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山に魅せられて[15]

京都ベルグ山岳会会長の登場。

読者の皆様は、山岳会というとどんな印象をお持ちでしょうか?

 1万円オーバーのアウトドアチェアーに座り、どこか落ち着かない目で周囲を見渡す。

 そんな様子を見て谷山先輩はクスクス笑うけど、私にとって初めての事ばかり。緊張するなと言うのが無理な話。


 そうこうしていると、スタッフルームの奥から、日焼けが落ちないかのような真っ黒な顔の中年男性が現れた。


「山崎さん、山崎さん、こっち!」


 朝比奈さんはその男性を私達の前に招き入れると、またあの屈託のない笑顔とアニメチックな声で紹介する。


「京都ベルグ山岳会会長の山崎さん」

「こんにちは。山崎です。ここの店長と山岳会会長を掛け持ちしてます。あっはっは」


 笑う事なんだろうか?

 重要なポジションを2つも持ち、目が回りそうなんじゃ?

 少なくとも私は無理。2つのグループを仕切るような器用さは、きっと持ち合わせていないはず。


 だけどそんな心配などご無用とばかりに、山崎会長はにこやかに話しかける。


「朝比奈から聞きましたよ。田上さん、大文字山に登られたんですね」


 大仕事をこなしてお褒めに預かる? いやいや、そんな偉業でもないはずだ。


「お恥ずかしいです。まだほんとにビギナーなもので。皆さんにとって、大文字山なんか入門かそれにも満たないレベルなんじゃ?」


 本当に恐縮だ。謙遜なんかで言ってるのじゃなく、心底恥ずかしい。

 なのに山崎会長、こんな私を凄く持ち上げようとしている。


「いえいえ、恥ずかしいなんて事はないんですよ。誰だって最初はビギナーだし、山岳会にはね、個人で山に行けない…そう、自信がないからエスコートしてほしいなんて人もいらっしゃいますからね」


 本当にそうなの? 私のイメージでは、登山家の集まり。ガチで高山にチャレンジするための…ん? 何だっけ? パーティって言ったかな? そういうものなんだけど。


 それにしても、話を案内に持っていくのも凄く上手だと思う。


「躊躇されるのも分かります。皆さんやっぱりね、山岳会っていうとマッターホルンとか世界有数の高山に挑む勇者…みたいなイメージを持っておられて、よく放送されてるテレビの映像を思い浮かべられるんですよ。ははは…」


 だって、テレビの映像以外に登山のイメージを想像させるものってないでしょ?

 そうじゃなくても、たかが400mそこそこの山で“冒険”してる人なんて見た事がない。

 そうね。大文字山って、きっと別にテレビで取り上げるほどのレベルじゃないんだもの。


「だけどね、例えば高尾山。標高522mで、大文字山よりは高いけど、ビギナーにも良いコースだよね。よくテレビでも映ってるけど、インタビュー受けてる人が「恥ずかしい」なんて、誰も言ってないでしょ?」

「そう言われたら…高尾山ってテレビで…。そんなに高い山じゃないんですか?」


 確かに見た事はある。思い出してみれば、テレビ映像を見てもみんな軽装備だったと思う。そして、誰も「恥ずかしいから写さないで」なんて言って顔を隠したり…しない。


「もっと言うなら、ベテランの方でもこれぐらいのレベルの山に通い詰めてる人だって居るんですよ。登山やハイキングの価値って、標高の高さとか険しさで決められるもんじゃない。登る人がどう感じるかなんですよ。だから田上さんも、初めてのハイキングが大文字山だとしたら、デビュー戦を登り切ったっていう価値があるんじゃないですか?」


 この人は、他人を否定するなどという気持ちは欠片も持ち合わせていない。

 自然を愛する人だから?

 熱中するものがあるから?

 私、この人達となら一緒に行動しても安心かも。鈍臭くても許されるのかも。


「あの…」

「はい」

「私なんかが入会しても、歓迎してもらえますか?」


 山崎さんは、目を輝かせて言った。


「もちろんですよ!」

登山の価値って?

それは、人それぞれの想いがどれだけ込められているか。

まさに山崎会長の言葉通りなんだと思います。

満足を得られたなら、どんな山だってかけがえのないひと時を、そして思い出を残してくれるもの。

日多喜瑠璃は、そう思っています。

※山岳会にて引率経験のある友人に取材をさせていただいています。


アクセスありがとうございます。

次回、「山に魅せられて[16]

更新は、X または Instagram にて告知致します。

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