友達と呼んだ夏[12]
コラボ企画!
あの物語の、あの人と彼奴。
某SNSでのやり取りに、頭沸騰!
きっと足の事を心配してくれているんだと思う。そう思う事にする。
私が陸上短距離走の選手として、トップでテープを切る。そんな事を勝手に夢見ていた父は、私が陸上を辞めた時から言葉少なになってしまった。
陸上競技に打ち込まないのなら、別に話せる話題もない。そんな人だ。
一方の母はというと、
「16:00に山を下りるのね? 私達は何をすればいいの?」
「予定時刻に下りなかったら、遭難したかもしれないって思われるわ。だから、下山したらメッセージ送るから、それだけは確認して」
「分かったわ。気を付けてね」
少しは耳を傾けてくれるし、心配もしてくれているのが分かる。
だけど、山に関して何の知識も持たないのだから、あまりあてには出来ないかも。
さて、明日に向けて仕事モードに切り替えていかなきゃ。
「ああっ! もう…イライラするっ!!」
―え? 私かな? 何かやらかした?
主に生地のカットを担当する磐田さん。何かあったのかな? 凄い声で感情を露わにしている。
カットといえば、私が作った型紙を使う訳だから…、磐田さんの仕事が上手くいかないと、それは私の責任になるのかもしれない。
夏川さんは、これまたイライラして磐田さんに目線を送っている。
ああ、嫌だ。この空気。
「ん、んっ!」
夏川さんの咳払いが聞こえる。
―怖。
もし私がやらかしたのなら、すぐに謝らなければ。でも、直接声をかけるのも憚れる程に、その態度が怖くて近寄れない。
「あの…」
もしかして事情を知っているかもしれない村崎さんに、磐田さんの事を訊いてみた…ら?
「あれよ。SNSよ。MTG-roomとかいう…」
村崎さんがそう言うや否や、磐田さんは私に近付いて来て、
「田上さんってSNSやってる?」
「い、いいえ…」
もう苦笑いしかない。
磐田さんの鼻息から発せられる湯気で、ふやけてしまいそうな気分だわ。
「やってないの!? まあいいけど、見てよこれ」
yozakuraminmin:
「テラカジの、今年の春秋モデルのブラウス買えなかったぁ…泣 来年の新作は絶対GETしてみせるぞー!!」
O-moricha-han:
「>yozakuraminmin お前、性格◯スだから何着ても一緒じゃねえの?」
「な、な、何これ!? 酷っ!!」
磐田さん…、こんなの見て怒ってるの?
「でも、yozakuraminminさんってテラカジのユーザーさんなんですね」
「それはいいんだけど、このO-moricha-hanって奴、いつも酷いリプばっか送ってんのよ」
「でも磐田さん。テラカジは否定されてないから、ここは気を落ち着けて、それ、閉じましょう」
あれ? 村崎さん、妙に知ってるみたいなんだけど。
「何かねぇ、yozakuraminminさんが気の毒で」
「yozakuraminminさんって頭いいから、たぶんO-moricha-hanの事はやっつけると思うわよ」
「…って、村崎さん。何で知ってるの? まさかMTGやってるんですか?」
村崎さんは、口元に手をやってクスクス笑った。
「アイデアはね、こんな所にもヒントが隠れてる事があるのよ」
確かにそうだ。私も見た事はあるけど、ファッション関連の投稿をされてる方も、かなり多いようだ。
というか、そもそものスタートはファッション関連での意見交換だったと聞いている。
意見交換かぁ。確かにアイデアはそこから生まれると思う。誰かの声をヒントに、自分なりのセンスでそれを展開していくんだ。
逆に叩かれた場合、それは求められていない物なのね。
「誰だって苦手な人は居ると思うけど、そんな人って、自分とは別の世界観で別の物を見て、全く違う考えで物事を展開するの。そう思うと、苦手な人の話って聞いてみたくならない?」
苦手な人とは話したくない。だけど、私とは違う世界に居る事は間違いなさそうで。
村崎さんはさらに続けた。
「成功する仕事って、そんなもんだと思うわ。同じ方向を向いてても、違う経路を通って来る人は居るでしょ?」
何で同じ道を進んでくれないの? そう思う事も、多々あるはず。だけど、違う道には違う景色があって、目標地点に近付く時、それぞれの見て来た景色を話し合う。
自分は海を見て来た。
あの人は街を抜けて来た。
この人は山を越えて来た。
そして今、ここに辿り着いた。
そんな話をすれば、人は他人が通って来た道を素敵だと感じてしまう。だから発見があるんだ。
いつもワンマンプレイの宮地さん。
バイタリティ溢れる谷山さん。
気の強い夏川さん。
感情豊かな磐田さん。
リーダーシップが長けている村崎さん。
そんな人達に囲まれて、私は仕事をしている。
そして、プライベートで私に素敵な景色を見せてくれる、明るく奔放な女の子、朝比奈歩果。
みんなそれぞれ違うから、発見の日々が楽しいんだ。
ともすれば、あの両親だって私に沢山の景色を見せてくれたのだから、もっといろんな意味で大切にしていかなきゃ。
まさか…
磐田さんと村崎マネージャー、あれのユーザーなのね!!
アクセスありがとうございます。
次回「友達と呼んだ夏[13]」
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