夢の行方[13]
東京着。でも、目的地はこんな大都会じゃない。行先は、自然豊かな山麓の町。
すぐに北陸新幹線の乗り場へ移動する。
20番のりばには、敦賀行はくたか561号が待っていた。
「綺麗な電車!」
「どこまで乗るんですか?」
「高崎。高崎から信越線に乗って、終点まで行くよ。そこで僕らはガイドさんと落ち合うんだ」
「明日の朝じゃないんた。それじゃあ、泊まりもガイドさんは一緒?」
「うん」
私はガイドさんがどんな人か知らない。
泊まりも一緒だなんて事は聞いてなかったけど、食事もご一緒出来るのなら、ちょっと楽しみだわ。どんな人なんだろう。
高崎ではくたか561号を下車して、信越線に乗り換え。
車窓は都会の街並みから自然風景へと変わっていく。その先に見えるのは、美しい山々。
美しいのだけど、それは日本三大奇景のひとつとして数えられている。
奇景? 奇抜って事?
「ほら、見たら分かるよ」
山崎さんが指差す方向に、あらためて目をやってみる。
その方向には…
「い…岩!?」
「ははは…そうだよ。上に登る程、奇岩の壁になるんだ」
「そ、そんな余裕で言います?」
少しビクつきながら話した、山崎さんと藤野さんの登山。でも話しているうちに、妙義山という山が少し分かった。あの磐田さんが驚いていた理由も。
「その、中間道ルートを登るのね? あたしなら行けるかな? あ、麻衣ちゃんはヘタレな足だからダメねぇ〜」
「その余計なひと言がねっ!!!」
中間道ルートとは、鎖場も含むスリルと絶景のハイキングコースだそうで、言い換えれば初級でも鎖場を体験するのにちょうどいいコースね。
あれ? お2人の反応が???
「違うよ。表妙義だよ」
「お、表妙義ぃー!? それって縦走じゃないですか!」
「ははは。日帰りで行けるよ。10時間ぐらいでね」
「「じゅ〜じかん!!」」
歩果と声が揃った。
表妙義ルート。どうやら相馬岳をピークとする、上級者向けの難所続きなルートらしい。
そりゃあ登山のエキスパートなんだから、そっちに行くよね。
「今の時期、上の方から紅葉が始まってるはずだから、絶景を楽しめるかなぁ」
「そんな余裕ないでしょ!?」
「あたし達は下界から楽しませてもらうわ」
JR信越線。私のイメージでは、もっと山が迫っていて、その大きさに圧倒される…みたいな感じだったけど。
「山自体の標高は、そんなに高くないんだ。1074mだよ。431m地点から登山開始になる。累積標高は2133mだね」
「そ、そんなに…。結局はその、2133m登るんですね」
「まぁね。縦走だからそうなるけど。麓から見たら、標高差640m程だから、北アルプスみたいに“迫ってくる”感覚ではないよね」
『間もなく、終点、横川…』
終点に近付くと、さっきまでの景色とは違って山が近い。横川は谷間の町といった感じ。
「電車はここまでだよ。この先は行き止まりなんだ」
「昔は山を登って行く電車があったんだけどね」
山崎さん達の話を聞いて、すぐにピンと来た。
「あ、廃線…」
「そう。田上さんと歩果ちゃんは、ここから廃線跡を歩いて軽井沢まで行くんだよ」
「山崎さん達はここからあの奇岩の山に?」
「ここじゃないよ。ここでガイドさんと落ち合って、みんなで富岡っていう所のホテルに行くからね」
「そうそう、その前に…」
改札を出ると、意外にも小さな駅なんだなって思った。
そして、町並みも近代的とは言い難い。駅前の道だって、広くない。
そりゃあそうだ。四条河原町や国際会館とは、町自体の規模も違いすぎる。
でも私は、こんなこぢんまりした町も好きだ。
「こんにちは!」
「おうっ! 久しぶり」
駅前で私達を待っていたその人は、これからの行程を山崎さんと藤野さんと共にするガイドさんだ。
若い。私達より少し歳上ぐらい? 登山のエキスパートとしてはとても若い人だ。
「お兄ちゃんっ!!」
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