夏の病室【二百文字小説】
「夏だね」
病床の妻が窓の外を見て呟いた。
雲が高く立ちそびえている。夏の盛りの空は青く、白い陽射しが病院の庭の木々を濃い陰影に浮かび上がらせている。
妻は窓の外を見ている。
夏の熱が遠いのは、窓が閉じているからだった。
「花火は、また来年な」
冷房の音の沈黙の中で、妻はぽつりと返事をした。
「もう、いいよ」
そう言って妻は私に振り返ると、その白く痩せ細った手を差し出した。
「手、握って」
手を握る。
夏が過ぎていく。
「夏だね」
病床の妻が窓の外を見て呟いた。
雲が高く立ちそびえている。夏の盛りの空は青く、白い陽射しが病院の庭の木々を濃い陰影に浮かび上がらせている。
妻は窓の外を見ている。
夏の熱が遠いのは、窓が閉じているからだった。
「花火は、また来年な」
冷房の音の沈黙の中で、妻はぽつりと返事をした。
「もう、いいよ」
そう言って妻は私に振り返ると、その白く痩せ細った手を差し出した。
「手、握って」
手を握る。
夏が過ぎていく。
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