夢の行方[4]
翌日の職場。
突然ユウさんから声がかかった。
言うまでもなく、妙義山…いいえ、廃線ウォークの件だ。
突然? そう、私、ユウさんは知らないと思ってたから。
ちょっと複雑な気持ちになった。歩果はまだ、私と2人の前にユウさんにも声をかけるんだ。歩果は自分と私の間に、まだワンクッション置くんだと、何か嫉妬にも似た変な感情が生まれてきた。
―だって、ユウさんは忙しそうだしって、歩果は言ったわ。私より先にユウさんに声をかけてるんだわ。
でもそれは、至極自然な事で。何故なら、仕事でも山岳会でも、ユウさんが先輩。誘うのだって、仕事に関して問題がないか確認するのだって、ユウさんが先なのが普通だと思うから。
歩果にしてみれば、私よりユウさんの方が付き合いも長いし。
あぁ、何無駄に悩んでんのよっ。
「どうしたのよ、麻衣」
「え? あ、あぁ…」
「お誘い、受けたの? 歩果から、『麻衣ちゃんと行きたいんだけど』なんて言われたから」
「あ、そうなんですね。あ! そうなんですねっ!?」
な、な、何だこのリアクションは?
私と行きたいってのら本当だったのね。めっちゃめちゃに嬉しいじゃん! それならワンクッションなんて要らないわ。ダイレクトでOKよ。
私って単純。
「でも、何で私に言うのかなぁ。歩果と麻衣の話だから、私って関係なくない?」
「そ、そ、そうですねぇ。仕事…大事な時だからって、気にしてるのかなぁ」
そこに、フッと別の影が。
「一応確認しとかないと。田上って、忙しくてもホイホイ行っちゃうからねぇ」
―宮地さん。怖っ! 相手が歩果だから、図星かも。見抜かれてるんだわ、きっと。
「そ、そんな事ない…」
「あるかもねぇ。うふふっ」
あれ、何だかユウさんまで意地悪に?
「行ってきな。大事な友達からの誘いだろ? 三連休なんだし、しっかり体…ふふっ、虐めといで」
―宮地さん、優しい方が怖いわ。
三連休。スポーツの日だって。廃線ウォークにピッタリかも? 体、しっかり動かさなきゃ。
「さ、仕事よぉ! 14時頃に夢乃ちゃん来るから、1階のホールに集合よ」
夏川さんの上機嫌な声で、皆が動き出す。
階段を降りて、一階の多目的ホールへ。既にボトムス部門の6人がホールの前で待っていた。
ただ、どことなく穏やかではない雰囲気。みんな表情が明るくないし、とても不安気だ。
村崎さんを見るや否や、トップス部門の篠原マネージャーが寄って来て、何やら耳打ちしている。
時刻は13時半。ホール内部の様子は、何も変わらない。
夢乃さんは、まだ着いていないのだろうか。
「とりあえず、状況説明だけでもしたもらえません?」
誰かがそう叫んだ。
私達は、周りを見渡した。
「あれ? 宮地さんは?」
「村崎さんと夏川さんも居ない?」
やだ。私達、置いてけぼりなの? 一体何があったと言うの?
「あ!」
「え? 何? 田上さん…」
磐田さんの問いかけに応えもせず、私はホールを飛び出した。
「おおっと!」
「きゃっ!!」
私が慌てているものだから、廊下を歩いている人に衝突しかけた。
ん? いいえ、その人も慌てている感じ。
―誰?
男性なのに、背中まで伸びた髪。ダサかっこいいロック系ファッション。
そして、我が社の…もちろんレディースなんだけど、ファッションに取り入れている。
何て奇抜なの!?
「すみません。ちょっと急いでるので」
「あ、す、すみません」
廊下の奥から、宮地さんの声が響いている。
「南条さん! こちらへ。あ、田上、何やってんの。アンタも来な」
「は、はい!」
何々? 南条さんって、あのバンドの!?
(「Wavering Heart〜紡ぐ音色〜」を参照いただければ…ね!)
夢乃ちゃんとの関わりも深い人なんですよ。
何かあったのかしら?
アクセスありがとうございます。
次回「夢の行方[5]」
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