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ダンジョン攻略アドバイザーは今日も呟く。  作者: 煙と炎
第二章 相談窓口は時間外も働く
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第六話 ミズキはラミーと働きたくない 3

ラミー・レバラッテの話は一旦ここまで。

 ラミー・レバラッテの能力は俗に「危険予知」と言われるものだ。自身の周辺で起こる危険なシチュエーションをあらかじめ避けられる、のがそもそもの能力だった。


 しかし今ではラミー自身が目視で一度でも確認した相手ならば、その相手の危険すらも予知できる様になり、危険だった筈の人間の未来すら安全になるような警告をする事が出来る様になっていた。


 そもそもラミーはナランシェ連邦にいた小さい時から自分の周辺で起こる様々な事件や事故について不思議に思っていた。周辺でそれだけ起こるトラブルに、彼自身が巻き込まれた事が一度も無かったからだ。


 ラミーの周辺で起こった事は時として集団誘拐や、ガス爆発による大規模火災など普通に生活していたら頻回に出会える様な類のものではない。ただ彼が十才になるかどうかの頃には、この異常事態に慣れきってしまっていた。


 自分にはこれから起こる状況は今後の自分には影響しない。その特質性を解明したのが王立アカデミーの留学に際して行われた、アルミナダンジョン国のダンジョン開発研究所による能力確認だった。


 そこで初めて自分には他の人には無い能力があり、それが自身に起こりうる不幸を避けるのに役立っていると分かった。このラミーの「危険予知」という能力にはダンジョン開発研究所でも非常に話題になり、より細かな分析を彼が王立アカデミーに留学している間に行われていた。


 当然彼が卒業してからダンジョン管理事務局に入局する際にも、他国の人間であるにも関わらず、十分に戦力として配置部署を検討された数少ない人物だった。ただあくまでも彼の度を超えた話し好きを別に考えなくてはならなかったが。


 そんなラミーの能力についてはダンジョン攻略課に配属になる前から第一保安課での同僚を通してミズキも知っており、自分の能力とは全く違う類の特殊な力を持つ彼には興味があった為、どの程度の能力かを彼から詳しく聞いていた。その為に何十時間もラミーから身にならない話を聞かされ続けたのは今でもトラウマだったが。


 ラミーがレラの事を言う以上、それは確実に起きうる未来だった。ミズキはラミーに確認していく。


「ラミーさん、そのレラが危ないっていうのはどれくらい先の事ですか?」

「う~ん、まずはまだまだ先だと思うよ。ここにはちょっと自信が無いけど、3ヶ月から半年の間程度かなぁ。一月後とか二月後とかではないと思うよ」

「……ちなみにどんな事が起きそうなんですか?」

「うん?多分、誘拐じゃないかなぁ。後ダンジョンブレイクも起こりそう」

「ダンジョンブレイク?!そんな規模で事を起こすって…」

「そうだねそうだね〜、普通にダンジョンブレイクがもしウチの5大ダンジョンで起きてランドール共和国がやったっていう証拠が上がったら、間違いなくランドール共和国とアルミナダンジョン国との戦争だよね」


 ラミーはテーブルにあるツマミを食べながら、日常の事の様にサラッと言う。ミズキは現実感が急に無くなった様に呆然としてしまう。


「……そんな無謀な賭けをして、ランドール共和国の狙いは何ですか?」

「狙い?そんなの簡単だよ、個人的な恨みって奴だよ。国の上に立つような連中は誰もがウチの5大ダンジョンでダンジョンブレイクなんて起こしたら、それがどんな問題になって、どれだけの報復があるかも分かっている。だから事を起こすのが危険な賭けだって事は分かってはいるけど、もしこれが万が一でも成功したら?」

「…アルミナダンジョン国の権威と国防能力に疑いの目が各国に出ますね」

「そう、正解。その上で亡命してきた元大統領の長女、レラ・ランドールちゃんの誘拐まで起きたら、今度はダンジョン管理事務局の面子とかプライドは丸潰れだよね。まさにアルミナダンジョン国の危機ってやつが起きそうだね」


 ラミーはあくまでも楽しそうに話す。内容を考えなければ、二人は一つのテーブルを囲んで、久しぶりの再会を満喫しているようにも見えた。相手のミズキはドンドン難しい顔になる。


「現時点でのダンジョンブレイクの発生確率は?」

「僕の能力をミズキちゃんは知っているだろう?間違いないさ。どんな手段か分からないけど、奴らは確実にやろうとする」

「でもどうやって?」

「そこはねぇ〜、この前、僕がランドール共和国の大統領府でたまたま見かけたヤツが、なんか噛んでそうなんだよね〜」

「ランドール共和国の大統領府にラミーさんのお知り合いが居たんですか?」

「そうそうそうそう、ちなみに向こうのやつじゃないし、我が祖国、ナランシェ連邦の人間でもない。アルミナダンジョン国にいる君も知ってるやつだよ」

「どなたが居たんですか?」

「ピーター・ブルックス。ブルックス家の次男坊で、僕の王立アカデミーの同期のめちゃめちゃいけ好かない野郎さ。奴が何故かルーガード議長の応接室から出てくるのを見かけてね」

「でも、それだけじゃあ」

「そうだね、ヤツが関係するかは分からない。ただおかしな点が一つあったのさ」

「おかしな点?」

「あいつの未来からもウチの国でダンジョンブレイクが起きているのが見えたけど、あいつの周辺には何の損害も見えなかった」

「どういう事ですか?」

「あいつがダンジョンブレイクが起きたダンジョンの中で佇んでいたにも関わらず、すぐにはモンスターが全く襲ってこなかった未来が見えたのさ。あいつが恐らく今回のダンジョンブレイクの首謀者なんだろうさ」

「ラミーさんの力でレラを何とか出来ないんですか?」

「無理無理無理無理。というより、面倒でしょ。この能力にも反動はあるし、こうやって他人に伝えるだけでもそれなりの代償を払うんだから。それになんでダンジョン攻略課の同僚だったからとか薄い理由でよく知らないレラちゃんを助けなきゃいけないの?俺より適任がいるでしょ。ちゃんと教えてあげてよ。僕は彼には借りがあるからね。みんなで勝手に未来を変えてよね。必要があれば、こっちからまたエナミにも声をかけるようにするし。んじゃ、僕はこれから家族みんなでディナーがあるから。ミズキちゃん、またね」


 世界がどうなろうと本当に割とどうでも良いラミーはその世界を変えうる程の自身の強大な能力にはほぼほぼ興味が無かった。彼が唯一興味があると言って過言ではない家族の待つ家に向かうために、ラミーはにこやかに笑みを浮かべたままテーブルから立ち去っていった。









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