エピローグ エナミの日常は崩れる
今回で第二章は終わりです。朝とこの時間で二話投稿してますので、一つ前をもし未読の方はそちらからどうぞ。
エナミはダナン課長のデスクにのんびりと歩いて向かう。特に自分が怒られそうな要件も無い為、イメージのつかないままダナンのデスクにたどり着く。
そこには穏やかな顔をした阿修羅像を背中に背負ったダナンがいつものように顔の前で腕組みしたまま座り、その傍らに何故か笑顔のラミー・レバラッテが立っていた。
「ダナン課長、お呼びとの事ですが?」
「すまんね、エナミ君。君に客人が来てね。元同僚のラミー第三外交課課長の事だから、私より君の方がよく知ってると思うが……」
「やあやあ、こんにちはこんにちは、エナミ。他部署の人間と仕事場で会うなんて、中々どうして有り難くないけれど、これもダンジョン管理事務局の職員の仕事の範囲内だと思って、我慢してくれよ。僕もこんな事したくはないんだけど、役職が上がったら厄介事ばっかりまわされるからやってらんないよね」
「ラミーさん、いやラミー第三外交課課長、今日は一体どんな用件で?」
エナミは訊いたそばからラミーの顔がニヤリと笑ったのを見て、嫌な予感が急激にしだした。
「おっとおっと、エナミ、君と僕の関係だから、役職呼びなんでいらないって……訳にはいかないか。そうだね、今回の件では君も大変だったろうけど、僕の周りの反響も凄くてね。こうして第三外交課の課長に昇進してもランドール共和国の話を聞きたがるんだよ。そう、君の話をね」
「ラミー第三外交課課長、相変わらず論旨が見えませんけど、何が言いたいんですか?」
顔の前で手を組んでいたダナン課長が1つ咳払いをして、徐ろに立ち上がる。ゆっくりと振り返り、窓のシャーレを開けて、外を見始めると話し出す。因みに阿修羅像はエナミを穏やかな顔で見たままだ。
「エナミ君、君はこの間、長期の有給消化をしたがっていたね?」
「はい?まぁ、ちょっと勤続十二年で貯まってる有給が半年分位あるので、課長のご迷惑もかけないように、ダンジョンブレイクが落ち着いたこのタイミングで使おうかと思ってましたが……」
「許可するよ。3ヶ月位使ったら良い」
「はぁ!?3ヶ月!!」
いつの間にか結界が張られていたようで、エナミの驚いた声にダンジョン攻略課の誰も反応はしない。ラミーもニコニコと笑ったまま、ダナンの言葉の続きを待つ。
「そうだ、その間に羽根を伸ばすと良い。少しアルミナダンジョン国を離れてね。今回のダンジョンブレイクがあった件でメリダダンジョンも3か月程度はダンジョン調査課の調査が入る。その間は冒険者達には三十階以降の攻略許可は下りない。君も知っての通りだがな」
「はい、私達が以前に行った「偽りの災禍」を使った人為的なダンジョンブレイクを分析した結果によると、三十階以降のモンスターが3ヶ月程度安定しないという事が判明しているので、そういった規定を作ってもらいました」
「そうだろう。であれば今君が担当しているゴールドランク以下のジュリアーナ君とヤミール君なら君の言う事を守って無理もしないだろう。それに何と言っても君が作ったマニュアルがあるんだから、心配する必要もあるまい」
窓の外を見たまま一向にこちらを向かないダナンだが、エナミからすれば阿修羅像に見られている為に、会話の切り返しが非常にしにくい状況だった。
「課長、何をさせたいんですか?」
「エナミ、エナミ。そこからは僕が話すよ。さっきも言ったけど、ランドール共和国に多大な影響を与えた君に、興味がある人物がいてね。その人物がぜひともエナミに会いたいと僕経由でアルミナダンジョン国に言ってきてるんだ。ただ彼のいる所が非常にアクセスが悪くて行きにくい所でね。しょうがなく出向くとしたら、少し時間が必要だからダナン課長に頼んで日程を作ってもらおうって訳さ」
「はぁ、で、誰なんですか?その私に会いたいって奴は」
ラミーのおしゃべりの影響で自分の預かり知らない所で好ましくない風評が広がってしまった事は諦めがつくが、こうして実害が出ると困るなと簡単に考えてしまったエナミは
何の警戒心も持たないまま訊いてしまう。
「エナミはライアン・ヒューイットって人物を知ってるかな?彼がどうしても君に会いたいって熱望してるんだけど」
「ライアン……あぁ、王立アカデミーの同期だった?サイテカ連合国からの留学組でしたね。王立アカデミーを優秀な成績で卒業してすぐに地元に戻っていったってマリーに聞いてましたけど。へぇ、ライアンが。あいつは今サイテカの何処に居るんですか?」
「良かった良かった、エナミがちゃんと覚えてくれてて。こっちも同期だけど知らないやつが何かエナミの噂を聞いて、嘘でもついてサイテカ連合国に連れてこさせようとしてるのかと疑ってかかろうかどうしようか迷ってたんだよね。まぁ、彼の未来に君が見えたから知り合いなのは恐らく本当だとは思っていたけど、これで一安心だよ。んじゃ、サイテカ連合国の東の端、ライン地方が領主ライアン・ヒューイット様の依頼でダンジョン「海鳴りの丘」に有給消化を兼ねて君を連れて行くから。宜しくね!!」
エナミはここにきてラミーとダナンの話の流れがようやく見えたが、もう時すでに遅しとはまさにこの事だった。彼は諦め悪く藻掻くために縋るようにダナンに質問する。
「……参事はこの事をご存知なのですか?」
「勿論だとも。君への伝言もあるぞ。「少しはこれを機会に休み給え」だそうだ。3ヶ月、キッチリ向こうに行ってきて構わんそうだ。まぁ、その為にも暫くは書類業務の引き継ぎを君には頼むがな」
エナミは目の前に浮かぶ阿修羅像を初めて強く睨みつけるのだった。
いかがだったでしょうか?
第二章はこんな風にエナミのやるせない理不尽な日常の終わりで最後になります。宮仕えも大変ですね。(あくまでもフィクションです)
ここまで拙作を読んでいただきありがとうございます。
第二章のあとがきっぽい事を書くと、国を脅かすイベントがいかに起きようとも、一人の公務員の出来る範囲だとこれくらいの関与が限界で、周りの助けがあったとしても、やりたくもない残業や、頼みもしない余計な権限外の業務の押しつけがあって、本当に嫌になるよねっていう、何処にでもある現実を物語として落とし込みましたが、いかがだったでしょうか?これ以上何もしないと物語の主人公にならないのが難しい所です。
ただ、そのせいか読まれていてスカッとせず、嫌な気分になる事もあったかと思いますが、文章力が拙い私自身の問題も多分にあると思いますので、どうかご容赦を。
今章も普通ならイベントが起こるであろうタイミングを無視して、別の視点が入ってきて肩透かしみたいになって、後半ぎりぎりで閑話と漸く繋がるみたいな所に、ストレスを感じられるようでしたら申し訳ありません。作者の力不足です。他の方の作品を読まれる事をお薦めします。
第三章も大体のイメージは考えていますが、勢いで書き始めた作品なので、また更新で修正やら追加やらが色々と入るかと思います。気になる方は更新日を見ていただければ、どこで作者が躓いているか分かると思います。
この後、またすぐに間章が入って、後半表に出なかった人間が出てきますが、ちゃんと話も進みますので、タイトルに騙されて軽く読み飛ばす事の無いようご注意を。また第二章までの登場人物紹介が8月1日に入りますので、そちらもご確認下さい。
こんなバタバタな作品ですが、もし気に入ったら、ブックマークや評価をいただけると文筆の励みになります。実際に評価や感想いただいてる方々も本当にありがとうございます。まだまだ続くと思います。
ここまで読んでいただいて気にいらなかったら、大変貴重な時間を使わせて本当に申し訳ない。ただそんなあなたにもわざわざここまで読んでいただき、本当に、本当に感謝しています。




