【13】戦場のメガミサマ
週末に更新できなかったぁ!・・・ので今更新します。眠い。
またしても、より一層内容のまとまりが悪いのでいずれ直・・・せたらいいなぁ。
でわでわ読了お願い致します。
「・・・め、女神様?」
「ダリアおねいさん、目ぇ悪くなった?」
「えへへ、嘘嘘。弟君でしょ?弟君は凄い法術師だったんだねー。魔族から受けた傷って、治りにくいし跡が残るので有名なのに、キレイに治っちゃってる。お嫁入りできないかもって覚悟で来たのに、何か安心しちゃったー。」
ダリアさんはそう言って照れたように笑った。
単なる緊張屋さんなのかと思ってたけど、そんな理由もあったのか。勝手に勘違いしていたのが申し訳ない。
そしてやはり女神コールは新人イビリの一環か。だって皆共通して『女神』って言うのは口裏合わせないとできないでしょ?・・・って事は、まさかさっきのナイスミドルさんとワッチョ達の件も自作自演だったとか!?どーりでBL世界でもないのに男を襲うとかおかしいと思ったよ。元々そっちの趣味だという線も捨てがたいけど、そんな夢一杯のBL情事がその辺にゴロゴロ転がってるわきゃ無いか。
「ダリア程の腕でも大変なの?魔族の数自体は20体程度でしょう?」
ダリアさんの傷が治癒したのにもかかわらず、カチュアさんは優れない様子だ。何だか深刻な表情で問いかける。それを受けたダリアさんの表情も沈んでしまった。
「うん、そーなんですけど、・・・グールよりも上の階級の魔族が来ちゃって。戦況が一変しちゃったんですよぉ・・・。」
へっ!?そーなの?
キュアンとか戻ったマッチョさんとかキュアンとかキュアンとかキュアンが心配だ。
「戻って来てくれた戦士達の士気が高くて、今は何とか他のグールは抑えてる。でも主力だった親っさんと兄君が、その魔族を何とか相手してくれてる状況なんだ。ちょっとヤバいかも。」
「何だソリャ!?グールだけでもギリギリの戦力だってのに、主力が抜けたんじゃこの部隊は余り持たないんじゃねぇのか?」
「そんな・・・。」
ダリアさんが持ってきた情報に顔を青くする後方支援メンバー。
上級魔族っ!?
しかもキュアンが応戦してるって!?
私は直ぐに『地図』と『慧眼』を展開させてキュアンの安否を確かめる。
・・・おぉぅ、かすり傷さえ負ってないみたいだ。
ホッ、よかった。さすがキュアン!
次はキュアンが応戦しているらしい上級魔族を探ってみた。
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ミーチュン(88)魔族♂闇魔術剣士
魔族の特上級に分類される『皇魔』の中でも年若く、
兄弟の末っ子として甘やかされて育った。しかし、潜在
能力は兄弟一高い。家族に内緒で以前から興味のあった
人里にやって来た。そこで見つかり、脅威と見なした
ムーア国の騎士に追われている。その時に帰る方向を
見失ってしまった迷子。
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____迷子~!?
しかも甘た末っ子魔族・・・ね。
年は88って事だけど、種族の中でも年若いってあるし、魔族だけに人とは年の取り方が違うってのは容易に想像がつく。
BL要員になるだろーか。
おっと、イカンイカン。
今はキュアンの元に行くのが先決じゃい。
話が通じる相手なら、魔族のミーちゃんも出来るだけ何とかしてあげたいとは思うけど、二兎追う者は一兎も追えず!優先順位はしっかり定めて行こう。
キュアン、今助けに行くゼっ!
「あっ、ちょっと駄目よシャルくん!」
戦闘前線に向けて駈け出そうとした私はカチュアさんに引き留められてしまった。
ぬぬぅ、シャルロードの力では振りほどけん!とほほい・・・。
「離しておねいさん!お兄ちゃんのトコに行く!」
「ホントに危ないのよ!上級魔族の正体も分からないし、何とか被害を最小限に抑えて部隊を撤退させるのが先決よ!戦えない貴方が行ってもしょうがないの!」
必死で止めてくれるカチュアさんには悪いけど、そんな訳にはいかない。
___ヴォンッ
「きゃっ!?」
カチュアさんの周囲を光の柱が覆い、周囲に光りの粒が散らばった。
おおぉ~!思ったより幻想的で綺麗だ。
そうそう、これは私が放った法術の攻撃系統だ。もちろん人には何の効果も無いらしい。カチュアさんには大変無視訳ないが、それが放つ光は人である彼女に目くらましまでは行かずとも牽制にはなったようだ。
私の腕を捕えていたカチュアさんの力が緩んだ。
___チャンスッ!
「シャルくんっ!?」
私はカチュアさんの声を背に受けながら、前線へ向けて走り出していた。
***
「女神様っ!?」
「女神様が降臨なさったぞ!」
そこ、うっさいデース!
そのネタにはもう飽き飽きしてるんだから、早く次のネタに移行しておくれ。
「女神様、お願いです。彼を助けて下さい!」
むっ、怪我人発見。これは放っておけないですな。
___法術発動!ピロリロリーン!!
「女神様!この人もお願いっ!助けて!」
らじゃー!
道中にいる怪我人を治癒しながら進んでいると、二体のグールが飛び出してきた。
うひょわっ!?これが噂のグール!?
人の形はしてるけど、何だか泥とか粘土とかで作った素焼き人形みたいだ。頭部には仄暗い目が二つ。動いてるけど、生きてるって感じがあんまりしない。二体の見た目が少しも違わず同じで表情が無いのも生気が無いのを一層際立たせている。
うにゅにゅにゅ、とても不気味です。
牽制として攻撃法術をグールの直ぐ近くに放ってみるけど動じる様子全く無し。何だか違和感を感じて『世界マップ』の『グール』の項を更に詳しく脳内に展開してみる。
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グール
魔族の中でも下級に分類される。魔族特有の魔術耐性が
あり、中堅の戦士並みの強さも兼ね備える。使役する
上級魔族の実力に見合う数で出没し、その眷属・私兵と
して国々を脅かす驚異の存在。特に夜間に活発になる。
人族からは『魔族』に分類されるも、魔族からは魔界
『シャングリラ』の土を媒体にして作り出す土人形に
しか過ぎない。どれ程高度な術式を組み込み、魔術を
注ぎ込むかによってその・・・・・・・・・・・・・
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___グールの正体は『土人形』でした☆
つまりは生き物じゃないって事でいいのかなぁ?
牽制に放った攻撃法術に反応したのか、さっきまでこっちに関心のなかったグールが飛びかかってきた。キリキリキリと関節部位の稼働音を響かせて行き成り動き出した上に、人にあるまじき動き方は正直ホラー並みに怖い。
「女神様っ!危ない!」
当然ひいぃ~っと竦んだ私だが、周囲の『女神』コールに意識を強制送還された。
このコールに助けられるとは・・・、何だか複雑だ。
「___しゃらくせぇ!」
およそ女神が使う訳無い言葉を発して、腹いせに周囲のグールを法術の攻撃系統で一掃していった。その女神幻想をぶち壊してやんよ!的な意味を込めて。
そうして周囲に光の柱と粒が現れては散っていく。光が拡散すると同様にグールの身体も砂埃となって宙に舞った。土塊を砂に戻してる感じなので、いい事かはわかんないけど罪悪感は湧かなかった。
キュアンは・・・っと、居た!
『地図』が示す通りに辿って行くと、キュアンと交戦している黒い物体が見えた。
ステータス上では、まだキュアンに怪我は一切無いので安心はしている。
しっかし・・・、スゲーとしか言いようがない。
人の反応速度超えてるんじゃないかな?アレ。
私の拙い動体視力じゃ残像とかが見えるだけ。時折甲高い音が辺りに響いているので多分剣で打ち合ってるんだろーなってのが辛うじて分かるだけだ。
・・・どーしよう、入っていける雰囲気じゃない。
あ、そーいや、カルアのオッサンはどーしたんだろ。
残像にはそれらしき人は見えない。キュアンと黒い魔族だろう影だけだ。
『地図』を展開させると少し離れた岩陰にいる事が分かった。サボってんのかと思ったけど・・・げっ、状態が『瀕死』を示している。私は慌てて走ってそこまで行った。
「カルアのオッサン!」
「・・・っ、・・・。」
血だらけでどうやら息も絶え絶えな為に声が出ないらしい。焦る気持ちを抑えながら法術を行使した。その甲斐あってか、カルアのオッサンも直ぐに全快する。
あれだけ瀕死だったのに、法術って凄いなぁ。
「・・・お前ぇ、本物だったんだな。」
「初めからそう言ってる。」
「そーだったか?別に『嘘つき』でもいいとか言ってなかったか?」
「うっさいなぁ。元気になったんならグール討伐手伝ってきなよ。もうほとんど残ってなかったけど。」
「どういう意味だ?上級のヤツが出やがってからは、どう考えてもうちの部隊が劣性だっただろぉが。死人が出てないのがおかしいくらいだった筈だ。」
前線に居なかったんだから、んな事知らんがなー。
確かな情報は、私の腹いせの為にグール達は次々と砂となり、残り三体くらいしかいなかった事だけだ。そして死人の姿も見ていない。死にかけだったのは何人かいたけど治癒したし。
「自分の目で確かめて来たらいいよ。僕はキュアンに加勢しに行くから。」
「そ、そうだっ!あのキュアンとかいう小僧はまだ戦ってんのか?」
「うん。そっちは何とかするから、オッサンは部隊の指揮を取っておいてよ。」
「・・・大丈夫なのか?」
「さぁね。なんせ『嘘つき法術師』だし?」
ニヤリと意地悪く笑って言う私に、オッサンは豪快に笑い始めた。
「がはははははっ!・・・・・・すまんかった。お前なら大丈夫だろぉよ。一瞬女神がお迎えに来たのかと思ったくらいだしな。しかも『オッサン』呼びだ。」
「あっ!それそれっ!!」
「な、何だ?」
ここいらでちょっと言っておかないとっ!
「あのねぇ~、スパイの次はマッチョに襲わせたり女物のローブ着せて『女神』とか法術師イビリ反対!兎に角これで気が済んだっしょ?今後は止めてよ?」
これでイビリ行事は終了させて欲しい。じゃないと今後安心してギルドの仕事受けられないよ。キュアンにも迷惑掛けちゃうし。
「・・・?何の話だ??」
おおぉ~っと、しらばっくれる気かこのオッサンめ!
「だから、マッチョに襲われたり『女神』呼びされんのもオッサンが考えた『嘘つき法術師』イビリなんでしょ?それを止めてって・・・」
「そんな事してねぇぞっ!それよりも襲われたってどういう事だ!?誰にだ!」
「ひゃぅっ!」
オッサンが私の両肩を掴んで眼前に迫ってくる。
オッサン、オッサン落ち着け!?
オッサンが眼前に迫ってきても嬉しく無いっ!
「な、名前は一人しか分かんない・・・っていうか、ナイスミドルさんが助けてくれたし、ナイスミドルさんのトコのメンバーみたいだったけど・・・?」
「ナイスミドル?」
「えっと、昼間に紹介された明るい茶色頭の眉間に皺がある人。」
「・・・レデュロスか。俺はそんな報告受けてねぇ。あの野郎・・・。」
『れでゅろす』がナイスミドルさんの名前みたいだ。
「僕がれずろす、・・・れでろす、・・・・・・ナイスミドルさんに内密にして欲しいって頼んだからだと思う。」
___ナイスミドルさん、貴方の名前は私にはちょっち難しいです。
「あの堅物の塊かがぁ?良く承諾したな。」
「えぇ?キュアンに知られたくないって言ったら直ぐに納得してくれたけど?」
「・・・成程。」
何だか神妙な顔つきでカルアのオッサンは頷いた。
・・・キュアン、君は私の知らない所で彼らに何かしたのかぃ?
***
部隊へ戻るオッサンを見送り、私もキュアンが居る場所まで戻ってみる。
・・・まだやってるよ。ホントどうやって入ろうか。いっそ攻撃法術使う?ミーちゃんにはカルアのオッサン殺されそうだったし。でもでも、魔族も生きてるし、単なる迷子だし、やっぱ可哀想だよねぇ。
途方に暮れて暫く二人の様子をボンヤリみていると、状況が動いた。
___しかも悪い方向に。
「・・・っ、シャル!?何で居るんだ!」
私の存在に気が付いたキュアンの気が逸れてしまった。当然彼と互角の動きが出来る相手はその隙を狙ってくる。
「があぁぁっ!」
「___ぐっ!」
相手の攻撃にキュアンが跳ね飛ばされ、攻撃を受けちゃったのか低く呻いた。
えっ!?まさか私の所為!?ヤダヤダ!
慌ててキュアンに駆け寄ろうとする私の背後に黒い影が現れた。
「シャル、逃げろっ!」
「にぅっ・・・」
黒い影は、私の首に腕を巻き付けて引き寄せ、力を込めて来た。息が詰まる。それはまさに一瞬の出来事で、私の理解が至る前に低音に分類されるような声が頭に響くように聞こえてきた。
[武器を捨てろ、人族。我の目的は争いではない。・・・やはり言葉が通じぬのか。]
これは地竜のリュイの時と同じ念通話っ!?
「念、つーわは、人に、つーじない、よっ。」
私は詰まる息を必死に駆使しながら声を振り絞った。
因みに、いつでも殺されちゃいそうなマウンドポジションである事にまで、私の頭が回っていなかったからの行動だった事は付け加えておく。そこまで思考が回ってたなら、寧ろ恐怖で声すら出なかったと思う。
[貴様っ!?貴様は分かるのか?]
「分か、る・・・。ちょっと、緩め、てよ。」
[・・・逃げないと誓うなら。]
「誓、う。」
喉の痛みが消え、気管に息が通りやすくなった。
ヒッヒッフー、ヒッヒッフー。ああ空気が美味い。
良かった。流石上級魔族なだけあって、高位念通話が使えるらしい。しかも結構理性的な性格だ。争いが目的じゃないとか言ってるし。
しかし、見事に『甘えっこ魔族』の予想を打ち砕いてくれた。そして体に触れているので分かるんだけど、一見優男風の外見とは裏腹にギリギリマッチョに属さない程度には体格が大変よろしい。着痩せするタイプか。しかも、さすが『特上級魔族』って感じな紫紺髪金眼な渋い美形。失礼だが思わずマジマジと見てしまった。
ウッハー!ウッハー!
・・・おっと鼻息落ち着け?
いくら空気が美味いといっても節度ある鼻息をしよう。
変態に見えちゃうでしょーが。
ええ、結構なお点前で。いや、結構なBL要員で。
これは逃してなるものか。是非お近付きになりたい。
[我はミーチュンと申す者。皇魔一族の末子だ。貴殿の事を聞いてもいいか?]
「僕はシャルロード・キアっていう冒険者。そっちはキュアン・レーモグラス。彼も冒険者だよ。・・・戦いが目的じゃないって言ってたけど、何しに来たの?」
[うむ、話せば長くなるのだが、我は人族に興味があってな。その研究を行っているのだ。今回は人族の集落のフィールドワークのつもりで来たのだが、うっかり見つかってしまって追い回されてしまったのだ。恥ずかしながら、帰りの方角が分からない。]
「つまり迷子なんだね。」
[ああ、そういう事らしい。ここで会ったのも何かの縁だ。暫く貴殿に同行させてもらえまいか。」
・・・は?
そこは『帰りの方角を教えてくれまいか』じゃないの?
「シャル・・・まさか、またか・・・ふぅ。」
いちいちこっちが悪いように受け取るな、そこの美形元騎士っ!
何だかもう諦めたような悟りきった口調が腹立つぞ、コノヤロ。
いや元々私が捕まったのが頂けませんよね。
ハイ、すみませんとも。
その日、特上級魔族『皇魔』のミーちゃんとお知り合いになりました。