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ダンジョン攻略アドバイザーは今日も呟く。  作者: 煙と炎
第二章 相談窓口は時間外も働く
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第十八話 ピーター・ブルックス 5

 ケビンとの会談後、ピーターは比較的後回しにしても大丈夫なものはスケジュールを後ろに回して、ランドール共和国の現地担当者と日程を詰め、10日後にはランドール共和国入りしていた。


 現地担当者と話しても、やはり向こうの要望がハッキリとは伝えられておらず、あくまでもピーター・ブルックスに会いたいという要望だけが伝えられてきたようだ。


 実際ピーターがランドール共和国の首都であるトールタイプに入ると、ブルックス商会の支店に早々にブリストン・ルーガード議長の秘書から連絡が入る。


 あまりにも性急に見える先方の動きに対して、ピーターはブルックス商会の定宿で熟考を重ねる。ここまでの動きを見るとどう考えても欲しい物があるのが分かる。しかし、それ程までのものであればアルミナダンジョン国を通すのが筋だろう。であれば、武器にしても我が国にバレては困るようなものだと言う事か?


 しかし、その明らかに国家反逆罪に問われるようなものを、アルミナダンジョン国の「始まりの七家」であるブルックス家相手に頼めると思っているのか?もしそんな事になれば、当然よりすぐりの冒険者達がランドール共和国を一夜にして滅ぼすであろう。


 ピーターにはルーガード議長の考えはその時点では全く分からなかった。その為、いきなりランドール共和国の大統領府に正式な形で呼ばれた時には驚きと共に安堵感も広がっていた。


 これで取りあえずはアルミナダンジョン国とランドール共和国がいきなり戦争などを始めるという形では無いという事が分かり、あくまでもランドール共和国の一議長の頼みという形でも無いという事も分かったからだ。


 ただ普通に武器を求めるならばこのトールタイプにもブルックス商会はある。一体何を求めて自分に会いたいのか、やはりハッキリしないままにピーターは大統領府にある国務会議議事堂の応接室の前に立っていた。


 応接室の前にいた警護の人間にルーガード議長の秘書が先に前に出て確認し、応接室のドアを開け、ピーターを中へと誘う。勿論一人で入る訳ではなく、護衛件秘書をこちらも1人連れて入っていく。


 応接室には「道化のルーガード」の名の通り、顔に出来た傷が歪んだ笑顔を作った中年の男がソファーから立ち上がり、ピーターに右手を差し出してきた。


「久しぶりだね、ピーター君。元気そうで何より。年始に挨拶して以来かね?」

「はい、ルーガード議長。そちらもお元気そうで。今日はお招きいただきありがとうございます」

「まぁまぁ、わざわざ遠路はるばるここまで来てくれたんだ。挨拶で時間を潰してもしょうがない。掛けてくれ給え」

「はい、では失礼します」


 二人は応接室というにしても豪華な部屋で沈み込むようなソファーに深々と腰掛け、秘書が用意したお茶に口をつける。一瞬護衛が毒味を考えたようだが、ピーターは目線でそれを制し、ルーガード議長より速くお茶に手をつけた。


「……ピーター君は無鉄砲とか言われないかね。それに毒が入ってると思わないのか。それともアルミナダンジョン国なら能力かスキルかな?」

「いえいえ、僕にはそんなものは特別無いですよ。ただ議長が僕をどうこうするメリットがありませんでしたから。それに普通に面会を求められた要人にそんな真似をすれば、父が冒険者をけしかけますしね」

「ふっ、確かに君に何かあればランドール共和国が滅びるか……」


 ルーガードはお茶に一口口をつけ、歪んだ笑顔を更に広げる。少しの間沈黙がおりた後ピーターから話を切り出す。


「それで今回の私との面会は議長たってのご要望と伺いましたが?」

「そうだね、私から望んだ事だよ」

「大変有難い事なのですが、何せ私も議長とは季節の挨拶はさせて頂いておりますが、普段は軍部の方々とお会いしているだけです。その為、今回の件についてはこちらには何も情報が無いので、何もご用意をさせてもらっておりません」

「当然、そうだろうね。君達には聖カムルジア公国との戦争でも十分にサポートしてもらえたと軍部からも情報が上がっているよ」

「ありがたいお言葉です。では、今回は全くそういった軍部絡みの事とは別件と捉えて構わないのですか?」

「そうだ」

「では、何を一体我らがアルミナダンジョン国の「始まりの七家」ブルックス家が武器商人にお望みなのでしょうか?」

「……」 


 ルーガードはお茶の入ったカップを飲み干し、ソファーに深々と座ると、歪な笑顔を止め、暫くの間目を閉じ、沈黙を作る。ピーターも沈黙を破らないように慎重に音が鳴らないようにお茶に口をつける。


「私はこの中央大陸のアルミナダンジョン国の一強状況に問題があると考えている」

「……それはどういう意味でしょうか?」

「以前のような、ある程度各国が均衡を保っている状況に戻ってもらう必要があると考えている」

「この件は私には到底及びつかない話に思えるのですが」

「そうでもない。これから繋がってくるさ。私としてはその鍵はダンジョンにあると思っている。だからダンジョン攻略に関してダンジョン管理事務局に次いで詳しい君達に声をかけたのさ」

「はぁ…。それで議長、具体的に何をご要望なのでしょうか?」

「「偽りの災禍」という商品を取り扱っているかね?」

「……何処でそれを?」

「なあに何かしら秘密がある所には必ず抜け道があるのさ。それで……取り扱っているのかね?」


 ルーガードは目を開け、深々と座っていたソファーから歪な笑顔を浮かべたまま身を乗り出す。その気配は先程までの好々爺然としたものとは全く違い、このランドール共和国を纏める豪腕さを十分に思い起こさせた。


「詳しくお話を伺っていきましょうか」


 ピーターはケビンに注意された事を考えながら商人の顔で頷き、話の続きを促した。







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