閑話8 会議は踊る 1
間章の終わりの始まりです。人が増えます。
メリダダンジョンで発生したダンジョンブレイクについての各部署からの報告
1.ダンジョン調査部からの報告
今回のダンジョンブレイクでのメリダダンジョン内の物的被害に関して報告する。現在一ヶ月ほど経過した状況で確認されているだけで六十階までのダンジョン破壊が確認されている。
特に上層階になればなるほど対応した冒険者が少ない影響で、ダンジョン内の環境破壊が進んでおり、三十階以降でバランスが壊滅的に変わってしまっている事が確認されている。
現在討伐が確認されているモンスターは七十階までのモンスターでそれより上層階の特にフロアボスに関しては、「異端なる者」の協力の上で現在調査中である。
また実際に四十階にて「異端なる者」が、二十階にて「寄り人知らず」がオリハルコンランクとプラチナランク冒険者としてモンスターの氾濫に対応した為に、それぞれの階層に多量のモンスターの残骸が残っている。
この件に関してはダンジョン調査部内でも資材部に任せるべきかどうかの点で議論が起きているが、現状では「収納」のスキルを使えて、尚且つ容量の多い職員を駆り出して対応している。必要に応じて今後資材部なのか冒険者に委託するのか検討していく。
上記の為、概ね後片付けと、未開の地の調査以外はダンジョン調査部としてはスムーズに行えているものと考えている。
ダンジョン調査部部長
ステファニー・ミッターマイヤー
2.保安部からの報告
今回のダンジョンブレイクでのメリダダンジョン内での人的被害に関して報告する。現在一ヶ月ほど経過した状況で確認されているだけで十二名の重・軽傷者の存在が確認されている。死者・行方不明者は確認されていない。
重傷者に関しては、三十階前後での被害に固まっている為、避難対応した階層の中間地点での間引きがされていないモンスターの物量にやられてしまったものと考えられる。
実際に重傷者の治療後のヒアリングでも自分が味わった事の無いモンスターの物量だったとの報告もあり、推測に大きな誤差が無いと考えられるが、ダンジョン調査部の報告を待って、今後の更なる対応を検討していく。
また軽傷者は十〜十五階前後に頻発しており負傷者に確認していくと、突如モンスターが転移トラップにかかる事により、急襲されているケースが多く見られた為、これも今後の課題として国営冒険者アカデミーや、ダンジョン攻略課の冒険者相談窓口での対応を検討していく必要性を立証していく。
今回、死者・行方不明者が確認されなかったのは、予め十分にダンジョンブレイクが予見出来ていた為に、ある期間に絞って高位冒険者達の協力も得られた事により、スムーズにマニュアル対応が出来た面が非常に大きいと考えられる。
三十年前のダンジョンブレイクの人的被害との違いは明確なマニュアルの運用と冒険者の活用だが、次のダンジョンブレイク時に今回ほどスムーズに行くかは人的な対応力によるものと考えられる。
保安部部長
ジョージ・タナカ
3.ダンジョン攻略部からの報告
今回のダンジョンブレイクでのメリダダンジョン外での被害に関して報告する。現在一ヶ月ほど経過した状況で確認されているだけで、スラム街での建築物の被害が確認されている。死者・行方不明者は確認されていない。
概ね今回のダンジョンブレイクの被害に関しては、想定の範囲内と言えるが一部の冒険者被害及びダンジョン内での破壊、スラム街での建築物の破壊を考えると更にマニュアルの改善を図る必要がある。
また高位冒険者の配置とモンスターの素材等の資源回収に関してはダンジョン調査部と検討していく必要があるが、この件はダンジョン資材部との共同作業にする事で今後のアルミナダンジョン国のエネルギー問題及び、近隣各国への魔石の流通拡大にも繋がるものと考えている。
最後に、今回のダンジョンブレイクの発生タイミングに関しては協力者が非常に大きな役割を果たした為、今後のサポート体制も変わらずに構成していくものと考える。
ダンジョン攻略部部長
カイル・ジョンソン
「これで報告は全てかね?」
ここはダンジョン管理事務局の部長以上の管理者が集まる月に一度の定例会議の場。司会進行をしているのは、ダンジョン管理事務局の参事官補であるワーグナー・キルステンである。
この場にいる者達の協議がこのアルミナダンジョン国の大半を動かしていると言っても過言では無く、他所の国でいう所の政治家の数はそもそも非常に少なかった。
それは彼ら部長クラスは低く見積もってもゴールドランク上位の武力を持ち、その力だけではなく、政治力も兼ね備えた兵達だからだ。しかも実家が「始まりの七家」に属する人間も多くいる為、口先だけの政治屋など入る余地は最初から皆無であった為、便宜上必要な際に角が立たないように配置している位のレベルであった。
そんなアルミナダンジョン国では数少ない純粋な政治家である、フルシュミット国際事務局長が厳しい顔で部長達に声をかける。
「君達は私に一言も報告も無く、ましてや独断で外交部を勝手に動かしてランドール共和国にグラハム大統領夫妻を戻したな。これを越権行為と呼ばず、何と言う!!」
「事務局長はそう言ってるが?」
ワーグナーはフルシュミットの怒りには一切感情を見せず、3人の部長達に冷静に問いかける。3人はフルシュミットの言いようがまるで聞こえてないかの様に肩を竦めて苦笑いをする。
それを見た国際事務局長はまんまと挑発に乗り、先程以上に激昂する。
「何が可笑しいのかね!!」
「ワーグナー参事官補、発言しても?」
「タナカ君、どうぞ」
タナカはフルシュミットを相手にする事無く、ワーグナーに声をかける。ワーグナーも国際事務局長を見やる事無く、タナカに答える。
「ありがとうございます。ではフルシュミット国際事務局長の質問に私の方からお答えします。まずこの場に居ない外交部部長に変わっての発言になりますので、もしも、より詳しい内容が聞きたければ彼の方に問い合わせ下さい」
「ふん!!おおかた私にバツが悪くて、雲隠れでもしてるのであろう!!そんな者の言い分を聞く気は無い!!」
「分かりました。では私の話で十分と判断されるなら、それで構いません。まずは事の経緯を非常に簡単に言いますと、我々も被害者なのです」
「何?お前達も被害者だと!!」
「はい、これからまんまとしてやられた経緯を話させていただきます」
フルシュミットの表情が激昂から戸惑いに変わったのは一瞬の出来事だった。
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