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星空に願いを[18]

2026年最初の投稿になります。

本年もよろしくお願い致します。

     *


 もしかして…?


 心当たりのある私とユウさんは、「ちょっと席を外します」と村崎さんに伝え、階段を下った。


 やっぱり倉庫のドアが開いている。夏川さんは、ここに居るんだ。

 だけど、私達は声をかける事が出来るんだろうか。


 そんな不安を抱きながら、そっと息を殺して入口に近付く。


「え? 宮地さん?」

「本当だわ」


 ここで喧嘩でもしたのかな?

 だとすれば、余計に声なんてかけられない。しかし喧嘩だとしても、2人とも泣いてるし、寧ろ泣き伏していると言うなら宮地さんの方だ。


 気が焦る私を、ユウさんは制止した。盗み聞きではないけど、その声が聞こえる。もしかしたら、私達が聞いておかなければいけない話なのかもしれない。

 不思議にも、そんな気がした。


「あの子、夢乃ちゃん、もう最後のステージだから」


 最後のステージって何?


 ユウさんは、スマートフォンを手にすると、宮地さんからのメッセージを開いて私の顔の前に差し出した。


「見てないの?」

「ドキドキして、見れなかったんです」

「ほら…」


 そこには、漠然としながらも何かを訴えようとしている風に取れる言葉が、短く綴られていた。


「どういう事かしら?」

「真意は想像力に任せるって事なのかな」


『生きていてこそ輝ける。今輝かなきゃ、明日の命はないかもしれない』


「これって…!」


 私は気付いた。「最後のステージ」って、そういう事なんだ?


「あ、谷山…」

「田上さんも…」


 2人が、倉庫から廊下に出て来た。その刹那、私達は慌てる事なくコクリと頭を下げた。


「聞いた?」

「少しだけですけど」



 夏川さんは、採寸を誤ったんじゃない。モデルAさんが自己管理出来ていなかったからだ。

 でもそれは、結果的には採寸間違いとして処理される。夏川さんは、Aさんにジャストフィットする寸法で作ってしまった事を、激しく後悔した。


 おりしも韓流ブームから、オーバーサイズの衣服が注目されていた。

 これらは意図して作られたサイズになるのだけど、全体のバランスさえ取れていれば、綿密に採寸する必要がなくなる。


 それは手抜きなのかもしれない。だけどバランスを取るというのは容易ではない。

 夏川さんはそこを上手くPRして、TmCイコールオーバーサイズのイメージを定着させた。


 そこに現れた新人デザイナーが、宮地さんだった。


「ワンサイズ設定では、20cmの身長差に対応出来ない」


 宮地さんは、そう主張した。なのに、過去のトラウマを払拭出来ない夏川さんは、周囲を巻き込んでワンサイズ設定を前面に押し出した。


 意見など通らない。

 宮地さんは、黙って従う事にしたそう。それ以来声を上げなくなったとも言った。

 だけど、今回の私のプレゼンには、賞賛の声を上げてくれた。


「お客様の要望には最大限に対応する」


 私が言い出したSサイズへの展開は、SNSに投稿されている声を含む、かねてから私が抱いていた形。

 対象が誰であろうと、低身長さんの悩みに応えるという意味合いは変わらない。


 そして、宮地さんはこの私の意見を聞いて、奮起した。

 そこには、過去の失敗に捉われずに前進する事。周囲には、その先の成功に導いてくれる仲間が居る。そんな、夏川さんへのメッセージが込められている。

 その点は、私の意向とは違うのだけど。


 ところで、夢乃さんの最後のステージとは何?

 その理由(わけ)に、私達は驚きを隠せなかった。

アクセスありがとうございます。

次回「星空に願いを[19]

更新は、X または Instagram にて告知致します。

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