星空に願いを[18]
2026年最初の投稿になります。
本年もよろしくお願い致します。
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もしかして…?
心当たりのある私とユウさんは、「ちょっと席を外します」と村崎さんに伝え、階段を下った。
やっぱり倉庫のドアが開いている。夏川さんは、ここに居るんだ。
だけど、私達は声をかける事が出来るんだろうか。
そんな不安を抱きながら、そっと息を殺して入口に近付く。
「え? 宮地さん?」
「本当だわ」
ここで喧嘩でもしたのかな?
だとすれば、余計に声なんてかけられない。しかし喧嘩だとしても、2人とも泣いてるし、寧ろ泣き伏していると言うなら宮地さんの方だ。
気が焦る私を、ユウさんは制止した。盗み聞きではないけど、その声が聞こえる。もしかしたら、私達が聞いておかなければいけない話なのかもしれない。
不思議にも、そんな気がした。
「あの子、夢乃ちゃん、もう最後のステージだから」
最後のステージって何?
ユウさんは、スマートフォンを手にすると、宮地さんからのメッセージを開いて私の顔の前に差し出した。
「見てないの?」
「ドキドキして、見れなかったんです」
「ほら…」
そこには、漠然としながらも何かを訴えようとしている風に取れる言葉が、短く綴られていた。
「どういう事かしら?」
「真意は想像力に任せるって事なのかな」
『生きていてこそ輝ける。今輝かなきゃ、明日の命はないかもしれない』
「これって…!」
私は気付いた。「最後のステージ」って、そういう事なんだ?
「あ、谷山…」
「田上さんも…」
2人が、倉庫から廊下に出て来た。その刹那、私達は慌てる事なくコクリと頭を下げた。
「聞いた?」
「少しだけですけど」
夏川さんは、採寸を誤ったんじゃない。モデルAさんが自己管理出来ていなかったからだ。
でもそれは、結果的には採寸間違いとして処理される。夏川さんは、Aさんにジャストフィットする寸法で作ってしまった事を、激しく後悔した。
おりしも韓流ブームから、オーバーサイズの衣服が注目されていた。
これらは意図して作られたサイズになるのだけど、全体のバランスさえ取れていれば、綿密に採寸する必要がなくなる。
それは手抜きなのかもしれない。だけどバランスを取るというのは容易ではない。
夏川さんはそこを上手くPRして、TmCイコールオーバーサイズのイメージを定着させた。
そこに現れた新人デザイナーが、宮地さんだった。
「ワンサイズ設定では、20cmの身長差に対応出来ない」
宮地さんは、そう主張した。なのに、過去のトラウマを払拭出来ない夏川さんは、周囲を巻き込んでワンサイズ設定を前面に押し出した。
意見など通らない。
宮地さんは、黙って従う事にしたそう。それ以来声を上げなくなったとも言った。
だけど、今回の私のプレゼンには、賞賛の声を上げてくれた。
「お客様の要望には最大限に対応する」
私が言い出したSサイズへの展開は、SNSに投稿されている声を含む、かねてから私が抱いていた形。
対象が誰であろうと、低身長さんの悩みに応えるという意味合いは変わらない。
そして、宮地さんはこの私の意見を聞いて、奮起した。
そこには、過去の失敗に捉われずに前進する事。周囲には、その先の成功に導いてくれる仲間が居る。そんな、夏川さんへのメッセージが込められている。
その点は、私の意向とは違うのだけど。
ところで、夢乃さんの最後のステージとは何?
その理由に、私達は驚きを隠せなかった。
アクセスありがとうございます。
次回「星空に願いを[19]
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