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『本日最終話まで投稿!!』世界の悪に全てを奪われた少年、絶望の果てに勇者となる  作者: おう
第一章『アアル王国編』

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第一章七話『ユダの訓練3』

 「疲れた……」


 常世との模擬戦から数刻、教える流派が刀剣流となったユダは常世にしごかれ続けた。そして迎えた昼食。「疲れた」の一言を言ってしまうのは仕方のないことだった。

 今ユダがいるのはギルドの食堂──長机が並ぶこの場所で多くのギルド隊員が食事をしている。


 「だろうな」


 ユダの隣に座っている知的な顔つきと淡い緑色の髪を有している男は、水を口に含むとそう共感の言葉を口にする。彼の名前はアルスだ。


 「そんなんで疲れてたら、この先大変だぞ!」


 続けてそう厳しい言葉をかけたのは、ユダの正面に座る男だ。先ほどの男とは違い、どこか凶暴さを感じる顔をしていて、燃え盛るような赤髪を有している。


 その男の名前はフェリス。その姿に反して、随分と可愛らしい名前をしている。


 今となっては一週間前──訓練の初日、ユダは所属することになった第一部隊の会議にて、挨拶を行った。その際に同年代のアルスとフェリスとは仲良くなった。そして今ではこうやって一緒に食事をする仲である。

 初めてフェリスと出会った時、名前を聞いて女だと思っていたユダは、フェリスと会ってショックを受けた。

 それが本人に何故か感じ取られ「フェリスが男の名前で何が悪い!」と殴られたことがあった。それも今となっては笑える一幕である。


 「アルスにフェリス。そういうそっちはどうなんだよ? 何か怪我をしているけど」

 

 ユダは視線をフェリスとアルスに向ける。彼らの額には大きな痣ができていて、荒々しく治療した跡がある。

 現在『第一部隊』のアルスとフェリスを含んだ多くの隊員は、テロによって大きな被害を被った王都の復興に駆り出されている。そのことを常世から聞いていたユダは、その痣は復興の過程で怪我をしたものだと考えた。

 しかし帰ってきた答えは意外であった。

 

 「気にすんな!この傷は昨日の夜に女湯を覗いたのがバレて、第二部隊の隊長に殴られた跡だ!!」

 まるで名誉の勲章かのように語るフェリスに、ユダは心底呆れた。


 (心配した俺が馬鹿じゃないか……)

 

 「ユダ、何か勘違いしているようだけど、覗きは男の浪漫なんだ。僕は浪漫を追求するためには、どんな犠牲も払うさ」

 

 何故か決め顔で高説を説くアルスに、ユダはため息をついた。


 「……それで復興の方はどうなんだ」


 ユダは汚れきった会話の空気を変えるため、そして王都の復興の情報を知るためにアルスとフェリスに状況を聞いた。

 今のユダは半ば箱詰め状態で、外の状況──王都の街の状況を知ることはできない。故にこうやって人から情報を聞くしかないのだ。


 「「あ……それなんだが……」」


 てっきり「順調だ」と返されると思っていたユダは、二人のバツの悪そうな態度に違和感を覚えた。


 「何だよ、はっきり言ってくれ」

 

 そう二人を急かすと、アルスとフェリスは顔を見合わせた。そして暫しの沈黙が流れた後、アルスが重い口を開き、衝撃の発言をする。

 

 「ユダも知っているだろ、テロが大罪教とそれに与する犯罪組織によって引き起こされたこと。その犯罪組織が『アアルの目』っていうんだがな。今回のテロを『大罪教』と結託して起こしただけでなく、現在進行で復興の邪魔もしているんだ」

 「──」


 絶句した。

 あんなテロを起こして未曾有の危機にさらした大罪教、それだけでなくテロの復興を邪魔をする組織が存在していることに。

 ユダにとってあのテロはトラウマそのものだ。今でもあのときの『アアル魔力大学』の光景を思い出すと、身震いが止まらなくなり動悸が早くなる。だからこそ、テロの復興を邪魔しているという組織のことを許すことなどできなかった。


 (許せない……!)


 怒りの感情が込み上げてくる。ユダは腸が煮えくりかえるような感覚を覚えながら、拳を強く握りしめた。


「……だから言いたくなかったんだよ。せっかく集中している訓練の邪魔をすることになるから」


 ユダの怒りを感じ取ったアルスが後悔したかのような声色でそう言った。

 確かに、以前のユダならその情報に戸惑いを見せて、訓練に力が入らなくなっていただろう。しかし今は違う。怒りすらも自身を突き動かす原動力にしてみせることができる。


 「心配してくれてありがとう、アルス。けど大丈夫だ。寧ろ教えてくれたおかげで訓練にも身が入る。いつかその組織をぶっ飛ばすためにも、俺は訓練を頑張るよ」


 「──そうかい、強くなったなユダは」


 新たに、復興の邪魔をしている『アアルの目』をぶっ飛ばすという目標を決めて、ユダは再び訓練に身を投じるのだった。


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