友達と呼んだ夏[8]
京都らしさを感じるカジュアルウェアって?
日付が変われば、仕事モード。
山の事はしばし忘れて、イベント出展に向けたプロジェクトに集中しなければ。
京都と言えば、着物。和服姿の観光客も多く見かける。
だけど、テラカジは洋服。
これまでも、リーズナブルな価格で京都らしさを含む、品位の高いカジュアルウェアを提供してきた。
そんな方向性が好きで、私もここに就職した。いや、就職出来たんだ。
「和柄…和柄のブラウス…ですよね」
宮地さんは何も語らず、他5人から目線を外している。
私には分かる。分かるつもりだ。
今はきっと、これまでの概念に捉われない斬新な何かを考えているはず。
「麻の葉とか?」
「普通過ぎない? 矢絣みたいな方が映えないかなぁ」
大きなテーブルに置いた和柄のサンプルを見比べ、意見が飛び交う。
でも…、何で和柄に拘るのかしら?
疑問を抱えながらも、先輩達の話し合いにただ頷き、私は意見も出せずに居る。
ここに来て自信が持てない自分にもどかしささえ感じてしまう。
「田上さんは? どう?」
うあっ! 急に振られた。
「あ、あの…」
本当は和柄に固執したくない。だけど、じゃあどんな?って訊かれると、答える術がない。
きっとそれは、宮地さんの頭の中で出来上がっているものだから。
「あの…例えば、流水に秋草を組み合わせるとか」
思い付きで言ってみた。
意外と手応えはあった。だけど…、
「風景画みたいな発想ね。でも…」
「ちょっと落ち着かないかなぁ」
確かにゴチャゴチャするよね。
却下…だな。
そう思った矢先の事。
「ほら…田上が言ってるのって、こんなのだろ?」
宮地さんが口を開いた。
そして、パソコンのモニタを皆に見せた。
そこには、全面流水柄の、裾のわずかな部分に秋草を取り込んだ画像。
「あぁ、こういう事ね。宮地さん、的確だわ」
磐田さんは、宮地さんのデザインとなると絶賛する。
きっとそれは誰にしたって同じ事で、何かひとつの閃きですぐにデザインしてしまう宮地さんの引き出しの多さには、誰ひとり頭が上がらない。
流水と秋草…。その2つの名称のみで、私がイメージした以上のものを作ってしまう宮地さん。凄い!
「でもな、田上。ごめん。私の構想とは違うわ」
そしてまたワンマンプレイへ。
こういうところ、苦手。
「宮地さん、これ…」
「あ?」
こ、怖い。宮地さん、怖いわ。
「これね、一般向けの新作でやりたいわ」
村崎さんのこの発言に、皆が同意した。
「ブラウスじゃなくても、カットソーでも」
「ブラウスでしょ。流水がベースなんだから、ブラウスの方が合うわ。田上、でかしたぞ!」
え? 新作、決まり!? それも私の意見が通ったって事???
「じゃあ、これはこれで2パターン用意しましょう」
「じゃあ、先にイベント用を」
「はいっ!!」
何か乗ってきたよ。
イベント用のデザインからは外れたけど、自分もしっかりガッツリ参加している感触が得られた。
そして肝心の、ショー出品作品については?
「宮地さんは、どういうのをイメージしてるの?」
少し黙り込んだ。
きっと何か斬新な発想を持っているはず。
やがて宮地さんは、重そうに口を開いた。
「まずは無地か淡いストライプ柄でデザインさせてもらえる?」
え?
「和柄が合うのかどうか…形を見てもらって話し合いたい」
「つまりそれは…?」
「形で和を表現するの」
「洋服よ。どう表現するの?」
「だから見て欲しいのよっ」
和柄の名称がいくつか出てきました。
本文では、それらの画像を見て、私なりのイメージを描いてみました。
アクセスありがとうございます。
次回「友達と呼んだ夏[9]」
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