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閑話2 その日のミズキ

 メリダダンジョンでダンジョンブレイクが起きた日、危険を周囲に伝えるサイレンとアナウンスが鳴り響く中、外交部のミズキは何故かグラハム邸にやってきていた。


 名目はダンジョンブレイク中にもしモンスターが街に溢れた際のグラハムとメアリー夫妻の警護が主な目的だが、今後のランドール共和国との外向状況にも大きく影響する為、元保安部で、新任間もない担当課長補佐である彼女に白羽の矢が立ったのだ。


 またレラのダンジョン攻略課での先輩でもあるミズキならメアリーも安心するであろうという目論見もあり、ダンジョン管理事務局は積極的に彼女を行かせた。


 普段であれば、とても入る機会の無い大豪邸に、アンティークとお屋敷巡りが趣味のミズキは興味満載な顔を必死に隠しながら、レラの両親と楽しそうに歓談を始めていた。


「あの娘は普段職場ではどんな風に過ごしてるのかしら?」

「そうですね……、転属して最初の内は非常に緊張してましたけど、指導担当のエナミ君といる内に段々と慣れていってましたね」

「やっぱりその辺のフォローはエナミ君がしてくれたのかい?」

「いえ、グラハム様。彼は今は少しマシですが、当時はダンジョン攻略課の部署内のやっかみや僻みが酷くて、それに対してレラは可哀想にそんな人に指導担当つかれるなんてっていう風に周りに大事にされてましたね」

「何とも皮肉だね。あんなに優秀なな人材でも周りと上手くいかないなんて。まぁ、おかげで娘が周りと上手くやれたなら申し訳ないが有り難いがね」

「そうですわね、彼は仕事以外では余り人と上手くやるのが苦手なのかしら?」


 二人の疑問に苦笑しながらも答えるミズキはエナミへの個人的な評価を差し挟む。


「そんな事はないと思いますよ。ただ彼が十五歳であの立場になった時に、周りにそんなに良い感情を持って関わる人間がいなかっただけだと思います。現に今の彼は本当にマイペースで仕事をしてますしね」

「そうだね、昔の彼を知らないが今の彼の事は娘を通してよく理解してるつもりだよ。私もこの間、行きつけのレストランで会って、その理解が間違いじゃなかったと更に評価を上げた所だからね」

「この人、仕事だからって私には何も言わずにエナミさんと会ってたのよ。どう思う?」

「ふふふ、そうですね、夫婦円満の秘訣は互いに秘密を持たない事と以前伺った事がありますね」

「おっと、ここには私の味方は居ないみたいだね。これは退散するしか無いかな」


 歓談を楽しみながらも時間は過ぎていき、気が付くとサイレンとアナウンスの喧しい音は聞こえなくなっていた。少し落ち着きを取り戻した屋敷内で執事がグラハムに声をかける。


「旦那様、ご歓談中申し訳ありません。来客の方がお見えになっております」

「こんなタイミングで?」

「はい、懐かしい顔が訪ねて来られてます」

「分かった。そこも予定通りなんだね。では入り口で出迎えよう」

「はい」


 執事が頭を下げ、部屋から出ていく。ミズキは要領を得ない会話に質問してしまう。


「グラハム様、来客みたいですが?」

「あぁ、そこまではエナミ君から聞いてないか。悪かったね。彼とはおよそこうなるって決めていたんだ。だが実際にこうなると恐い事ばかりだね。彼は預言者か占い師か将又稀代の謀略家なのかな?」

「御冗談を、と彼ならとても嫌そうな顔をしてグラハム様に答えるでしょうね」

「ハハ、違いないな。ではみんなで出迎えよう。ミズキさんもこれから付き合いがあるかもしれないから、一緒に来てもらっても良いかな?」

「分かりました。お二方の護衛としてお付きします」

「堅いね。でも役人はそうでないとね」


 グラハム夫妻とミズキは立ち上がり、ドアの前にいた執事を先頭に玄関へと向かう。当然ミズキは自身の能力を使い、一人だけの人物を把握する。


 非常に希薄な探知レーダーへの反応に何らかの能力持ちと疑うも、その人物がマントを着ているのを見て、ブルックス商会の物とすぐに理解する。


 壮年の大柄な男はグラハム夫妻が現れるとその場ですぐにランドール式の礼をし、頭を下げる。


「よい、アデル。人伝には聞いていたが、久しぶりの再会だ。顔を上げて私に壮健な姿を見せてくれ」

「はっ!!」

「あら、アデル久しぶりね。アルミナに送ってもらった時以来かしら?」

「メアリー様もお元気そうで」


 明らかな武力をチラつかせるその男の名前にミズキは合点がいく。


「初めまして、アデル将軍閣下。私はダンジョン管理事務局のランドール共和国を担当する、第一外交課課長補佐のミズキと申します。本日はこちらにお住まいのグラハム夫妻の護衛に当たっておりました。以後お見知りおきを」

「そんな、私を大統領閣下達より上の扱いをされても困るだけです。私の事はアデルとでもお呼び下さい」

「アデル、君が将軍になったのか?随分と出世したなぁ。あの頃はただ力を持て余しただけのまだまだ小僧扱いだったのに」

「止めて下さいよ。そうやってグラハム様はすぐ揶揄われますが、これだけ元ランドール共和国の人間を使っているのに知らない訳無いでしょう?」

「アデルの名前と将軍の立場が一致しなかったのさ。今日はなんの用だい?古い友人と親交を温めに来た訳では無いんだろう?」

「そりゃあ勿論。こうして私がやって来たのは、グラハム様、メアリー様、お二人に戻ってきてもらう為です」






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 ここまで読んでいただいて気にいらなかったら、大変貴重な時間を使わせて本当に申し訳ない。ただそんなあなたにもわざわざここまで読んでいただき、感謝します。

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