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ダンジョン攻略アドバイザーは今日も呟く。  作者: 煙と炎
第二章 相談窓口は時間外も働く
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第二十九話 龍槍のヤミール 6

 ランドール共和国のドニア地域から脱走兵としてナランシェ連邦に入り、全てを捨てたヤミールは2年をかけてナランシェ連邦からアルミナダンジョン国へと大きな目標のない旅を続けていた。


 もはや人生の目的はランドール共和国と聖カムルジア公国との国境線での戦争で果たしてきたと思っているヤミールとしては、ランドール共和国の中でもアデルとエンリケ以外の事は特に気にかける事も無く、さすらいの旅を楽しんでもいた。


 アルミナダンジョン国に足が向かったのもナランシェ連邦で聞いた5大ダンジョンについて偶々興味を持ち、冒険者についても人伝に聞き、調べてみて自分でもなれそうかとヤミールは思っただけである。


 そして、ようやく辿り着いたアルミナダンジョン国で起きた事はエナミとマリーに記録してもらった事が全てである。ただドニア地域とナランシェ連邦で起きた事は何処にも漏れないように気をつけていた。


 紆余曲折の末、遂に国営冒険者アカデミーに特待生として入学したヤミールは充実した日々を過ごしていた。ランドール共和国の兵学校で基本的な教養を身に着け、アルミナダンジョン国の冒険者特有の5大ダンジョン攻略法について重点的に学んでいる彼は、何のしがらみもないアルミナダンジョン国での毎日を楽しくやっていた。


 また同級生とも年齢差が少しあるヤミールは少しの暇さえあれば一人で修練場に行き、自身のスキルと能力覚醒について修行していた。その為に、冒険者求人課のマリーやキタリとも頻回に会っていた。そして今日もまた修練場を使う為に、マリーに許可を貰いに行く。


「マリーさん、今日も宜しくお願いします」

「あら、こんにちは、ヤミール様。今日も修練場をお使いになりますか?あと、データはとりますか?」

「いえ、今日はトレーニングだけのつもりなので、まずは特にデータは取らなくて大丈夫です。ただ能力覚醒がスムーズに出来たら、もしかしたら後で頼むかもしれません」

「分かりました。ではヤミール様。どうぞ、修練場をお使い下さい」

「ありがとう、マリーさん」


 マリーは修練場の木製の扉の鍵を開け、奥へ通す。隣を通るヤミールは簡単に挨拶をして修練場に入り、いつもの流れで自分の準備を進めていく。まずはまだまだ拙いスキルで亜空間に仕舞っていた自分の槍を取り出し、ウォーミングアップを始める。


 ヤミール自身の槍はナランシェ連邦に入る時にドニア地域に置いてきた。いま手にしている槍はあくまでも国立冒険者アカデミーから冒険者候補に支給されているものを使っている。


 ヤミールがこの国立冒険者アカデミーに入学してから3ヶ月が経つが、亜空間収納等の簡単なスキルは一通り使えるようになっている。また自身の能力である「武器強化」も理解が深まり、以前より槍の威力も強度も強化出来るようになってきた。


 当然武技「龍槍」も以前より、威力、効果範囲、継続時間と全ての面で伸びており、キタリの測定してくれているデータ上はエナミとの試しの時と比べて、数倍以上は危険な代物になっていた。


 ただしこれもあくまでも支給された槍での効果判定であった為、千人隊長の頃に使っていたブルックス商会製の槍であればどれ程の威力になるか分からないとキアリからも言われている。


 結果としてヤミールは、アカデミー入学から僅か3ヶ月でプラチナランク冒険者同等の武力を間違いなく有していると評価されていた。


 国営冒険者アカデミーの目的はあくまでも優秀な冒険者候補の育成である。その為、当然彼のこういったマイペースのトレーニングは許容範囲内で、寧ろこの育成期間内にどれだけの能力になるのか、アカデミーからも楽しみにされていて、放置されていた。


 また国営冒険者アカデミーの同期生にしてもヤミールの特待生入学の時点では彼の力を理解できていなかったが、彼が見せる圧倒的な能力を生かした戦闘実習を見て、嫉妬するのも馬鹿らしいと自分達の力を伸ばすように集中してあまり関わらないようになっていった。


 自分の能力を何のストレスも無く、ひたすら伸ばせる環境になったヤミールは日々の科学的なトレーニングに今日も3時間以上は励み、自身の成長を実感して、マリーに一声かける為に修練場を後にした。


「マリーさん、今日はこれで終わりにします」

「お疲れ様です、ヤミール様。今日はここまでですね。データ測定はまた今度の機会ですね?」

「はい、そうします」

「分かりました。では、また必要の際はお声掛け下さい。それにしても毎日せいが出ますね。既にヤミール様はプラチナランクの冒険者同等のお力はあるようですが、何か明確な目標でもお有りなんですか?」

「はい、……変な話に聞こえるかもしれませんが、アイツに一撃入れたいんです」

「エナミ君の事ですか?」

「ええ、あれからアイツの事はなるべく考えないようにしてはいるんですが、どうしても一撃入れないと前に進めない気がするんです」

「そうですか。では冒険者アカデミーの研修はいつ頃終了されるつもりですか?現時点でもヤミール様ご本人がその気があるなら、いつでも終了出来るとアカデミーのトップからお話があったかと思いますが」

「こういう風に研修の終了を引っ張るのって、普通じゃないんですよね?他のみんなは早く冒険者として活躍して金も稼ぎたいんでしょうから。でも俺はまだアイツに一撃入れる自信が無いですから、もうちょっとお世話になります」

「ヤミール様は多少研修が長引いても十分に研修終了まで速いですから、アカデミーも何も文句はありませんよ。それに安全に強くなってから冒険者として活躍して下さる方が我々ダンジョン管理事務局としても有り難いので、存分に強くなって下さいね。そして…」

「そして?何ですか、マリーさん?」

「エナミ君を少しでもギャフンと言わせて下さいね」

「ハハ、頑張ります」


 マリーに手を振りながら冒険者求人課から出てくるヤミールに、そっと影から近寄る存在が後をつけていった。









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 ここまで読んでいただいて気にいらなかったら、大変貴重な時間を使わせて本当に申し訳ない。ただそんなあなたにもわざわざここまで読んでいただき、感謝します。

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