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ダンジョン攻略アドバイザーは今日も呟く。  作者: 煙と炎
第二章 相談窓口は時間外も働く
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第三話 おしゃべりラミーは喋り続ける

 現在アルミナダンジョン国とランドール共和国との交渉の矢面に立っている、外交部第一外交課課長補佐であるラミー・レバラッテには子供の頃から苦手なことが一つだけあった。それは黙って人の話を聞くことだ。


 おしゃべりラミーがあだ名として定着したのは彼が王立アカデミーに入る前の、まだ南の大国ナランシェ連邦にいる頃からだ。


 ラミー・レバラッテはナランシェ連邦の日本で言う小学校時代に非常に優秀な成績を収め、両親の仕事も連邦職員であり国家公務員と家柄もはっきりしていた為、4つの大国からの留学枠として王立アカデミーへの連邦からの推薦状を手に入れていた。


 しかしそのラミー個人の成績表のにも必ず書かれていた文言がある。「いつも落ち着かず人の話を聞かず自分で話してばかりいる」と書かれる書面を見ては両親は苦笑いしていた。


 そんなラミーも王立アカデミーに留学し、無事に優秀な成績をおさめて、ついでに少しの間、社会経験とばかりにダンジョン管理事務局の保安部第一保安課、広報部第一広報課でそれぞれ20歳になるまでは腰掛けて、いざナランシェ連邦で要職に就くために帰ろうとした所でケチが突く。両親が連邦職員として不正を働いたとの疑惑が生じたのだ。

 

 この出来事は実際にはあくまでも疑い止まりで、他者の疑惑を擦り付けられただけで証拠もなく、問題は何も無かったのだがだったのだが、その子供が他国の国家公務員で暫く勤めていざ帰ってくるにはタイミングがあまりにも悪く帰国を断念せざるをえなかった。

 

 しかし、神様はそんなラミーを見捨てず、彼が広報部第一広報課に勤めていて、ちょうど帰国が出来ず落ち込んでいた時から付き合っていた女性と、四年後無事に結婚することが出来たのだ。結婚して6年、付き合い始めてから十年以上経った今、子供も二人いる家庭で奥さんが嘆く。「この人、付き合い始めてた時はあんなにも静かだったのにどうして変わっちゃったのかしら……」と。


 そんなおしゃべりラミーもこの女性との結婚を期に、アルミナダンジョン国で骨を埋める覚悟を持つようになり、急にやる気を見せ始めた彼は元々の仕事をする力と能力も相まって、第一広報課から第二資材課、そしてダンジョン攻略課冒険者相談窓口へと昇進の道を繋げたのだ。


 ちなみに彼は王立アカデミーの頃から細身ながらも筋肉質で、身長も180cmはあり、ナランシェ連邦特有の色白、蒼眼で整った顔をしており、運動神経も抜群で、本当に黙ってさえいればモテるのもよく分かった。


 そんなラミーも外交部第一外交課課長補佐として2年が経ち、十分に外交課の仕事に慣れた彼は、ルーガード議長の秘書に待たされている現在も議事堂の警備相手に喋りたくてしょうがなくなっていた。


「ねぇねぇ、一体いつまで待てばいいんですかね。こっちもあらかじめアポ取ってたと思うんだけど何でかこんなに時間引っ張られてるのはどうしてなのかな?」

「すいません、秘書の方からはただお待ちしていただくように言われてますから」

「はいはい、分かってますよ。大丈夫大丈ー夫、あれでしょ、国家にとっての優先順位がなんちゃらってやつでしょ。僕もそういう感じの仕事を外交部に移ってここ2年位はやってきたから、何となくニュアンスは分かってるって。僕らの優先順位が高いか低いかもね」


 必要以上に話すラミーに若干辟易してきた警備にとって幸運だったのが、ちょうどルーガード議長が部屋から追い出した秘書がやってきたからだ。すぐにラミーを見つけ、警備が彼女に声をかける前にやってくる。


「あぁ、ラミー様、おまたせして申し訳ありません。両国の安全保障委員会の日程のすり合わせについてのお返事がまだでしたね。わざわざこうしてお時間とっていただきありがとうございます」

「いやいやいやいや、僕は構いませんよ。今日会えなければ、明日、明日会えなければ、明後日会うつもりでしたから。それで?いつなら日程調整出来そうですかね?」

「はい。ありがとうございます。これからすぐにでも調整させていただきます。それでは内容はどうぞ、こちらの方で」


 秘書はラミーを連れて、先程とは別の応接室に案内する。二人が日程のすり合わせと人員の配置についての打ち合わせを済ませるまでに2時間ほどかかり、少し休憩の為にお茶の時間をとる。


「それにしてもぶっちゃけ、ここんところ何だかランドール共和国内がバタバタしてません?ウチの課長もちょっと心配してるんですよね〜」

「……何かお気になる所でも?」

「いやぁ、このトールタイプの街の雰囲気が僕が前に来た時と比べて暗いというか何というか、ここの警備担当さんも落ち着かないって言うか、僕らが嫌われてるだけって言うのもあるんでしょうけど、でも前よりもなんか違ってギスギスが強い感じがしてるような気がするんですよね〜」

「……よく見てらっしゃいますね。ですが、特に我々としては変わらないつもりです」

「そうですかね〜、そうですよね〜、う~んとあくまでも雰囲気ですから、僕の思い違いですよね。それにこうやって安全保障委員会の日程もスムーズに決まってるし、うん、僕の勘違いってやつでしょうね。すいません、思った事をついつい言ってしまうのはホント性分で、よく課長からも怒られてるんですよね」

「いえいえ、これからも両国の関係に齟齬が生じないようにしていきたいですね」

「ははっ、平和が一番っすね!!」


 軽くラミーは頭を下げる。少しホッとする秘書は笑顔で答える。内心ベラベラといらない事を喋っているが、アルミナダンジョン国の外交官としてよくランドール共和国の内情を観察している事に舌を巻いたが、こちらの言う事を疑わない為か思考の方向を誘導できていた事からは、これ以上突っ込まれないように早めに彼にお帰りいただくことを心に決めた。


 その後もスムーズに検討内容のすり合わせが出来た二人は次回の会議の日程だけ決め、別れた。秘書は議事堂内からまだ誰かれ構わず話しかけるラミーを見かけるが、いつもの事と割り切り、ルーガード議長の元に向かった。話す相手が尽きて門番にも長々と挨拶をしてから、ラミーはやっと大統領府を出ていく。


「ウチの国に居るはずのブルックス家の次男がここにいるってのは何だかさっきの秘書さんの話と違うけど、外交って難しいもんだねえ。確かにアイツはこの国の担当なんだろうけど、ルーガード議長に会えるような立場ってのがなぁ……。まぁ、考えるのは僕じゃなくて課長の仕事だから、伝えなきゃね。後はかわいい子供と嫁さんのお土産選ばなきゃっと」








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