夢の行方[9]
青春…。始めてもいいかもしれない。
恋…。始めてみたい。
恋かぁ。
だけど、青春って恋に限った事じゃないよね。本当に気の置けない友達と、馬鹿やって笑ったり、誰にも言えない秘密を打ち明けたり。一緒に悩んだり泣いたり。そんなのだって、きっと「青春」という言葉で表現出来るんだろうな。
私の学生時代に関して言えば、あまり馴染みのない言葉になっちゃうんだけど、10代から20代前半ぐらいの何でもがむしゃらに打ち込める年代を一生懸命生きてる…、たぶんそんなニュアンスの言葉なんだろう。
だったら、私も今、青春を謳歌しているんじゃ?
朝比奈歩果…。
今はもう、すっかり友達になっている。そして、大体週3日は会って、馬鹿な事言ったり戯れあったり、そして笑い合っている。
ていうか、笑わせてくれるのはいつも歩果なんだけど。
実は私、仕事やハイキングより、この時間が一番好きかもしれない。
「家まで送るわ」
「大丈夫です。どこかの駅で」
「そんな事したら、麻衣はまた違う電車に乗ってパニックになるでしょ?」
「あ、あは、あはは…。じゃあ、東西線の駅で」
「いいよ。送るから」
谷山有希…。
今はユウさんと呼んでいる、職場の先輩でありハイキング仲間。
仕事もプライベートも、何もかも私を指導してくれる頼れる人。
ユウさんと過ごすプライベートタイムも、私にとって素敵な時間。
そして今、私は、自分を輝かせるためにプライベートタイムを一生懸命過ごし、限りある命を輝かせようと必死に生きる夢乃さんのため、仕事時間を一生懸命過ごしている。
日々、全力で生きてるんだ。
「あんまり力んでると、本当に疲れるよ」
「大丈夫です!」
ユウさんは少し間を置いて、そして笑った。
「そうね、あははは! 休憩時間、いっつもボケーッとしてるものね」
むむっ…! 的確なツッコミだわ。
「そうそう、程よく力抜いてますから」
「こ〜んな風にねぇ〜」
そう言うと、ユウさんは驚く程の変顔をして見せた。そのお茶目な感じがとても意外で、堪えきれずにお腹を抱えて大笑いしてしまった。
そんなユウさんだって、歩果だってそう。全力で生きてる。そんな風に見えるわ。
「みんな聞いて! 夢乃さん、退院したわよ! 元気になったって」
あれから数日後、村崎さんのいつになく張り上がった声に、私達は歓喜した。何なら、拍手まで起こった。それ程までに嬉しい。
「明後日、試着に来てくれるそうよ」
またも拍手が起こった。
そこに、聞きづてならぬひと言も。
「良かったね! 田上がランウェイ歩くの、回避出来そうね」
「それだけは避けたかったものねっ! あっはっは」
宮地さん…、相変わらず毒が強いわ。
だけどそれ、私自身望んでいた事でもあって。そう、複数の意味を含んで。
「そ、そんな言い方ってぇ…」
みんな笑った。もちろん私も。
その笑顔はきっと、夢乃さんが私達にくれたものだと思う。
心に響く歌詞、歌声。
いいえ、音楽だけじゃない。深く知れば知る程に全身から力が漲ってくる。そんな感覚を、いつも私達に与えてくれる。
夢乃さんにはそんなパワーがあると、私は感じている。
「よし! 田上さん。愚痴なら今晩聞くわよ。みんな、今晩食事に行かない?」
「行きまーす!!」
夏川さんの声かけに、みんな賛同した。
今、私達は凄く良い雰囲気だ。夢乃さんを…、1人の素敵な女性をより輝かせるため、一致団結した。
そしてこの人は…?
「宮地さん?」
ユウさんからの問いかけに、宮地さんは静かに口角を上げた。
「OK」
アクセスありがとうございます。
次回「夢の行方[10]」
更新は、X または Instagram にて告知致します。




