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【9】赤毛の魔法剣士

何と次で十話目です。部数だと今回で十部目なんですけど・・・ね。まぁ、ソレはソレ。コレはコレ。

次の次で一旦人物紹介入れてみようと思います。

ではでは、今回のアホ話も読了お願いしますね!

「お前さん達には鍋の番をしてもらいたい。」

「狩りには参加しなくていいのか?」

「そっちの『嘘つき法術師』は戦えねぇんだろ?保護者は面倒みててくれ。」

「・・・そこまで子どもじゃないんだけど。言っとくけどお兄ちゃんは強いよ。」

「ほぉ?」


 ステータス画面から詳細なパラメータが見れる私だからね!一切実力を目にしてないけど分かりますの。実際にこの30名近い冒険者集団の中でもトップ独走な強者だ。


「落ち着けシャル。・・・大人しく鍋の番をしているよ。」

「・・・・・・・・・ああ、頼んだぜ。」


 何だかカルアのオッサンが複雑な顔をした。そのまま直ぐに背を向けて去り、他の集団へ指示を飛ばしている。

 何だろ?


「ふーん。まぁあのオッサンも中々の腕はしてんだろーな。」

「お兄ちゃん?」

「ああ、一瞬だが試しに殺気を放ってみた。」

「えぇ!?」

「ただの牽制だよ。オッサンもそれは分かったみたいだな。」


 得意げに説明してくれるキュアン。不適に笑うその表情はやはり様になっていて、ちょっと見とれてしまった。涎も出そうになったので慌てて口元を引き締める。


 しかし全然気付かなかった・・・。


 もしかして魔物とか、キュアンみたいな強者に不意打ちされたら、防御力ぺらっぺらな私なんぞあっさり殺されてしまうんじゃなかろうか。

 となると・・・


 今までゲームや小説なんかで得た知識をフル動員して考える。


 うーむむむ、常時発動型の強度の高いガードと、広域危険感知の術を構築して展開しとく必要がありそうだなー。


 グツグツ煮えている鍋の傍に立って、頭の中で術を練り上げる。

 つまりは鍋の事など完全に放置してる訳ですが。


 常時発動型となると、術のイメージはできても構築は結構難しい。

 言うなれば術っていうのは積み木を組み合わせて作る造形物みたいなもので非常に脆い。それを強度が高い造形物にするには強力な接着剤が必要だ。その接着剤をイメージして練り上げるのが結構難しい。

 んー、どうやら法術単体で構築するよりも、『無』系統の魔術を接着剤として掛け合わせると良さそうな気がするのぉ。


 この予想は当たりのようで、もう少しで術が出来上がりそうなのでそのまま術の構築に集中する。



「おまたせー!・・・っ、何だか強力な魔術の気配がするわね。魔族かしら?」

「グールですか?」

「分からない。でもこの周域よ・・・って、今消失したわ。ちょっと周囲を風魔術で探ってみるわね。」


 術の構築に集中していると、カチュアさんの魔術が目に入って気をとられた。風で浮かせた上に、ばらけないように更に風で包んで水を運んで来たのだ。


 風魔術って結構応用効くんだなぁ。便利そう。

 実力あるから出来るんだろーけど。


 そんな思考のもと、集中が途切れたので仕方なく術の構築を断念したらカチュアさんに「今消失したわ」と言われてしまった。


 おっつ、ヤバしっ!

 ・・・同じ魔術師だから魔力が分かるのかな。

 常時展開したらまずいんだろーか。


「あの、カチュアさん。」

「あらシャルくん、どうしたの?」

「魔術を発動した時の魔力って、分かるモノなの?」

「そーねぇ。実は分かるっていうよりは行き成り周囲の魔力量が変わるから『気付く』って言う方が正しいかしら。何処から、誰がっていうとこまで詳細に分かるわけじゃないのよ。まぁそれでも私程の魔術師じゃないと無理でしょうけど。」


 じゃあ常に展開しとけば気付かれにくいのかな?ちょっとグレーラインだけど命には代えられないし、やっぱり機会を見て術は完成させる必要があるよね。


「うーん、周囲30m範囲にはグールの気配は無いわねー。狩りで誰かが魔術使ったのを誤認しちゃったのかしら。まぁ危険が無さそうならいいわ。こっちの鍋にもお水入れて沸かしちゃうわね。」

「お願いします。」


 今煮えている大きな鍋の横にあるもうひとつの鍋に、カチュアさんによって水が張られた。因みにちゃんと鍋を引っかけて吊るす台と、薪は既にちゃんと用意されている。

 私がしてるのはホントに鍋の番だけだ。

 ・・・さっきまでそれすらしてなかったケド。


「さって、うちのダリアは何処行ったのかしら。早く火を付けてもらわないとお湯が間に合わないわ。ちょっとダリアー?・・・まったく何処行ったのよ。」

「ダリアさんって人も魔術師なの?」

「そーよ。炎の魔術が使える魔法剣士なの。」

「へぇ、剣も使えるんだ。凄い。」


 昨日得た知識の中の『魔法剣士』に早速会えるようだ。

 しかし、ダリアってどっかで聞いた事あるような・・・。


「アタシを呼びましたー?」

「あー!酒場のおねいさん!?」

「ありゃりゃ、そういう君は昨日の美形兄弟の弟君の方じゃない。後ろには兄君の方も居るのねー。なになに?兄弟でこの遠征に参加したのー?」

「あら、知り合いだったの?」


 なんとカチュアさんの言う『魔法剣士』ダリアさんは、昨日酒場で給仕をしていた赤毛ポニーテールのおねいさんだった。

 世間は狭いなぁ。



*************************

ダリア・マルガリッタ(24)火竜人族♀魔法剣士


ギルドパーティ『地竜の咆哮』のメンバー。先祖に火竜

と人族のハーフがおり、先祖返りをしたため赤毛が特徴

の火竜人族に分類される。また強い炎術師の才能がある

も、当人は身体を動かす剣技が好きな為魔法剣士となっ

た。酒場の給仕は趣味で時々している。歌が大好き。

*************************



 ピザが食べたくなった。

 炎系統と関係があったり・・・しないか。


「いやいや、昨日酒場にご飯食べに来てたんですよー。すっごい美形兄弟来たなぁって覚えてたの。姉さんは思わなかった?」

「まぁ・・・確かに美形だなぁとかは思ったけど・・・って、何処行ってたのよ!」

「あひゃぁ、ごめんなさいー。じっとしてらんなくて、あっちで剣の練習してたんですぅ。」

「気持ちが高ぶってるのは分かるけど、休める内にちゃんと休んでおきなさい。戦うのは夜なんだから持たないわよ?」

「はいはーい、・・・分かってるんですけど、相手はグールですよぉ?そりゃ緊張もしますって。」


 グールってそんなに強い魔物なんだ・・・って、ああぁっ!そーいえばグールの事聞いてないじゃん!


 私は再度鍋の放置プレイを決行してキュアンの方へ向く。

 鍋を見ているよりも、こっちの方が断然ええですな。ふへっへっへっ。


「お兄ちゃん、グールの事教えてよ。」

「ああ、そーいえば説明してなかったな。」


 そんな遣り取りをキュアンと交わしていると、ダリアさんが驚いた声を挟んできた。


「ええっ!?弟君はグールの事知らないのに遠征に参加したの?大丈夫?」


 うわー!確かに当然の疑問ですね!ヤバしっ!


「えっと、・・・あはは。」


 咄嗟に言葉が出て来ず、曖昧な笑いを浮かべるしかない私。

 アフォ丸出しです。


「・・・今回の遠征はいい経験になると思いまして、無理を言って参加させてもらったんですよ。後方支援からは出しませんから大丈夫でしょう。」

「ふーん、そーなんだ。カルアさん良く許したねぇ。」


 そのカルアのオッサンにほぼ強制的に参加させられたんですけどね・・・。


 ダリアさんの訝し気な様子を含んだ質問に、キュアンが助け舟を出してくれて事なきを得た。


 フォロー体勢バッチリなお兄ちゃん。

 きゃー、キュアン様、ス・テ・キ!


 キュアンの取り繕った嘘をカチュアさんも聞いていたけど何も言わなかった。きっと変に緊張を広げない為だろうと思う。ダリアさんは私が『嘘つき法術師』って呼ばれてるの知らなさそうだし。


「じゃあ、兄君に代わっておねーさんが説明したげましょう!」

「えぇっ?」

「なーに?不満なのぉ?」


 何だか押し売られてる気分なんだけど。


 キュアンとカチュアさんに助けを求める視線を向けたけど、キュアンは肩をすくめただけ、カチュアさんは「聞いてあげて」と苦笑しながら手を軽く合わせてきた。

 ああ、ダリアさんの緊張解し役になれって事ね。分かりましたよー。


「じゃあダリアおねいさん、お願い。」

「まっかせなさーい。」


 ダリアさんは胸に手を当てて満面の笑みで答えた。

 ・・・鍋の火はいいのか?とか思ったけど、鍋を放置プレイしてた私が指摘するのもアレだし、とか考えていると視界の端でキュアンが何か道具を使って薪に火を付けていたのが見えた。


 うちのお兄ちゃんはさり気なく有能です。

 きゃー、キュアン様、チョー・ス・テ・キ!!



「グールはよく出てくる奴で、見た目が物凄く気持ち悪いの。でもさすが魔族って感じに強いし、切っても切っても中々倒れないし、燃やそうとしても効きにくいし、ホーント厄介な奴なんだからねっ?それでね、前に私が戦った時・・・」


 ・・・申し訳ないが、ダリアさんの言葉を右から~左へと~聞き流しながら私は『世界マップ』のグールの項を脳内に展開した。



*************************

グール


魔族の中でも下級に分類される。魔族特有の魔術耐性が

あり、中堅の戦士並みの強さも兼ね備える。使役する

上級魔族の実力に見合う数で出没し、その眷属・私兵と

して国々を脅かす驚異の存在。特に夜間に活発になる。

*************************



 へぇ~。けっこう厄介な魔物・・・じゃなく、『魔族』っヤツなんだ。


「って事なのよ、弟君わかった?」

「うん、ありがと、ダリアおねいさん。」

「へへへ~、どういたしましてっ!弟君はカワイイなぁ~♪」


 そう言いつつダリアさんは私の頭を撫でた。

 ・・・何か気に入られちゃった?せっかく話してくれてたのに、その内容を聞き流してたのが今更ながらにちょっと申し訳ない。

 上機嫌でカチュアさんの所へ戻っていくダリアさんを見送った後に、キュアンが私に言ってきた。


「お前、アレで本当に分かったのか?」

「ダイジョブ!」

「・・・はぁ、不安だ。」


 この問答以前にもした記憶ありますよね。私そんなに信用ないですかぃ?そりゃ、あのダリアさんの説明じゃちゃんと理解したのか不安になるのもわかるけどさー。とか、自分を棚上げしてダリアさんのせいにしてみる私。スミマセン。


「おい、おめぇ等、食事の前に皆に紹介すんぞ。こっち来い。」


 結局キュアンからまたグールの説明を受けていると(『世界マップ』よりも更に詳しく、いかに危険な魔族かを懇切丁寧に説明された。・・・流石お兄ちゃん、ってかマジ保護者ですね・・・。オッサンの言葉は結構的を得てたのか。ちょっと悔しいぜ。)、カルアのオッサンから声が掛かった。


 うへぇ、面倒臭い時間の始まりかぁ・・・。

 どーせ『嘘つき法術師』とか揶揄されんだろーなぁ・・・。


 私はキュアンの例の若葉色のマントを引っ掴みながら、重たい足を進める。

 隣でキュアンが「おいコラ掴むなよ。」とか何か言ってるが知らん。


 ちょっと(保護者に)縋りたい(子どもな)気分なのさ。

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