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ダンジョン攻略アドバイザーは今日も呟く。  作者: 煙と炎
第二章 相談窓口は時間外も働く
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第十九話 エナミは女神官と話す 1

日常回?です。

 エナミは朝一番からの大いなる力からの奇襲を乗り越えて、ホッと背もたれに身体を預けた。何とか自分自身の人生最大に近い危機を穏便に済ませる事が出来た事に満足し、一片に力が抜けていく感覚を覚えていた。


 自分がサーヤにかかりきりになっている間にも、隣のレラはスムーズに二人の冒険者対応を済ませて、今はマニュアルの確認をして書類を作成しているようだった。ちょうど書類を書き終わり一息つくのを見計らい、エナミは声をかける。


「レラ、済まなかったな。朝からよく分からない出来事に巻き込んで」

「エナミ先輩は気にしないで下さいぃ。私もサーヤさんが来たらどうしようって対応は決めてましたからぁ」

「それなら良いけどな」

「そうですぅ。私を泥棒ネコ扱いするような人には容赦しませんからぁ」


 レラはニコリと笑い、エナミは苦笑する。また次の冒険者相談窓口の相手が来た事を告げる入り口のベルが鳴ると、彼女はすぐに入り口の方を向き笑顔を浮かべる。


 たまたまそのタイミングでダンジョン攻略課のドアを開けて入って来た相手が、自身の担当のジュリアーナだった為に気の抜けたエナミは余計にだらしなく座る。


 しかしエナミはこちらにやってくる彼女の格好を見て、違和感を感じる。いつもの神官服では無く、官位が上がった事を示すように縁取りが豪華になった装いを着て笑顔でジュリアーナはエナミの向かいの席に座る。


「ご機嫌よう、エナミさん。今日も宜しくお願いしますね」

「こちらこそ、ヒメネス様」

「あら、いつもよりもちゃんとした装いね。それに髪形や髭まで整えるし、何かありましたの?」

「いえいえ、やはり相談窓口の担当者としてはちゃんと恥ずかしくない格好をするべきだと思いまして、こういった次第です」

「まぁ、素晴らしい心掛けですね。その心がけが続く事を祈ります」


 冗談だったが、本当に軽くジュリアーナに祈られてしまいエナミとしてはバツが悪く、一つ咳払いをした後にすぐに彼女のの服装の話に持っていく。


「ありがとうございます。それよりもヒメネス様の服装も随分と装飾が変わったようですが…」

「あら、気付きまして?これは聖カムルジア公国の正教会本部から先日の功績が認められて、官位が上がって贈られた物ですの」

「あぁ、「聖なる夜の灯り」ですか。やはり正教会本部が探していたのですね。個人では必要無い物ですからね。そろそろあちらのダンジョンの闇夜を照らす灯りが乏しくなってきたとか?」

「詳しいことは私如きには知らせがありませんが、祈るべき神のお力になれたなら何よりですわ」


 こちらの皮肉にも何の嫌味もなく、清く澄んだ本心を伝えてくるジュリアーナに、落ち着いていれば、やはりちゃんとした聖職者なんだなとエナミは余計な事を考えていた。


 メリダダンジョンの十三階で見つかる「聖なる夜の灯り」は聖遺物として、聖カムルジア公国のダンジョン「静かなる悪夢」にて、十階層の儀式場に奉納する事で十一階以下のモンスターが上階に上がってくるのを防ぐ結界が張られる様になっていた。


 この「聖なる夜の灯り」がメリダダンジョンで発見され、最初は何に使うものかも分からず、手荷物になるだけだった為にメリダダンジョン内で捨てられる事が多かったが、収集癖があった冒険者が興味半分で資材部に持ち込み、鑑定される事で使い道が見つかり持ち帰られるようになる。


 使い道が分かれば、当然ダンジョン管理事務局の外交部が出張って聖カムルジア公国に売り込み、それまで何度かあったダンジョンブレイクに困っていた聖カムルジア公国と正教会は、当然渋々ながらもこのアルミナダンジョン国からの提案を受け入れざるを得ず、実際に儀式場でこの聖遺物が使われる様になってからは、「静かなる悪夢」のダンジョンブレイクは起らなくなっている。


 後にこの手の聖遺物がダンジョンブレイクを防ぐ目的で重宝されるようになったのは、これがきっかけと言われ、「聖なる夜の灯り」はその象徴としてよく歴史書でも、王立アカデミーや国営冒険者アカデミーの教科書でも扱われるようになった。


 その後は聖カムルジア公国からだけではなく、わざわざ優秀な学生を王立アカデミーに留学させたり、国立冒険者アカデミーに送り込ませて、自前でダンジョンブレイクの抑止として使える聖遺物の獲得を狙おうとする国が増えていった。


 こういった各国の対応をアルミナダンジョン国は寛大に受け入れ、その態度が余計に周囲の4大国は気に入らなかったが、ありがたく受け入れざるを得ない状況であった。


「ヒメネス様は久しぶりに聖カムルジア公国から来られた冒険者だから、お一人ですと疎外感や差別はありませんか?」

「貴方からそのような心配をしていただくのは大変ありがたいのですが、このアルミナダンジョン国にも教会はありますので、皆様大変優しくして下さいますよ」

「そうですか。なら、心配いらないですね」


 当然の事ながら、このあらゆる人種が集まるアルミナダンジョン国では厳しい宗教政策は取っていない。ただし、税金などの優遇措置なども無い為、この国にある教会は聖カムルジア公国からのバックアップで何とか成り立っている状況である。ただし、優秀な神官と司祭しかいない教会である為、周りからも受け入れられ、敬遠されるような事も無かった。


 話をメインのダンジョン攻略の相談に戻す意味で、エナミから声をかける。


「それでヒメネス様、今日はメリダダンジョン十五階の攻略情報の確認ですか?」

「ええ、貴方に十五階のフロアボス、オークマスターの攻略方法について少し訊きたい事があったの」

「分かりました。ではこちらを……」


 エナミは今日の最悪の仕事の始まりから、いつもの仕事のリズムに戻れた事を心の底から嬉しく思っていた。









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 気にいらなかったら、貴重な時間を使わせて申し訳ない。ただそんなあなたにもわざわざここまで読んでいただき、感謝します。

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