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ダンジョン攻略アドバイザーは今日も呟く。  作者: 煙と炎
第二章 相談窓口は時間外も働く
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第二話 笑う議長 2

 客人を待たせながらも、あくまでもゆっくりと自分のペースで秘書達と警護を付き従えながら、ルーガードは国務会議の議事堂内にある応接室に向かう。


 この応接室もグラハムがいた頃は、大統領用のものと比べると明らかに質素な作りのものであったが、非常にコンプレックスのあるルーガードの肝いりで、グラハム達の亡命後直ちに改装され、大統領用よりも非常に豪華なものに作り替えられていた。


 一度ドアの前で立ち止まると、秘書がドアを開けるのを静かに待つ。ルーガードは中にいる人間とはもう既に何度か会っており、今日の用件もよく分かっていた。


 ドアが開かれる、目の前にはきちっとしたスーツ姿の三十前後の青年とそのお付きがいつもと同じ姿勢で待ち構えていた。ルーガードとその青年はお互いに手を出し、握手を作り笑顔で交わす。


「お忙しい中お時間とっていただきありがとうございます。ルーガード議長」

「いやいや、だいぶお待たせしたんじゃないかね、ピーター君」

「いえ、こちらはお待ちさせていただく分にはいくらでも。その分稼がせてもらえますから」

「ハッハッハッ、これは手厳しい。あまりお待たせするわけには行かないね。それで今日は例の件に進展があったのかな?」

「はい、ご要望の商品を用意出来ました」

「なら、早速見せてもらえるかね」

「では、こちらになります。おい」

「はっ」


 ピーターと呼ばれた青年はお付きが持っていたアタッシュケースを丁寧に受け取り、自分自身で応接室のテーブルの上に置いて鍵を開け、ルーガードの手前で彼の警護に中身を見せる。警護がアタッシュケースも含めた安全を確認してからルーガードに中身を見せ、確認してもらう。彼は一目中身を見て、ピーターに言葉をかける。


「ピーター君、これが例の?」

「はい、議長閣下。そちらがダンジョンブレイクを起こす為の3つの鍵の一つ、「時止めの砂」になります。アルミナダンジョン国5大ダンジョン一つ、ヤーガーラダンジョンでプラチナランク冒険者に依頼して、四十二階にてようやく見つけ手に入れましたので、それなりの価格になりますが、いかがなさいますか?」

「いつも通りのルートで金は用意しよう。ご苦労だったね。それで?これで鍵は2つ揃った事になるんだろう?後1つは何が足りないのかね?」


 ピーターはアタッシュケースの中にある「時止めの砂」をアタッシュケースごと、そのままルーガードの護衛に渡す。ルーガードは持ち運ばれるアタッシュケースには目もくれずに応接室のソファーに深々と腰掛け、ピーターを手で反対のソファーに座るように薦める。それと同時に秘書に飲み物を用意させ、護衛やお付きなどの人払いをする。


 ピーターは自身のお付きと秘書達が隣室に行くためにドアを閉めたのを確認してから薦められたソファーに浅く座り、ルーガードの質問に応える。


「ルーガード議長、もう一つもダンジョンから見つける必要があるものなので少しお時間は頂きますが、間違いなく準備は出来ます。ただ…一つお尋ねしても良いですか?」

「なんだね」

「何故そんなに焦ってるんですか?何も今すぐダンジョンブレイクの準備をなさらなくてもよろしいんでは?」

「私が焦っているように見えるかね?」

「はい、このランドール共和国のトップで在らせられる議長という地位にいても、こんなある種の化学兵器のようなものを急に我々のような武器商人に用意させて、全く落ち着かれてないのは何か焦りがある証拠では?」


 ピーターに手厳しい所を突かれたルーガードは、相変わらずの歪な笑顔を浮かべたまま少しの間沈黙した。ピーターも仕事がら、この手の人間に会う機会が昔から数多く有ったが、ルーガードの表情は格段と読みづらかった。


「…ピーター君、君には次の鍵も用意してもらってるようだし、少し本音を話そうか。ダンジョンブレイクはね、この国にかけられたランドール家の呪いを祓うためのものなんだよ」

「……ランドール家の呪いですか?」

「あぁ、そうだ」


 やはりルーガードは歪に笑ったままだが、目の光が陰っていく。最終的には眼の前のソファーに座っているピーターや周りの調度品なども見えていないようだった。ピーターは訝しげにそんな彼の様子を見る。


「ルーガード議長?」

「私がグラハムを追い出した時はみんな私を讃えていたんだ。そうだ、アイツラは私の味方だったんだ。何故今になってこんな目に私だけが遭わなければならないんだ……」

「……」

「グラハムの奴はいよいよアルミナダンジョン国に亡命するという前の日にも私に会ってこう言ったんだ」

「彼は何と?」

「これでやっと肩の荷が降りたよ。後は君に託そうと」

「託そう…」

「そうだ、何の事はない。彼には大統領という地位へのこだわりも、ランドール家という権力への執着も全く無かったのさ。私だけが彼から一方的にその両方を取り上げようと躍起になっていた事にその時気付いたよ。しかしもう全てが遅かった」

「議長…」


 ルーガードの目に段々と光が戻るが、光が戻った後でも、ピーターを物を見るような何とも言えない目で見る。見られたピーターはその視線の冷たさにゾッとする。


「ピーター君、私はこの二十年この国務会議の議長という地位にただしがみついていただけなのか、それとも私がこのランドール共和国を支えていたのか分からないのだよ。」

「この国はルーガード議長があって、今があるのでしょう。でなくては共和制そのもの、つまりはランドール共和国の根幹が疑われてしまいます」

「そう思うかね」

「はい」

「では、早くダンジョンブレイクの鍵とやらを用意したまえ。そうすれば自ずと私の質問の答えが分かるだろう。今日はここまでだ。鍵をありがとう。今日は話せて良かったよ、ピーター・ブルックス君」


 ルーガードはピーターを追い出すと秘書に用意させたコーヒーを口に含み、飲み込むと同時に自身の体が一回り小さくなるのを感じた。









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