第二章 マイホームがないのだが?
四条組の追手を無事に振り切った偏理ルア改め偏理ルカは集落の入口へと向かっていた。
入口付近に着くとそこには白川郷を連想させる日本の原風景が広がっていた。
「わぁ、すごい!」
ルカは歓喜の声を上げる。
しかし、ルカを待っていたのは非情な現実であった。
畑で農作業をしているお爺さんがルカに気付くとしかめっ面でこう言った。
「まだこの村にいるのか、忌み子が...。早く出ていけ!」
そう言うとお爺さんは家の中に入って行ってしまった。
え、何アイツ?殺そうかな?
ルカは少し嫌そうな顔をする。
そうして村の中を歩き回ると見かける人全員から同じような態度を取られた。
何?なんで?
ルカは不思議そうな顔を浮かべる。
すると後ろの茂みから小石を投げられた。
ルカは気配を察知してヘッドスリップで小石をかわすと即座に後ろを振り返った。
そこにはニヤニヤ笑いながら小石を手にする子供たちいた。
「何するんだよ!」
ルカが怒って声を荒げると子供たちは散り散りに逃げて行った。
何なんだよもう...。
ルカは不機嫌そうに『偏理』の表札を探す。
ここも違う、これも違う、あっちも違う...。
一つひとつ見ていくがなかなか見当たらない。
すると道を少し行った先にボロい家が見えてきた。
明らかに人が住んでいなさそうな廃墟である。
この家じゃありませんようにこの家じゃありませんように。
頭の中で何度もその言葉を繰り返す。
しかし、現実は非情でボロボロの表札には『偏理』の2文字が書かれていた。
絶望した。
玄関ドアにはクモの巣がかかっており、人が出入りしている様子がない。
ドアが開くか試してみたが案の定カギがかかっており開かない。
また、ランドセルの中にカギは入っていなかった。
え、どうしよう...?
そうして家の前で立ち尽くしていると後ろから中年男性の声が聞こえた。
「おいルカぁ!何してんだオメェ?母さんも父さんもとっくにお前を見捨てて夜逃げしたんだよ!」
振り返ると坊さんの格好をした中年の坊主が立っていた。
「オメェそんなにウチが嫌だってんなら出て行ってもええんだぞ?」
高圧的に態度で坊さんが続ける。
ルカは察した、私が殺した少女ルカはこの集落で村八分にされている。
そして、両親が夜逃げし、このDVしそうな坊主がルカの引き取り人である事を...。
ルカは俯いて渋々と坊主に着いていった。
そうして家に向かうと集落のほぼ中央に小さな寺があった。
坊主と一緒に境内に入り、中にある建物の室内へと入った。
どこが自分の部屋か分からずに迷っていると「邪魔だからとっとと失せろ!」と言われ、その視線は屋根裏へと続く階段を指していた。
あの坊主そのうち殺してやろうかなと思いつつ急な階段を登るとそこには小さな居住スペースがあった。
勉強机や小さな女性用の服などからここが自分の部屋であると分かった。
一先ずルカはランドセルを置くと家探しをすることとした。
ダンスやハンガーラックに最低限の衣類があるだけでゲームやおもちゃなど年頃の子供が欲しがりそうなものは何一つない。
ルカはちょっとガッカリしながら散策を続けるも必要最低限のものしか揃っていない。
そんな中勉強机を漁っていると一つだけ鍵のかかった引き出しがあった。
「何か大切なものが隠してあるかも?」
ルカは気になって鍵を探したが見つからなかった。
そこでルカは自分の髪についているヘアピンを2本外すとピッキングでいとも簡単に開けてしまった。
これも殺し屋のスキルの一つだ。
すると中からは一冊の分厚い日記帳が出てきた。
「やった!これがあればこの子に上手く成りすませる」と言ってルカは喜んだ。
しかし、この日記帳の中にはどんでもない事が書かれているのであった...。