夢の行方[11]
私もつられて泣き出してしまう。何だこの、楽しいのに泣きじゃくっている様は…。
「じゃあ、そういう事で」
そんな私達の横で、旅程は決まった。このままじゃ、私達3人はアウト! そう思って山崎さんが話をまとめてくださった。
正直驚いた。突然の歩果の号泣に、今日はもう話し合いなんて無理かと思ってしまった。
何が彼女をそうさせたんだろう? 確かに泣ける歌ではあるんだけど。
笑いながら号泣する変な3人を見て、お客さん達もクスクス笑っていた。
ちょっと恥ずかしかった。
来る三連休。文化の日。
みんなは、ここベルグの前で集合。
一方私がベルグに行くなら、烏丸御池からは京都駅と逆方向の電車に乗る事になってしまう。
とんでもない遠回りになるので、私だけ京都駅で合流し、みんなで夕刻に群馬県富岡市のホテル着。
現地で山行チームのガイドさんと待ち合わせ。
新幹線で東京回りだと、4時間ちょっとで行けるんだって。朝もゆっくり出来るわ。
みんなで一泊したら、翌日からは歩果と2人きり。山行チームと別れ、私達は廃線ウォークを楽しんで、二泊目は軽井沢のホテル。
めちゃくちゃ楽しみだわ! うん、楽しみしかないじゃん!!
軽井沢ってよく聞くけど、横川とか富岡とか…群馬県なのね。初めてだわ。どんな町なのかしら。歩果は行った事あるのかな?
避暑地って言われるぐらいだから、きっと京都より寒いよね。紅葉してるかな? 綺麗に紅葉してたら、歩果も目を丸くするだろうな。あ、元々丸いけどね。
廃線ウォークって、どんな道を歩くのかな。兵庫県の武庫川沿いと違って、結構な急坂だって聞いたけど。線路跡なら、道も砂利かもね。歩くの大変かなぁ。歩果にリードしてもらお!
泊まる所って、どんなホテルなんだろう。温泉宿って言ったわ。歩果と一緒にお風呂なんて…どうしよう。ドキドキだわ。
長野を回る帰りの車窓からは、浅間山が見えるんだって。写真で見たけど、綺麗な山よね。歩果は登ったのかなぁ。
私の心を浮き上がらせる様々な期待が、次から次へと生まれてくる。
駄目だと分かっていながらも、仕事中も時々ニヤニヤしてしまう。
こんな時、一番怖いのは…、
「田上さんっ! あなた、また何か遊びの事考えてるわね?」
はいっ! 夏川さん、すみません。御名答でございます。
だけど私も腕を上げたので。
「先にこれ、ご査収くださいっ」
「あら? その型紙、もう出来てるのね? あっ、じゃあ磐田さん…」
磐田さんったら、またエゴサーチかしら。どう見てもあのPCに映されてるもの、私達の洋服ではないわ。
「田上さんっ! 妙義山って…、恐ろしい山よ」
あ、あれ? 何見てるんですかっ!
「ち、違いますよ。私にそんな山なんか、登れる訳ないじゃないですか。私は山岳会の女の子と一緒に、廃線ウォークっていうのに参加するんですよ」
「まぁ、田上が行ったら命ねぇわな」
ううっ…、宮地さんが絡んできたら、毒針が刺さったみたいだわ。
夢乃さんがステージに上がれると言うので、職場の方も強烈な緊張感から解き放たれた感じ。少なくとも今は、和やかムード。気持ち的にも楽で、お遊びモードになっても許されそう。
え? 駄目よね、仕事中は仕事モードよね。
「だけどな、田上。今は大事な時だってのも忘れんなよ。何かあれば電話するかもしれないよ」
「それはもう、承知の上です」
「じゃあ、とりあえず仕事中は仕事の事考えて、三連休は思いっきり羽伸ばしておいでね」
厳しい言葉も交えながら、それでもみんな、快く私を送り出して…? ん? それも何か変だな。
兎に角、「行ってらっしゃい」のお言葉をいただいた。
ありがとうございます!
だけど、大事な時なのは間違いない。心しておきます!
もう、麻衣ったらぁ。
ホント、足が地に着いていないってこの事を言うのね。
アクセスありがとうございます。
次回「夢の行方[12]」
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