表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/93

恋をしてみたかったあの頃[4]

 学校では…?

 先生はどうだ?

 陸上部顧問はどう応える?

 キャプテンは?

 他の部員は?


 能力がある事=好きとは、どこでどう間違って生まれた定義なんだ?

 みんな一様に、驚きを隠さない。そして、みんな同じ事を言う。まるで定型分の如く。


「なぁ田上。勝てる足なんだよ。もっとじっくり考えてみてからでもいいんじゃないか?」

「私、競う争うは嫌いなんです。他にやりたい事があるんです」


 父に対する説得も済まないままに、私は陸上部員としての戦意喪失を訴えている。

 欲しいのは戦意ではなく、繊維を使った芸術センスだ。せんい(・・・)違いだ。


 しかし、そんな私に返してくる言葉は、響きは違えど意味は同じ。私の話など、聞いているのかいないのか。


「トレーニングを積めば、全国狙えるんじゃないか! 折角才能あるんだから、俺達と一緒に目指そうよ!」


 顧問の先生である戸田康平教諭は、青春ドラマの見過ぎかっ!とツッコミたくなるような人だ。

 昭和の頃には、“スポ根”なんていうジャンルがあったそうだけど、なんか熱苦しくて、見てると疲れそう。


 ところで、私に頑張れって言うけど、一体誰のために頑張れと?

 一緒にって言われたって、申し訳ないけど私はそれを望んでいない。

 みんながどれだけ説得しようとも、私には私の人生があり、夢があるって、今言ったはず。

 申し訳ないけど私、あなた達のために生きてるんじゃないわ。

 だからこう言うの。


「本当に期待を裏切るようで申し訳ないですけど、私は別のジャンルで生きていきたいんです」


 だけど、何と言おうともこの俊足という名の能力が、私の意思を邪魔しようとする。

 正直言って、怪我でもして走れなくならなきゃ、引退なんてさせてもらえないんじゃないかと思った事も、しばしば。


 怪我なんて、意図的に出来るもの? 試しにグーを握って膝を叩いてみる


「痛っ!!」


 当然だけど、めちゃくちゃ痛い。なのに致命傷を与える事なんて出来ない。

 自傷行動は、防御本能によって抑制されてしまう。つまり、躊躇いが拳の勢いを和らげてしまうのだ。


 辞めるなら、やっぱり説得するしかない。自分の人生なのに、何て面倒なんだろう。

 こんな大きな期待を背負って、しかも「もっとトレーニングを」だって? 言ったじゃん。争いたくないのよ。


 参加する事に意義があるなんて、スポーツの世界では時々耳にするけど、そんなのは違うと思う。

 大会に出場出来れば満足? そんな訳ないじゃん。勝ってこそ意義があるものでしょう?

 スポーツなんて、そんなもの。

 世界で戦うひと握りの選手たちが、果たして本当に幸せなんだろうか。


 勝つために体を鍛え、技術を磨く。

 それは、生半可なものではない。自分を追い込み、いじめ、ようやく習得した技術が、自身の目指す場所で通用するとは限らず、才能と能力を持った人達のうちの何人が泣いた事だろう。


 その結果待っているのは、スポーツに明け暮れた青春時代に、一般的な職業に対する知識や能力、技術など、何も身に付いておらず、結果路頭に迷う日々。

 みんながみんなそうとは限らないけど、よくそんな話を聞いたりもする。

 きっと、好きでもない兄から聞かされたのだと思う。


 これが戸田先生に話した内容。

 当然だけど、先生はとても悲しげな顔をした。

「そんな事考えてないでしっかり打ち込めば、結果はついてくるさ」


 あぁ、決まり文句だ。

 間違ってはいない。結果は確かについてくる。

 どんな結果であろうと、何かをやったその先には“結果”というものは必ず存在する。

 それが望み通りならしめたものだけど、その殆どが望まぬ悔しいものになってしまう。

 私はそれを、兄を見たから知っている。


 ああなりたくない…から。

麻衣はスポーツを否定するような発言をしました。

この先読み進めていただくと、今回の麻衣の言葉がストーリーの中で活きてきます。

どのように? それはお楽しみに!


アクセスありがとうございます。

次回「恋をしてみたかったあの頃[5]」

更新は、X または Instagram にて告知致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ