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『本日最終話まで投稿!!』世界の悪に全てを奪われた少年、絶望の果てに勇者となる  作者: おう
第一章『アアル王国編』

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第一章十五話『リンの訓練2!!』

 

 


 「──異常無しですね。どうぞお通りください」

 「おう、ありがとうな」

 

 門を通り過ぎた商人の馬。それを確認すると、ようやくリンは息をついた。それは今この場をともにしているノアも同じである。

 リンとノアは王都の門の前で検問を行っていた。王都にやってくる色んな商人や旅人の荷物を危険物がないかを確認し、万が一のことがないようにする。

 この業務は、というかギルドの業務の殆どはアアル騎士団と共同で行っていた。それはアアル王国のギルドを信じられないと言う心か、それとも両者で監視する体制を作り上げてより安全にするためか。どちらか、それともその両方かもしれないがリンにはそんな大きなことを考える余裕はない。

 

 (本当に疲れる...!!)

 

 リンがまだ仕事に慣れていないことも関係しているかもしれないが、疲労を隠すことはそう簡単にはできない。ノアも同じと感じていたが、彼女を見て伺える疲労感はリンとは違うもののように伺える。言うなれば、魔力を失ったことによるものというべきだ。

 

 「リンさん。次の人が...」

 「はいはい〜」

 

 本当に束の間の休憩を終えてリンはまた業務に戻る。次いで彼女達の元にやってきたのは商人だった。

 大きな荷馬車からは、この人がどれだけ大きな商売をしようとしているのかを容易に想像することができる。

 

 「少し確認していきますね」

 「おうよ。頼んだぜ嬢ちゃん達!」

 

 男の目線が自分のお尻の当たりに向いた気がしたが恐らく勘違いだろうと、嫌な可能性はきっぱりと捨てて、リンは荷台に覆い被さっていた大きな布を払い点検していった。

 

 「う~ん」

 

 リンは声を唸らせながら隅々まで観ていく。はっきり言って違和感や法律によって禁止された物を持ち運ぶ──この任務に当たる前にリリに徹底的に覚えさせられた──様子もない。

 これなら大丈夫だろうと、そう思った時にスカートの辺りに違和感が走った。

 

 「リンさん...」

 

 ノアにスカートの裾を軽く引っ張られると、リンの意識は必然的に荷馬車ではなく縮こまっている少女──ノアの方にむく。

 

 「あの人は嘘をついています。私の能力で相手が嘘がついているのか分かるんです」

 

 (っ!?)

 

 それは本当なのと聞く暇もなかった。『能力』という根拠を述べられてリンは否が応でもノアを信じるしかない否、例え根拠がなくてもリンは恐らく彼女を信じていただろう。

 

 「すみません。もう一度詳しく調べても。いくつか気になる点があったので」

 「構わないけど...あんまり時間はかけないでくれよ。早くこの荷物を依頼主に渡さないと行けないんでな」

 「そこのところは任せてください」

 

 (この人は何か危ないものを運ぼうとしている。だから絶対にここで止めないと)

 

 リンは目を光らせて隅々まで調べていく。けど程なくして、先程と変わらない結果にたどり着いてしまった。

 

 「ご、ごめんなさい。ひ、一つだけ聞かせてください」

 「ん?どうしたブロンド髪のお嬢ちゃん。目の下にクマがあるな...可愛い顔が台無しだぜ」

 「お、お世辞はやめてください。──あなたはこの荷馬車に法律により記載された物品。もしくはそれは近しい物は積んでいませんよね?」

 

 男はオドオドとした一変したノアにうろたえたのか──少なくともリンは少し、ほんのちょっぴりだけ驚いた──擦れた声しか出ていなかった。

 だが男は少しのうちに冷静さを取り戻した。

 

 「いや、ハッキリ言おう。そんなものはない」

 

 その一言。それが最後だった。

 

 「──噓。あなたは噓つきなんですね。嫌いです」

 「あぁ?」

 「あたいの能力です。能力使用期間中、視界にある人が嘘をついたらその人は赤く見えるんです。そしてあたいの目にはあなたが赤く映っている」

 

 だがそれでどうなるのだろうか。彼にはノアの『能力』の話を噓として追求していく選択肢がある。その択を取られたらかなりの時間がかかり、何らかの他の行動を起こされる可能性があった。

 そんな危険な一手の先で男は予想外のことを繰り出した。

 

 「──まぁいいか。ボン!!」

 

 男は軽妙な笑顔で、されど不気味が彫りこまれた顔をしていた。

 だがそれも次第に歪んでいき──、

 

 「──ぁ」

 

 リン。ノアはあっけらかんな様子になる。それは必然的な話でもある。目をこらさなくても『それ』が見えてしまう。

 臨界状態に達しようとしている魔石。『魔石』とは魔力を大きく含んだ石のことである。魔道具の作成に使用したりなどとその使い道は多岐に渡ると同時に、大きな危険性を含んでいる。

  扱い方を間違えて衝撃を与えると、臨界状態に達して爆発が起きる。そのため 『魔石』は民間での取引が五大国では禁止されている。

 

 (は...?)

 

 もうだめだと諦めたが、爆発は起きなかった。その代わりに轟いたのは爆音。状況も飲み込めないまま、男がいた場所を見るとものけの殻であった。

 安堵など到底できなかった。

 

 「に、逃げた!! 今直ぐ追わないと!! リンさん本物の魔石はあの人が持っている」

 

 臨界状態に達しようとしていた怖々しい魔石は偽物。そして本物は男が持って逃走。

 それだけで簡単に伝わってしまう。ことの重大さが。

 故にノアとリンは報告なんてものをするのも忘れて、走り出していたのだ。




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