頂へ[5]
登山家の快眠の秘訣は食事にあり。
ここでは、そのポイントに少し触れていますよ。
雷鳥沢から剱岳山頂までの所要時間は、およそ6時間15分。下りは少し早くなるそうで、5時間45分と見られている。これは平均的な時間で、登山者の歩行レベルによって変わるのは言うまでもない。
だけど、往復12時間を一気に1日でこなすには、リスクが大きい。
前回は剱沢荘からスタートでのアタックだったけど、今回は雷鳥沢からスタート。要するに、筒井さんの提案で“みくりが池温泉”に入ろうって事ね。
そして、この所要時間に伴うリスクを回避するため、アタックを1泊2日で組んでいる。
初日は体力温存のため、剱山荘まで。言わば、ウォーミングアップ。
前回亮お兄ちゃんは、室堂に着いた時点で緊張が始まっていた。尚哉はそうでもなく、剱沢荘に居る時も至って落ち着いていたと聞いている。
落石を確認した時の対応も、落ち着いて行動していた。ある意味クールなのかもしれないけど、エマージェンシーの起こる中での落ち着いた行動は、市川さんや山崎さんからも称賛の声が出ていた。
だから、安心していいんだと思う。
亮お兄ちゃんも、軽いPTSDなんて診断されてたけど、メンタルトレーニングでこれを克服したみたい。
―そんなに早く治るの?
あたしは半信半疑ではあったけど、何か刺激があって症状が快方に向かう事は、よくある話だとか。
山で発症して、山で治るの? なんて、これもあたしは半信半疑。だから亮お兄ちゃんについては心配。
ただ無事に帰ってきてくれたら、それでいいと思う。
そろそろテントも張れた頃かな?
キャンプでは、筒井さんと市川さんが明日からの行程に備えてスタミナ料理を振舞ってくださると聞いている。
もちろんキャンプ飯なのだから、凝ったものはしないだろう。
あたしなら、肉と栄養価の高い緑黄色野菜を中心にした炒めものにする。
食材は予めカットしておき、タレと一緒にビニール袋に入れて浸け込んでおくと味がよく染みて、あとは炒めるだけの簡単料理って事になる。ゴミも最小限になるよね。
ちなみに、出たゴミは必ず持ち帰りよ。
登山家達の夜は短い。
早朝からの歩行に備え、就寝時刻も早い。
だけど、果たして眠れるの?
長時間の歩行には、睡眠不足は命取り。高山病のリスクもあり、行動力や判断力の低下にも繋がる。
だけど高山ってとことん意地悪で、睡眠障害が起きやすく、眠りが浅くなったり頻繁な覚醒があったり…なんていう事も。
そのため、一気に高度を上げるのは安全ではなく、徐々に慣らしていくのが好ましいとされている。
アタック初日を剱山荘までとするのも、こういったリスク回避の意味も含んでいるそう。
特に前回、亮お兄ちゃんは高山病にも似た症状を発症している。
落石がなくても、それ以上の登山を続けられたかどうかは疑わしかったとも聞いている。
登山家は、効率よく睡眠を取るための様々な工夫をしているとか。
体を温めるための、高カロリーで温かい食事。これね! ベテラン登山家が振る舞う食事は。
他にもリラックス効果を得るために、ストレッチで体をほぐしたり、深呼吸や瞑想をして副交感神経を優位にすると、眠りが深くなるそう。
みんな、よく眠れたかしら。
前回の失敗からくる反省を含め、様々な策を講じた。きっと万全な体勢で挑めるだろう。
そしていよいよ、朝を迎えた。
剱沢荘と剱山荘は、実在しません。
その位置関係から剱沢小屋、剣山荘をイメージしています。
アクセスありがとうございます。
次回「頂へ[6]」
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