星空に願いを[2]
思わぬ誘い。私はまだ、それに乗った訳じゃない。
正直言って、学校を卒業する時は「せいせいした」ぐらいの気持ちだった。
陸上部期待の星とまで言われた私だけど、みんなの思いを無視して勝手に退部届を提出し、同時期に足を怪我して、挙句登校拒否…。
こんな生徒だったのだぞっ! 考えるまでもないわ。バーベキューに私が参加するなんて、一体誰が喜ぶのよ?
そら君? そら君か、喜ぶのは。だって、誘った本人だもんね。
そら君は今、あのクラスメイトの間でどんな存在なんだろう。
ちょっぴり内気だったあの頃とは打って変わって、とても積極的に私を誘ってきた。
明日菜? 明日菜の仕業かしら?
当時、明日菜には彼氏が居て、そら君の事は私に「どう?」なんて訊いてきてたのだから、彼女はそら君の事を“友達以上”としては捉えていないはず。
まぁ、私には彼氏が居ないのだから、別に今、「付き合ってみたら?」なんて言われても自然な流れなのかもしれないし、明日菜はずっと、私にそら君を推してた訳だし。
面倒くさい。
明日菜とは確かに仲良くしていたし、嫌いではないから…。
だけど、あのクラスのメンバーが集まるって言われると、やっぱり面倒くさいんだ。
「ほらぁ、またボーッとしてぇ」
「あ、すみません」
「休憩中は好きにしたらいいけどね」
だんだん心の切り替えが出来るようになってきて、休憩時間はいろいろ考え事をしつつ、仕事になると集中力を発揮。
それはまるで、リラックスした状態でトラックに向かい、スタートラインでは走る事のみに意識を向け、高めていく、短距離走そのもの。
なんて、大袈裟に言ってみたけど、それぐらいの切り替えが出来ないと、当然結果なんて出せないし、もっと言うならば…、
この過去の私みたいに大怪我をする事になりかねない。
13:00ちょうどに、それは目の前に現れた。
「こ、これ?」
「そ」
―「そ」って。
宮地さんから受け取ったそれは、1枚のイラスト。
柄ではなく形で「和」を表現したワンピース。見るからにパーツの多そうな…。
「パーツは自分で考えて型紙を作る事!」
うあ! いつになく厳しいわ。
しかも洋服で柄を省略した状態から「和」を表現するのだから、余程宮地さんのセンスを理解出来ていなくては…。
「田上さんの納期は3日後。それまでに考えて作って来て。先週末はガッツリ遊んだんでしょ。大丈夫よね?」
ううっ、夏川さん…何か威圧感。3日後って?
「今日は金曜日じゃんっ!」
日曜日はそら君達とバーベキュー。参加するなら、明日か月曜日の午前中しか時間がない。
そんなの無理だわ。
『日曜日の件だけど、ごめん。今は仕事が大切な時期に来てて』
そう打ち込んで、送信を躊躇ってしまう。
高校時代のクラスメイトと、久しぶりに会える。明日菜や美咲に会えるはずだった。
無理と分かった途端に、残念な気持ちになる。
特に美咲についてはそうだ。私が服飾に進むきっかけになった人なのだから。
今、どうなってるんだろう。元々華のある人だから、痩せて綺麗になってるのかな?
だけどそれは、社交辞令を身に纏った裏の自分であって、本心は「面倒くさい事から解放された」に尽きる。
というか、喜んでいる場合でもない。宮地さんから受け取ったイラストを基に、パーツ毎に分解して型紙を作る。
そうした意図は何なの? 忠実に再現するのがいい? それとも、私なりのアレンジを期待しているの?
訊きたくても訊けない雰囲気が、今ここにある。
今はただ、集中あるのみ。
アクセスありがとうございます。
次回「星空に願いを[3]」
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