山に魅せられて[7]
今回もショッピングの続きです。
これからハイキングを始める方の参考になれば幸いです。
はぁ〜…、私、どうすればいいの?
「ほらほら、ウェア。ちゃんと選びましょう」
まだ何も分かっていない私に対し、朝比奈さんは、次から次と的確なアドバイスをくれる。
靴が決まれば、ウェアもしっかり決めていかないと…という事なんだけど。
温度調節は下着などではなく、ミドルレイヤーやアウターの重ね着でやっていくそうで、その訳は、インナーなんて脱ぎ着出来ないから。
朝比奈さんは、そんな風に教えてくれた。
そりゃそうよね。
今回は極端に冷える程の標高差じゃないのだから、速乾性のTシャツに半袖のTシャツを重ねる。
ボトムスは山スカートにサポートタイツ。
アウターはウインドブレーカーよりレインウェアを勧められたのだけど…。
「風を避けれたらいいんですよ。でも、雨が降らないとも限らないですよね? それならカッパ持って、さらにウインドブレーカーまで持ちます?」
持っていると助かる場面もあると思う。だけどそのためには、25L〜30L程度のリュックが必要という訳で、これが思っていたより大きい。
さらに食料やら何やらを詰め込むなら、全くと言っていい程余裕がない。
じゃあこの中で省いてもいい物って…?
あ! そういう事か。
確かにレインウェアなら一石二鳥だわ。
「荷物を少なくするコツだったら、谷山さんはよくご存知ですよ。お勤めの職場の先輩でしょ? 訊いてみるといいかもしれませんよ」
うむ…、確かに。職場に慣れた人が居るなら、教えてもらわない手はない。
「谷山さんって、大きなバイクで北海道をツーリングされるんですよ。ご存知ないですか? 寒い時は晴れててもカッパ着るんですって。水滴が染み込まない程のものなら、絶対に風なんて通さないものね」
え? 谷山先輩って、そんなに大きなバイクに乗るの?
しかも北海道なんて遠い所まで? 私、知らなかったわ。
何となく悔しかった。
私より朝比奈さんの方が、谷山先輩の事をよく知っている。
いいえ、その事じゃない。私より谷山先輩の方が、朝比奈さんとの繋がりが深い。そっちなのよね。
きっと、お付き合い長いんだ。
だけど、谷山先輩をライバルとして見るのも変な話で、きっと谷山先輩が朝比奈さんに抱く感情、或いはその逆で朝比奈さんが谷山先輩に抱く感情は、私→朝比奈さんのそれとは違うはず。
ちょっと待ってよ。じゃあ私はどんな感情を抱いているっていうの?
確実に、間違いなく言えるのは、恋やその類のものではないという事…のはず。
では一体? ただの興味なんかでは、それもないはず。
さっき触れた手。その刹那襲った緊張感。
分からない。それは何なのか、考えれば考える程に…、
分からないの。
トントンと肩を叩かれてハッとする。
「ほら、田上さん。こっちにいろんな色のがありますよ。可愛いのだって選び放題! 目、奪われました? キャハハハ」
朝比奈さん、何故か笑ってる。
いいえ、何故かじゃない。きっと、事ある毎にボーッと考え事をしてる私の事、笑ってるんだわ。
こんなのじゃダメ。しっかりしなきゃ!
「あ、じゃあ…」
確かにカラフルなものから落ち着いた色合いのものまで、沢山並んでいる。
ここはアパレル業界人である私の、センスの見せ所。
目の前の、ハンガーにかけられているのを手に取る。
すると…、
「らしいわ、田上さん。キャハハハ」
らしいって? え?
何も考えてなかったけど、めっちゃ地味じゃん! 違うわ。私の好みって…。
「らしい…ですか? え? これじゃなくて、こっちのピンクを取りたかったの。エヘヘ…」
「いえいえ、ごめんなさい。アパレル勤務の方だから、カジュアル性も見てシックなの選ばれたのかなって」
「そ、そういう訳じゃなくて…、こっちって言ったじゃん。このピンク…」
「うふふ…お似合いだと思いますよ。田上さんって、今着ておられる服のイメージが強かったから、ちょっと意外性出してみるの、オススメです」
い、意外性…???
今着てる服。あ、今日ってチャコール着てるじゃん。
ええっ? 私って、そんなに地味なのかしら?
物語と関係あるのかないのか…
2025年の「女性がなりたい顔ランキング」では北川景子さんが1位だそうです。
DAIGOさん、鼻高々ですね。
女性が女性に憧れる。
麻衣の心はどう動いてるのでしょうね。
アクセスありがとうございます。
次回、「山に魅せられて[8]
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