星空に願いを[15]
新作プレゼンで、大きく揺らぐ。
麻衣、ここは踏ん張りどころよ!
「聞いて」
これは、もちろん私にも向けられている言葉だ。今回は賛同してくれた感じだけど、全て私と同じ意見だとは思わない方がいい。
ドキドキしながら、私は宮地さんの言葉に耳を傾けた。
「フリーサイズってのは、昨今のオーバーサイズ人気に乗っかってるだけ。それは悪いことじゃないと思うけど、ワンサイズにしてしまうのには、ずっと疑問を感じていたわ。確かにコストの面はあるし、この会社もそんなに資本金がある訳じゃないのは分かってる。だけど…」
室内に緊張が走った。みんな声を殺して宮地さんの口元を注視した。
その唇は、少し震えながら微かに動いた。
「私は、3サイズ展開にしてもいいと思う。て言うか、しなきゃいけないんじゃないかって」
そこまで言うと、宮地さんは村崎さんの方に目を向けた。村崎さんの顔がこわばった。
「言いたいことは分かるわ。だけど、会社の方針もあるの。そもそも価格設定が基本的に低いブランドだって事は、宮地さんも分かってるでしょ?」
「会社優先ですか? それで良いんですか? 私はこの製品、凄く人気が出ると思うわ。なのに欲しくても生まれ持った体格のせいで叶わないっていうのは辛くないですか? 田上の言う通り、小柄な人も居る。小柄な人が、私達が勝手に設定したオーバーサイズを着た時、折角手に入れた服でもだらしなく見えてしまって涙を飲んだ話もあるわ」
宮地さんは、磐田さんの顔に目を向けた。磐田さんの顔色が、青ざめた。
「MTG-roomだっけ? あのクソSNS、見てんでしょ? 何て書かれてるの? ちゃんとチェックしてる? 製品に反映させるつもりはあるの!?」
『TmCの新作カットソーが可愛いんだけど、またワンサイズ設定なんだ。悔しいっ!』
『>背を伸ばせば良いんじゃないですか?』
『>私だってなりたくて低身長になった訳じゃありません』
『>低身長さんも悩ましいけど、私も悔しい思いしてんのよ』
『>バレーボール選手でしたね。XL以上のが欲しいところですね』
「磐田さん、アンタ、炎上ばっかり見てて、こんな意見はちゃんとチェックしてるの?」
そうなんだ。SNSに投稿された、TmCへの意見。それは、磐田さんから声に出されたことはなかった気がする。
「た、谷山さんはどうなの? 黙ってるけど…」
「私、黙ってました? ずっと以前から3サイズ以上で展開した方が良いって…。前のあの、ラメ入りニットだってそう言ったのに、村崎さんに通す前に夏川さんが却下しましたよね?」
話が荒れ始めた。何とかしなきゃ。
「あ、あの…、まだ最後まで…」
「あぁ、田上。すまん。続けて」
私のオドオドした声を聞いて、宮地さんは現場を制止し、会議を進めるよう促してくれた。
「えっと、ですね。サイズの件と、あとは…」
形に関する話。つまり、ブラウスのデザインの要とも言える襟の形だ。私は折角のこの機会、気合を入れて2種類を用意している。
「スタンダードカラーとバンドカラーの2タイプ展開にしたいです」
「そんな! あなたねぇ、初めてのプレゼンでそんなに手を広げろって…」
「初めても100回目もないわっ! 良いものが出来るって自信の表れだろうがっ!」
苦しい。凄く苦しい。けど今、宮地さんは私の味方だ。とても強く後押ししてくれている。
「皆さんね、口コミやらSNSやらでレビューされてますよね。それは活用しないんですか? それとも…」
今度はユウさんが声を上げた。
「それとも…」
それとも何なの? お願い。自分を守って!
「それとも何よ?」
「お客さん無視で会社本位の製品作りですか!?」
「谷山っ!!」
宮地さんは、ユウさんを制止した。これ以上は言うなとばかりに、ユウさんを睨み付けた。
「一旦リセットしましょう!」
そう叫ぶように言うと、夏川さんは部屋を出て行ってしまった。
こ、怖い!
プレゼンが荒れてますよ。
これを、みんなはどう収めるんでしょう?
ところで…? MTG-roomって??? (//∇//)
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次回「星空に願いを[16]」
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