能でも、常時完全に『魔族』であるという気配を消す事はできぬ。いずれボロが出るであろう。]

「うーん・・・じゃあ術でできないか試してみてもいい?」

[そんな事が人の術で可能なのか?]

「ちょっとやってみる。」


 私は脳内で『魔族の気配』とやらを遮断できる要素を探り始めた。

 どうやらやはり法力による法術が唯一、魔族特有の力を遮断できる遮蔽物となるようだ。攻撃法術として術を展開しない限りは、ミーちゃんに害を与える事はなさそう。って事はこの法術を彼にコーティングしてみてはどうだろうか?もちろん常時発動型の術になるので『無』系統との掛け合わせが必須だ。


 私にしては珍しく本気で術の構築に勤しむ。


___ここまでハイスペックなBL要員を逃してなるものかっ!


 これが私の本音、そして原動力。


 この素晴らしき原動力のお蔭か、自分へのガード術を構築するより遙かに高度な集中力を持って程なく術が完成した。名付けて『魔族隠し』!

 ・・・私に名前のセンスはありません。ハイ。


[むぅ!?・・・これは法術とやらか?大丈夫なのか?]

「ミーちゃんには害の無いように構築してるつもりだけど、どこか痛むとこある?」

[いや、確かに大丈夫そうだ。しかしこれだと強力過ぎて、いざという時自力で破れぬぞ?闇魔術による自己防衛ができぬ。]

「ああ、それは困るね。じゃあ弱くするよ。」


 えーっと、コンクリブロックなのを薄皮一枚くらいに調節するか。


「・・・どう?」

[うむ。問題無い・・・と言いたいところだが、今度は少し気を抜くと直ぐに破ってしまいそうだ。すまぬがもう少し強度を上げてくれ。]


 ・・・注文が多いゼ。

 んじゃ間を取って、厚切り食パンくらいかな?

 そーだ、どうせならこの『魔族隠し』に高度念通話を解析して音声化できる術を組み込めないだろーか?キュアンとミーちゃんのコミュニケーションが取れる手段は確保しておきたい。彼等の健やかなBL関係発展の為にも。


 術の調節に手間取る振りをしながら、再度新しい術の開発に勤しむ。今度は『魔物使い』の能力を元に、法術と魔術を同時構築、展開させるという荒業だ。寧ろこっちの方が難しい。


「お、おい、シャル?」

「・・・むむうぅ~。」


 うーんうーん、もう少しなんだけど・・・。よっしゃ、おっけ!


「できたっ!」

「うむ、強度も程々に丁度良い。これならば大丈夫だ。」

「なっ・・・!魔族が喋っている!?」

「むぅ?貴殿も私の言葉が通じるようになったのか?」

「シャル、どういう事だ?」


 キュアンがミーちゃんを無視して私に迫ってきた。

 ん、もう!迫る相手が違うでしょ?とか、冗談を言える雰囲気では当然、ない。


「お兄ちゃんが言った通りに魔族の気配を消してみました!」

「自慢げに言うな!・・・いや、自慢してもいいくらいか?いやいや、違う。」


 キュアンが動揺している。初めて見た貴重な状態だ。

 ええ、大分萌えます。涎がデマス!


「それは法術のひとつなのか?」

「うん。」

「そんな特殊な術、聞いた事もない。じゃあ、アイツが喋っているのはどうしてだ?」

「えーと、僕のオリジナルの術。」

「お前・・・法術の天才か。」


 残念!『天才を超える』です!


「・・・はぁ。もうここまでしたんなら拒否する気も起きんが、コイツは魔族でグールの親玉、そしてカルアのオッサンを瀕死に追いやり、俺とお前をも殺しかけた。それだけは忘れるな。」

「あっ・・・、うん、わかった。」


 そ、そだね。私の到着が遅かったらカルアのオッサン本気で死んでただろうし。

 ダリアさんも、マッチョさん達も大怪我した。


「あれは向こうから襲ってきた為、正当防衛として対処したまでだ。我から仕掛けた訳ではないのだが。」


 うーん。至極真っ当な意見だけど、それじゃ駄目なんだよね。


「あの、ミーちゃん。もし今後何があろうとも、人はなるべく殺さないで。ミーちゃんは実力があるから出来るでしょ?」

「確かに出来ない事はない。だがそれは何故だ?」


 えとえと、何て言ったらいいかなぁ?

 疑問符を浮かべるミーちゃんへの説明に詰まっていると、助け舟の如くキュアンが静かに、冷たいと感じるような声音で言った。


「・・・人ってのは自分の都合のいいように解釈する生き物だ。お前にとって『正当防衛』だとしても、相手は『魔族に殺された』としか受け取らないって事だ。」

「成程な。気を付けよう。しかし、それは思考を持つ者ならば誰にでも当て嵌まるのではないか?現に魔族にもそういう解釈を行う短絡的な者も多くいる。種に関わらずな。」

「ふぅん。魔族にもそんな連中が居るのか。中々興味深い情報だな。」


 な、何か美形二人で難しい話始めちゃった!ちっとも甘い雰囲気ではないけど、博識な点では気が合うのかも。今後が楽しみでやんす。ぐへへへっふ。

 

 そんな溶けた頭が光と共に砂となって消えたグールを思い出した。


「あっ、そういえば、僕・・・・・・グール何人か倒した。人には手を出すなとか言っておきながら・・・ごめんなさい。」

「???何を謝る必要がある?あれはただの土人形ぞ?」

「グールが、土人形だと?」


 私は『世界マップ』のお蔭で知ってたけど、キュアンにとっては驚きの内容だったようだ。そして、さっきから驚くばかりのキュアンは今までの彼のイメージには無くて新鮮だ。喜ばしいが、口元が緩んでしまうのが難である。


「我々魔族の住む地『シャングリラ』の奥地の土に限定されるが、その闇魔力を帯びた土を媒体に作り出した土人形がお前達の言う『グール』だ。」

「今回のグールはお前が作り出したのか?」

「うむ。訳ありで大分荒い造りになってしまってはいるが。一応人族を無暗に刺激しないよう、相手側から手を出してこない限り手を出さない、という思考を持たせてはいたが・・・無駄だったようであるな。」


 だから攻撃法術使ったら飛び掛かってきたのね・・・。しかしその土人形とやらに、人はあんなに苦労させられてるんですけど。それを簡単に造り出してる魔族って、私が思ってるより大分凄いのかもしれない。


「あれで大分荒い造り、か。・・・それよりも。」


 キュアンは少し考える素振りの後、私の方へ向き直ってきた。

 ・・・何だか嫌な予感が。



「シャル、グールと戦闘したのか。」

「っ!!・・・あっと・・・その、お、お兄ちゃん?」


 顔が・・・顔が怖いよっ!?

 顔の造りがいいのと実力の所為か、迫力が物凄い。


「さっきの才能を見る限り、大方法術の攻撃系を使ったんだろーな。しっかし、前に飛び出て来るなという俺の忠告を無視した挙句、自分から危険に首突っ込むとはなぁ?」

「あっ・・・あうぅ。」


 返す言葉も御座いません。


「しかもその恰好は何だ?最初見た時、めが」

「それは傷付く例えです!」

「・・・・・・似合ってるとは、思った・・・ぞ。」

「それもどうかと思うよ!?」

「じゃあ、シャルと気付くのに時間が掛かってしまった。」

「『じゃあ』って何!?」


 明後日の方向を向いてとぼけるキュアンにジト目を送ったが、スルーされる。


「・・・カチュアさんに無理やり着せられたんだよ。」


 私はカチュアおねい様に裏切られた顛末を、ややふて腐れた顔で説明した。


「ふぅん?いい仕事するなぁ。」

「お兄ちゃん!?」


 ってか、まさかキュアンもイビリ行事に参加なさっている?

 キュアンはそんな事無いって信じてたのに!これは問い詰める必要がありますなっ!

 地魔術師のザラキィと同じ反応をするキュアンに向かってメンチを切る。


「い、いや、シャルも知ってるだろ?女神信仰の元になってる『金色の乙女』の話。その乙女が着ている服を模してるんだろーな。そのローブ。」

「え?こんじきの、メオト?」


 なんてゴージャス夫婦なのか!


「『金色のオ・ト・メ』だ!」

「失礼だが、見分を広げる為に知りたい。その『金色の乙女』とやらは、一体どんな話ぞ?」


 聞き間違えてアホッ振りを披露してしまっていると、ミーちゃんが話に入ってきた。

 タイミングとしては失礼のないジャストな所だ。


 魔族なのに礼儀を弁えたジェントルメンなのかしら?

 そんな美形魔族、・・・萌えるしかない。


「・・・魔族のアンタが何でそんな話知りたがるんだよ。」

「言葉が通じてからは、貴殿にはまだ自己紹介していなかったな。失礼した。我は魔族『皇魔』の末子、ミーチュンと申す者。趣味で人族について研究している。」

「何だとっ!?」

「お兄ちゃん、どーしたの?」

「『皇魔』って言ったら、魔王になる種族じゃないか!」

「ふむ、貴殿は人にしては随分博識な様だな。」


 えええぇぇ!?ま、魔王!?

 行き成りの展開に頭が着いていかないのですが。


「ここ数か月、魔王の存在が確認されていないと聞くが。まさかお前が・・・」

「確かに父君は数か月前に大往生された。今は次代魔王の選定期間だが、我は兄弟の末子。現状我など兄者達の足元にも及ばん。そんな事にはまずならんだろうな。」

「大往生?・・・誰かに、倒された訳じゃないんだな?」

「そうだ。身内で看取った。」


 えーと・・・『潜在能力は兄弟一高い』とかステータスに上がってたことは、言わん方が無難か、な?


「じゃあ末子のアンタは、その選定とやらには参加せずにのんびり趣味の研究してるだけって訳か。」

「うむ。」


 やれやれ・・・と、悟りの境地に至った様子のキュアン。風に吹かれる柳の如く、全てを受け流してしまえる柔軟性で溢れている。何だか吹っ切れた感じもプラスされているよ。・・・誰のせいかしらん。


「後は・・・。」

「な、なに?まだ何かあるの?」


「名前・・・『ミーチャン』じゃなかったんだな。」


___えっ?

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