表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
96/116

星空に願いを[22]

そら君との関係に終止符を。

お別れは、とても切なく…。

 そら君は、長い深呼吸をした。

 心を落ち着け、次に言う言葉を考えていたんだと思う。

 優しいから、私を気遣う言葉を一生懸命考えていたんだと。


「分かったよ。田上がそう言うんなら、俺達はもう会わない方がいいんだろうな」


 そう言うと、そら君はまた深呼吸した。


「ありがとうな。ちょっとだけ、夢を見れた。最後に…、握手だけしてもらってもいい?」


 少し声が震えていたと思う。

 そら君は、握手なんて言いながらも自分からは手を出さなかった。私が差し出すまで、待ってくれていた。

 もし私が嫌だって言ったとしたら、手を差し出す事で私を困らせてしまうと思ったんだろう。

 そんな人なんだ。いつもこの人は、自分より相手の意思を尊重する。優しすぎて、時々優柔不断だったり頼りなく見えてしまう事も。

 だけど、この人は心底優しい。


「ひと言だけ…」

「あぁ」

「そら君、もう少し強引でもいいのよ。私はその優しさは好きだけど、女子ってね…」


 少し言葉を溜めた。私の言う事が本当に正しいかどうかは、他の女子に訊いて回るぐらいしなきゃ分からない。

 だけど、そら君にひとつだけ求めるものがあるとしたら、それはやっぱり強引さなんだと感じるから。


「分かった。もし次に誰かを好きになっとしたら、その時頑張ってみる。ありがとうな」


 その返事を聞いて、少し安心した。

 目線をグッと上げて、その顔を見た。

 悲しげな目をしていても、私を見下ろして微笑む、優しさに溢れた穏やかな表情。

 私は、そっと右手を差し出した。


 そら君の大きな右手が、私の右手を優しく握った。そして、そら君はさらに左手も差し出し、両手で私の手を包み込んだ。


 温かさを感じ、その手の上に雫が落ちた。


「ヤベ…」

「ううん、これ、私かも」


 見上げる程高い背。

 瞳を濡らしてしまった私だけど、最後にもう一度そら君の顔を見たい。だから、顔を上げて…。


「「あ!」」


 一筋の光が、瞬時に夜空を駆け抜けた。


 ―幸せになってね。


 そう心で呟くと、もう涙が止まらなくなってしまった。

 これで、これでいいんだ。そう何度も自分に言い聞かせて、私はそら君の手を握る力を緩めた。


 2人の手は、ゆっくり離れた。

 そして、私は何も言わずにそら君に背を向けると、ゆっくり歩き出した。



「興味ないから」

 ぶっきらぼうにそう言って突っ撥ねた、高校生のあの日。

 教室でも、いつも頭ひとつ飛び出る程の高い背。激しいスポーツをしながらも、人に対して優しさを躊躇いなく見せるその人柄。


 今、私はその全てを過去のものにし、自分の道を歩み始める。

 その先に待っているものは、きっと険しい山。

 私はそれを、越えられるんだろうか。



 1週間前と同じように、地下鉄烏丸線に乗り、そのまま近鉄線へと乗り継いだ。

 丹波橋で京阪電車に乗り換え、六地蔵駅から河原を歩き、何度も何度も星空を見上げた。


 宇宙のようにでっかく!

 そんな願いをもって名付けられた、宇宙(そら)という名前を、ここ最近何度口にした事だろう。


 その名はいつか思い出になる。

 だけど、夜空を彩る星は限りなく輝き続け、これから先幾度となく、私はそんな星達を見上げる事になるだろう。


 季節を問わず輝き続ける、あの5つの星。

 今、この空に願い事をするなら、私は何を祈るだろう?


 恋ではないけど好きだった、西山宇宙(にしやまそら)という名の男子。

 愛せなかったのは、私の心のせい。

 だからせめて、彼の幸せを…。

アクセスありがとうございます。

「星空に願いを」これにて終了です。

次回「頂へ[1]」

更新は、X または Instagram にて告知致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ