「消えた者たちの真実」
第三話です。一人、また一人と登場人物を増やしております。プロットの段階で出せる人数はこの程度。と決めていたのですが、このハイペース。おそらくかなり出てくりと思います。
何せ色々と無作法なもので読んでて違和感を感じるようなことがあれば戻って頂き解消していただければ助かります。秒で回収します。
春から夏へと季節が移り変わり、蒸し暑さが少しずつ忍び寄るある日、学園で異様な噂が広がった。
「また人が消えたって。」
「でも数日後には戻ってくるんだろ?けど、記憶がないってやつ。」
「やっぱ神隠しじゃない?」
隣のクラスの男子生徒が失踪し、数日後に近くの川沿いで発見されたというのが噂の発端だった。本人には外傷もなく、ただ何が起きたのかまったく覚えていないという。そんな事件が、ここ数週間で立て続けに発生していた。
「綾人、学園内で何かおかしいと思うことがあったらすぐに報告して。」
公安のローラからの指示はシンプルだった。彼女は外部での調査を進める一方で、僕に学園での異常を探る役割を与えた。
「了解。すぐに連絡するよ。」モバイルの連絡を切った後は毎回考える「普通でいたいだけなんだけどな……」
そう心の中で呟きながらも、胸のざわつきがこの事件に自分が関わることを予感させていた。
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翌朝、教室に入ると、事件の噂はますます広がっていた。
「また消えたんだって。次は誰が消えるのかなー。」
「やめろよ、怖いだろ。」
「何も覚えてないってのが怖すぎるよな。」
周囲のざわめきを聞きながら、僕はふと窓の外を見た。屋上で一人風を受けていたら、いつの間にかリリアンが隣に立っていた。
「……また考え込んでるみたいね。」
「別に考え込んでない。」
「嘘ね。君は顔に出るから。」
彼女とはそれからというもの事あるごとに話すきっかけベースでランチなどするようになった。これって「友達」ムーブだよね。と思いまがら日常を過ごしている。
彼女は静かに笑いながら僕を見つめた。その視線には、何かを見透かすような冷静さがあった。
「リリアン、君は何か知ってるのか?」
「さあ、どうかしら。でも……綾人、君の力が必要になる時が来るわよ。」
含みのある言葉を残して、彼女は屋上を後にした。その言葉の意味を理解できないまま、僕の胸には小さな違和感が残った。
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放課後、廊下で一人の生徒に目が止まった。名前は灰島匠。どこにでもいるような生徒で、目立つ存在ではない。成績も特に悪くはないが、秀でたわけでもない。ただ、その日はいつもと違う何かを感じた。
灰島は廊下を歩きながら、すれ違う生徒に冷たい視線を送っていた。そして、僕が彼を見ていると、ふとこちらを睨むような目を向けてきた。
「……何か用?」
「いや、別に。」
僕が答えると、彼は何も言わずに背を向けた。その背中には、どこか孤独と怒りが混じった影が見えた。
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数日後、灰島が失踪したという知らせが入った。しかし、それだけでは終わらなかった。リリアンが僕の前に現れ、興奮した様子で言った。
「綾人、灰島が誰かを襲うところを見たわ。」
「襲う?灰島が?」
「ええ。そして、ただ襲ったわけじゃない。彼の能力……『取り込む』という形で相手を消したのよ。」
リリアンが語るその光景は、常識では考えられないものだった。灰島は「取り込む」能力を持ち、それを使って他人の意識を消し、記憶を奪う。その結果、対象者は何が起きたのか分からないまま発見される。
「彼は自分の中に溜まった鬱憤を晴らすために能力を使ってる。でも、制御できていない。」
リリアンの言葉に、僕は灰島の苦しみを思った。普通でありたいと願いながらも、能力が彼を飲み込んでいく。
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その夜、ローラにリリアンから聞いたことを伝えると、彼女はすぐに動き出した。
「これは危険なケースよ。灰島が自分の能力を使っているうちに、もっと大きな事件を引き起こす可能性が高い。」
「でも……彼を救う方法はないのか?」
「それを考えるのが私たちの仕事でしょう?」
その言葉には、ローラの冷静な優しさが滲んでいた。
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翌日、僕とリリアンは学園裏手の倉庫で灰島を見つけた。彼は膝を抱えて座っていたが、僕たちに気づくと立ち上がり、低い声で言った。
「……何しに来た。」
「灰島、お前が能力を使う理由を知りたいんだ。」
僕が問いかけると、彼は一瞬驚いたような顔をした後、低く笑った。
「理由?理由なんてないよ。ただ……消したかっただけだ。全部。っていうかそもそも抑えられないんだよおおおお!」
その言葉に、彼が抱える孤独と怒りが凝縮されているように感じた。そして、彼の目が異様に光り、次の瞬間、僕とリリアンに向かって能力を発動させようとした。
胸にざわめきが走る。「次に何が起きるのか」が見えた。灰島の能力が暴走し、僕たちを飲み込む未来——。僕は瞬時にリリアンを庇い、全力で灰島に飛びかかった。
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結果として、ローラの協力もあり、灰島の能力は封じられた。彼は公安の保護下に置かれ、事件は一応の解決を迎えた。
だが、リリアンは僕に静かに言った。
「綾人、これで終わりじゃないわ。まだ隠れている力を持つ者たちがいる。そして……私たち自身の力も。」
彼女の言葉が胸に重く響く。その中に込められた意味を考えながら、僕は夜空を見上げた。
「はあ、普通でいたいだけなのに……」
そう呟いた時、胸のざわめきが未来の不穏な気配を知らせるように響いていた。
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#### **次回予告**
**「力を持つ者はどうあるべきか——。自らの力に向き合う綾人と、彼を取り巻く異常な環境。次回、『揺れる決断、そして未来への道』。彼が選ぶ答えはまだ見えない。」**
まだまだ当面、学園編としてストーリーは続きます。ここで各登場人物の目の前の物語、それがどう混ざりどのような結果を導き出すのかをお楽しみいただければ幸いです。よろしくお願いします。