表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ついてきてほしい

作者: 鼻息

お題【黄昏】多分そってないですが、どうぞよろしくお願いします。

 勢いを失った太陽のことを人は黄昏と呼んだ。


 そんな余計なことを考えながら、エディ・ソートスは、マリ・ヒイロの落ち込む肩と背を見ていた。


 マリは異世界人だ。地球という世界から来たという。細い肩、小さな背中。それでも成人しているというのだから、小人の血でも入っているのかと思うほどだった。髪は、黄昏を思い出させるような金髪だった。


「そんなに落ち込むことか?」


 そう言ってみると、マリに睨まれた。震える唇から「だって…」と幼い子どものような言葉が漏れる。


「まだ2歳だったんだ」

「俺の弟は1歳で死んだよ」


 子供は農村では消耗品のようなものだった。それを、この異世界人は、まるで自分のことのように落ち込んでいる。子どもなんて、3人に1人生き残ればいいほうだ。


「これが、当たり前なんだよ」


 そう言って、エディはマリの肩を抱き、頭をなでた。エディだって、悲しくないわけではない。可愛い子だった。隣のミーミと呼ばれていた女の子で、よくマリに懐いていた。


「…で死ぬなんて」

「何?」

「なんでもない」


 そう言ったときの、マリの黒い瞳は何かを決意しているようだった。


・・・


「聞いたか? エディ。無料ただだとよ」

「何がだ?」

「なんとか先生ってのが、子どもに予防接種とかいう薬を無料で処方してくれるんだとさ」

「はあ、それは何に効くんだ?」

「まあ、何でもいいが、農民の貴重な時間を奪わんで欲しいね」


 あの黄昏のような髪を持つ異世界人が生活していたのは、エディの人生の中でもほんの短い間だった。3か月ほどだろうか。綺麗な子供という印象は変わらず、黒い瞳に惹かれたままだった。今ごろどこで何をしているのだろう。農夫のエディは、最近忙しそうに中央からの使者に対応する村長の家を見て、ひとつ息を吐いた。


・・・


「あ、エディさんだ」

「…?」

「わからない? 俺だよ、マリ」

「ああ! 髪を染めたのか?」

「これが地毛だよ!」


 控え目に笑う黒髪の少年。いや、成人しているのだったか。


 仕立ての良い服に身を包んだマリが、エディの手をそっと掴んだ。


「もう小さい子は死なないよ。そのために予防接種も、風に効く薬もどうにかしたんだ」

「確かに、死ににくくなったな」

「もう、大丈夫だよ」


 もう、成仏してもいいよ。


「成仏ってのは、何だ?」

「俺の故郷で、未練を残した幽霊が、未練がなくなって去っていくこと」


 エディは、寄りかかっていた墓石からそっと立ち上がった。


「俺は死んでいたか」

「俺、昔から霊感が強かったけど、異世界でもそうだったとは思わなかったよ」


 掴まれたと思った手は、温度が感じられない。


「成仏しにくい? なら、俺と一緒にいて」


 憑いてきて。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ