過去からの追手 序
”序”なので、短いです。
はい、短いです。
秋風も冷たくなってきた頃、剣の秘策が張り巡らされていた。
居間で剣は横になっていた。
横腹に温かさを感じ、肩先は毛の流れに沿って撫でられていた。
「絹の着物を着るより、剣様の方が気持ち良いです」
横腹が温かいのは絢音の胴体が密着しているから、肩先はその手を精一杯伸ばして小さな手で撫でているからであり、剣は腕に顎を乗せながらその感触を堪能していた。
大きな尾で絢音の体を撫でるのも忘れない。
まだまだ、初心な絢音は、人の姿をしていると、見つめ合う事すら恥じらい、目を逸らす事もあるのに、狼の姿の時には、全身で触れてくる、何なら、今のように身体事、密着させてくるのだった。
「もふもふして暖かいです」
その小さな顔を胸に埋め、小刻みに擦り付けて楽しんでいる。
剣は堪能しながらも、
(どちらも俺に代わりは無いのに、何故、こうも扱いが違うのだ、本来、同じ種族の方が警戒しないだろう?)
と、納得し難いのだが、絢音が自ら触れてくるのだから、これを使わない手は無いと思い、最近は家の中でも、狼の姿でいる事が増えた。
「きゃふっ」
絢音が可愛らしい声を上げた。
腹に密着している体ごともふもふを楽しみ始めたので、大きな尾の先で顔に触れてみた。
絢音は特にこの太く立派な尾が好きだ。
初めて会った時に、この尾に包まって眠ったからかもしれないが、そんな幼い頃の記憶は、曖昧な筈である。
尾を動かして絢音の前で揺らめかすと、猫の様に、両手で尾を捕まえようとしてくるので、時折、遊んでやる。
剣にしてみれば、絢音の手をすり抜けるなど、造作も無い事だが、あまりに捕まえられないと、絢音が頬張っている栗鼠の様に両頬を膨らませて、拗ね始めるのだ。
まぁ、それも可愛いのだが、ついつい、最後は捕まってやる。
実りが少なくなった、凍てつく冬がもうすぐやってくる。
絢音の畑も一部だけ冬支度をしてみた。
お志乃に教わった事をやってみる事にしたが、風が強く吹く事もあるし、雪がどのくらい降るかもわからないので、お試し程度にした。
寒空の下にいつまでもいると剣の機嫌も悪くなる。
剣の居ない隙にしていても、解ってしまうらしく、同じ結果になった。
「風邪でもひいたらどうする」
にべもない。
確かに、剣から見れば、己の心霊は儚く、失くさぬよう、亡くさぬよう、細心の気遣いをしている。
己とは違う。
本当に少しでも誤ったら、己が触るのでも手折りそうな程、軟いのだ。
絢音が思っている大丈夫と、剣が思っている大丈夫の差はこの山奥の谷より深い。
短くてすいません、構成でこうなりました。
すぐ、続きますから、すぐ!
よろしければお付き合いください。
よろしくお願いします。
☆も良ければ・・・




