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山に魅せられて[25]

今回は、伊吹山の様子と、ハイキングに+αというところを描いています。

人の数だけある楽しみ方。

ご覧くださいね!

 バスは高速道路を降りて伊吹山ドライブウェイへ。

 段々と標高が上がってくるのが、とてもよく分かる。

 生い茂った木々は、徐々にその数を減らしていく。代わりに高山植物って言うの? 背の低い植物が、道路の脇に広がる。


「そこにね、ほら、大きなカメラ構えてる人が居るでしょ?」

「あれは何を撮ってるんですか?」

「イヌワシだよ。羽を広げると2mにもなるらしいよ」


 体長も1m近くある猛禽類。

 私には想像もつかないけど、そんなのが棲んでるというだけでも、山のポテンシャルを感じる。


「見れるんですか?」

「それはどうかなぁ。写真家さんだって、あんな風にして待ってるんだから」


 そりゃそうだ。何を言ってんだか。恥ずかしい…。



 やがてバスは、大きな駐車場に入って行く。伊吹山ドライブウェイの終点に着いたんだ。


「ひっ!」


 思わず体を硬直させてしまう。標高1377m。下界(・・)では蒸し暑い梅雨の空気だけど、ここまで登って来ると、逆に肌寒い。


 村上さんご夫婦が、困った表情で辺りを見回す。

 朝比奈さんは、そこにいち早く気付いたみたい。


「防寒着、着られた方がいいですよ」

「あ、あぁ…」


 朝比奈さん、バスの中に入って行ったと思ったら、大きなバッグを担いで降りて来た。

 中から取り出したのは、「ベルグ京都山岳会」ロゴの入った防寒着。

 村上さん、持って来たものが薄手だったので、それで困っておられたのね。


 さすが山岳会。用意周到と言ったところ。

 参加メンバーみんなが楽しめるよう、先手を打って対応出来るようにしてるんだ。


 点呼を取り、いよいよ山歩きに挑む。

 山崎さんが先導し、中間に藤野さん。朝比奈さんは、谷山さんと一緒に最後尾へ。

 初心者の私でも安心。


 頑張るぞ! と、ちょっと意気込んでみる。

 あ、あれ???


 1000m超の高山とはいえ初心者向き。その意味は、歩き出せばとてもよく分かる。

 本当に険しい道がないんだ。


 周囲を見渡せば、其処彼処に鮮やかな花が咲き、大パノラマと相まって壮大で美しく、非日常的な風景に囲まれている事に気付く。


 こんな素敵な景色を、こんなに軽快に楽しめるなんて。

 ここに来ればきっと、誰もが山を、自然を愛さずにいられなくなるだろう。


「あれはカワラナデシコ。シモツケソウも咲き始めてるね」


 大きなカメラを首から下げる本村さん。

 何を撮るんだろうと思って見ていると、振り返ってそう教えて下さった。


「これは?」

「アザミ」


 本村さんは、カメラのレンズを交換しながら私の質問に応対して下さる。


 その一方で、


「おお! のび太君だ」


 のび太君? え?


 双眼鏡を手にする村上さんのご主人は、野鳥観察している。


「ノビタキっていう鳥のオスの事をね、のび太って呼ぶの」


 奥様がそう仰った。


 ひと口に登山やハイキングと言っても、ただ山を制する事に情熱を注ぐ人や、高山植物の観察、野鳥観察、写真撮影など、目的は様々なんだ。


 それにしても、本村さんのカメラは凄い。

 一眼レフだ。しかも、交換レンズを幾つも持っていて、遠くの花を撮ったり近くの花にググッと寄ってみたり、それはただ単純に記録するだけじゃなくて“作品”になっている。


 折角だから私も、何かプラスアルファを持ってみるのもいいかもしれない。

 だけど、何を? そこが、いつも詰めが甘いと言われる所以。


「谷山さん!」


 閃いた。すぐに、近くに居る谷山さんを呼んでみた。


「何? どうしたの?」

「あのね、谷山さん。ほら、こんな花柄の生地で何か作れないかしら」

「え? 仕事の事考えてるの!?」


 結局それだ。

 私って、この程度の思考能力しか持ち合わせていないんだ。

 でも…。


「でもそれ、いいかも! ニッコウキスゲとシモツケソウとアザミかぁ。高山植物の花柄って、今までなかったわね」


 むむっ! 手応えありね。

アクセスありがとうございます。

次回、「山に魅せられて[26]」

更新は、X または Instagram にて告知致します。

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