表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/95

友達と呼んだ夏[1]

第四話スタートです。

麻衣の周りでいくつもの変化が。

この夏は激動の予感。

「田上さん」


 梅雨明けも間近という7月中旬。街は俄かに祭りムードに。

 京都の夏と言えば、そう、祇園祭。

 私達の職場の周りにも、多くの観光客が集まる。仕事や学業に追われる日常から解き放たれ、街ゆく人は一様に笑顔を見せて楽しそうにはしゃいでいる。


「田上さんって」

「は、はいっ!」


 窓の外を眺めてボーッとする私は、今、一体何を考えていたんだろう。

 磐田さんの声に驚き、振り返る…あれ? 磐田さんじゃなかった?


 私が作った型紙を当てて布を切り出すのは、磐田さん。だからてっきり仕事の話で声をかけられたのかと思った。


「何? ボケーっとしてぇ」


 谷山さん。

 めっちゃ笑ってる。

 時計を見れば、今は休憩時間だ。そりゃあ怒られたりしない訳だわ。


「な、何か?」

「うん。あのね…」


 何かとても嬉しそうな笑顔に、胸を撫で下ろす。


「個人的なんだけど…」


 あら? 何とも香ばしい話。

 個人的、つまり山岳会とは別で、夏山に行ってみないか?と。


「ええ? 2人でですか?」

「あら? 何か物足りないかしら? うふふ…」


 物足りない訳じゃなくて、2人というのに驚いた。

 え? 違う?


「うふふふふふ…歩果ちゃんも一緒よ。3人で」


 その瞬間に、私の瞼の裏側で星が輝き、花火が上がった。



 何故朝比奈さんが一緒なんだろう?

 そんな疑問は、様々な思考を経て胸をときめかせる。


 言い出しっぺは、谷山さん? それとも朝比奈さんかしら。

 じゃあ、私に声をかけようって言ったのは谷山さん?

 そうね、朝比奈さんが言い出しっぺなのなら、私に声をかけたのは谷山さんだわ。

 まてよ? 谷山さんと私は同じ職場で働いているんだから、朝比奈さんにしたら谷山さん経由で私に声をかけやすいんじゃ?


「ほらぁ、行くの? 行かないの?」

「行きますっ!」


 もちろん参加だ。行かない選択肢はない。スケジュール確認なんてしなくても、私に用事なんてある訳もない。


 ああ、もうワクワクが止まらない。憧れの先輩である谷山さんの誘い。そして、今すぐにでも会って友達になりたい朝比奈さんが同行。

 考えるだけで笑が浮かんでくる。


 あ、磐田さんが不思議そうに見てるわ!


「田上さん、休憩終わりよ」

「は、はいっ!」


 ボーッとしている場合じゃない。早く型紙を磐田さんに渡さなきゃ。


「田上さんもだんだん出来るようになってきたわね」

「そうですかあ? 相変わらず天然だけど…うふふっ」

「天然は天然で置いといて、仕事、早くなってるし。やり直しも減ったと思わない?」


 むむ…? お2人で何を話してるんだろう。どう見ても目線が私だわ。



 ―バタン!


 ドアが勢いよく開くと、みんなの目線がそこに集中する。


「宮地さん…」

「はい、これ…」


 こ、怖っ!

 いつもの事だけど、夏川さんと宮地さんのやり取りには、緊張感を抱かずにいられない。

 喧嘩なんてした事はないけど、いつ争いが勃発してもおかしくない、最悪の相性だと思う。


「田上っ!」

「あ、は、はいっ!」

「アンタ、こんなトップス好きなんじゃない?」

「へ?」


 見えないロープか何かで引っ張られたような感覚で、私は宮地さんのデスクの横に立ち、パソコンの画面を見た。


「うわぁ、可愛い…」

「作る気ある?」

「もちろんです!」

「パーツ、多いよ」

「大丈夫です。頑張ります」


 宮地さんは少し笑った。いいえ、そんな気がした。


 スカートにも、パンツにも、時にはシックに、時にはフェミニンに。

 かなり凝っていながらどんなファッションにも合いそうなそれは、既存の製品には見当たらない斬新な、それでいてどこか街に馴染むような素敵なデザイン。


「これ、キンコレ(近畿ガールズコレクション)に出展する作品の案。叩き台ね。田上、キンコレにはアンタの型紙から作って出したいの。頑張って」


 宮地さん…!!

アクセスありがとうございます。

次回「友達と呼んだ夏[2]」

更新は、X または Instagram にて告知致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ