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ダンジョン攻略アドバイザーは今日も呟く。  作者: 煙と炎
第二章 相談窓口は時間外も働く
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第九話 ピーター・ブルックス 3

 サーヤのメリダダンジョンの十階層攻略及びシルバーランク昇格と時を同じくして、ブルックス家の次男ピーター・ブルックスは業務会議後のブルックス三兄弟での話し合いを経て、エナミ・ストーリーについての情報を異常な迄に追及して調べ始めていた。


 最初は自分の世界一可愛くて可愛くてしょうがないちょっと我が儘だけどそこがまたいい我らが妹に、アルミナダンジョン国のトップエリートとは言え、変な虫がつきやしないかと慮って少しだけ深掘りしてみるかと、気楽に調べ始めたのがきっかけだった。


 しかし気がつくと、ピーターはダンジョン攻略課のエリートとしての彼の評価よりも、エナミ自身のミステリアスなプライベートについて興味を持ち、複数の私立探偵を使ってまで彼の素行や過去についても掘り下げて調査したのだった。


 特に過去の調査については大きな問題として、彼のストーリー家という家柄について調べようとすると、必ず横槍が何処からともなく入る事だった。


 これにはある程度調査が進んだ段階で父親であるケビン・ブルックスからも、「安易に触れると何が出てくるか分からない事もある学んではいないのか?」と屋敷の執務室で釘を刺された為に、ストーリー家は建国の頃よりあるが、現在は公には特に力など無いという当たり障りのない報告を得るだけで打ち切りにせざるをえなかった。


 当然そんな建国以来三百年以上続く家が何事もなく、こんなにも長きに渡って存続する訳が無い。しかも「始まりの七家」にも数えられていない為に、何かしらを扱っている商家では無いという事も分かっている。


 普通に考えてこのアルミナダンジョン国でそんな家が存続する事はできない筈なのだ。この国は商人の国だ。ただの貴族や武家では残れないのだ。いや、そもそもそのような家柄はこの国には存在しないのだ。


 事実、この国の建国以来続く家は、ストーリー家以外はどこも商家しか残っていない。ピーターとしては全く納得いかない結論のままで、ストーリー家の調査を泣く泣く終えるしか無かった。


 また、現在のエナミの冒険者相談窓口としてのキャリア調査については、彼がダンジョン攻略課に着任して以来の、数々の高位ランク冒険者達の育成や安全なメリダダンジョン攻略マニュアルの作成など、普通に表に出ている評価されるべき所の功績は直ぐに分かった。


 しかし「異端なる者」というオリハルコンランクの冒険者の窓口担当者としての姿が全く見えてこないという謎がまた出てきた。これも如何様に調べても、彼が担当しているらしい程度の情報しか出てこず、すぐに調査も頓挫した。


 これら2つの大きな謎が逆にピーターのエナミへの執着を強くしたのだった。


 これに輪をかけてピーターの想いを強くしたのが、サーヤのエナミへの態度である。エナミへの調査を始めて間もない頃、サーヤと偶々ブルックス家の屋敷で会った際に何気ない感じで彼について訊いた。


「サーヤ、最近冒険者の方は調子が良いみたいだね」

「ピーターお兄様、ありがとうございます。これもお兄様達やお父様に装備面など様々な所でサポートしていただいたお陰ですわ」

「そんなのは家族なんだから当たり前じゃないか。これからも確りと支えていくよ。そう言えばサポートで思い出したんだが、最近冒険者相談窓口を使い始めたんだったね。窓口担当者とは相性はどうなんだい?」

「相談窓口の担当者?あぁ、あのいけ好かない男の事ですか」


 普段ならまず見る事が出来ない眉間にシワを寄せ、不機嫌極まりないという表情のサーヤに、ビックリしたピーターは思わず注意してしまう。


「サーヤ、どうしたんだい。我が家の姫がそんな眉間にシワを寄せるような顔をするもんじゃないよ。せっかくの美貌が台無しだ」

「…お兄様すいません。彼の事を考えるとついこういう表情になってしまうんです。ええと、なんの話でしたっけ?」

「訊く前から何となく分かったけど、彼とは上手くいってないのかい?」

「上手くも何もまだ3、4回しか会ってませんわ」

「ん?おかしくないかな?」

「えっと、何処がでしょうか?」

「だって、サーヤは3ヶ月くらい前から冒険者相談窓口を使い始めたって、前の夕食の時に言っていたじゃないか」

「あぁ、それなら初めて冒険者相談窓口でエナミと会った時に、だいぶ気に入らない対応をされたので、私がシルバーランクになる迄はここには来ませんって宣言したので、この間十階まで攻略して久しぶりに会ったから、殆ど会ってないんです」

「……そんな対応でちゃんとしたアドバイスとか貰えているのかい?」

「アドバイス?彼には今の所はマニュアルを貰っただけで、後は一週間に一度嫌味を言いに行くだけです」

「マニュアルと嫌味だけ……」

「はい、でも彼からも嫌な事を言われるんです。サーヤ様ならゴールドランク位まではこれで簡単に行けるでしょって、あぁ、気に入らない!!あの私を蔑み、何とも思ってない目が許せない!!ピーターお兄様、ここで失礼します!!」

「…あぁ、無理をしないようにね」


 会話の中で突然エナミの非常に嫌な態度を思い出したサーヤは、メリダダンジョン攻略の準備という名の、実際はエナミへの苛立ちの八つ当たりを目的に、自身の能力とスキルの訓練の為にダンジョン管理事務局にある修練場に向かっていった。


 半ば呆然とサーヤを見送ったピーターとしては彼女から聞くエナミの実像と今まで自分が調べていた時に確認していた筈の虚像とのギャップに混乱していた。


「エナミ・ストーリーとは何者なんだ?」


 このブルックス家の屋敷の廊下で一人呟いた一言が、その時のピーター・ブルックスとしての思いの丈の全てだった。










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 気にいらなかったら、貴重な時間を使わせて申し訳ない。ただそんなあなたにもわざわざここまで読んでいただき、感謝します。

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