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ダンジョン攻略アドバイザーは今日も呟く。  作者: 煙と炎
第一章 相談窓口は一言多い
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第二十話 相談窓口の人は後輩を助ける 1

 居酒屋でスラム街の四人組に集られてから二日後、エナミは冒険者相談窓口に朝から気だるさげに座っていた。タナカに居酒屋でああ言った手前、あの連中を待つには待つが、来るかどうかの期待値としては半々程度だった。毎回冒険者候補のスカウトとはそんなもので、わざわざこの冒険者相談窓口に来るのも彼らからしたら一つのハードルと言えた。


 アルミナダンジョン国建国以来三百年に渡り、街がどれだけ拡張しても常に建造物として街の中心にあるダンジョン管理事務局。その入ってくる人皆に歴史を感じさせるように作られた中央玄関から、直接2階へと続く大階段の先にある巨大な扉で出迎えるダンジョン攻略課の入口によそ者が来るという事は、この国の中央部に触れるだけの相応の覚悟が必要であった。


「先輩どうしたんですかぁ?珍しく朝から真面目な顔してぇ」

「お前は先輩が苦しんでいるのを、馬鹿にしてるのかと言いたいところだけど、真面目な顔?レラには分かるの?」

「はいぃ、この相談窓口に配属されてからはずっと先輩の隣に居ますからぁ、先輩の考えてる事はまだまだ分かりませんけどぉ、先輩の表情くらいは少しは分かりますよぉ」

 

 少し心配そうにレラが隣の窓口から小首を傾げて声をかけてくる。最近はエナミの教育のおかげか本人の能力の高さか、準備も事前にしっかりとしている為、相談窓口に座ってから慌てて何かをしている様子も減ってきていた。エナミは自分の真面目な顔ってどんな顔かなと考えながら会話を繋いだ。


「成長したな、お前も」

「えへへぇ、そうですよぉ。しっかりバッチリ観察してるんですからねぇ。これから私も相談窓口のエースって呼ばれる様に頑張るんですぅ、先輩には負けません!!」

「おう、その粋だ、頑張れよ」

「はいぃ!!」


 窓口に座ってレラは両手でガッツポーズを小さくする。エナミはそんな彼女の朝一から振り切れているテンションの高さに引きずられる事なく、ダルさ気な様子は変えないまま自身の相談窓口の準備を整える。


 そうこうする内に朝の最初の相談窓口に冒険者がやってくる。エナミにはこの間、相談用の窓口の机を両手で叩きつけて飛び出していった、女性神官のジュリアーナ・ヒメネスが、レラには彼女に好意を抱くミゲルが、それぞれ珍しく被る時間で相談窓口にやってきた。かたや明確に困惑と恥じらいを見せてエナミの前に座り、かたや喜びを隠せないようにレラの前に座った。


 ジュリアーナが一向に話を始めようとすらしなかった為、エナミから声をかける。


「ヒメネス様、今日も相談という事は八階を越えたのでしょうか?」

「はい、あの飛び出した後に冷静に一度考えてご指摘いただいた点を振り返ったらその通りだと思って以前いただいた私に合うっていう八階の攻略にはフロアに入った瞬間に聖なる祈りでゴブリンソルジャーの身動きを止めるっていう方法をやったらアッサリ攻略出来ました、今までがなんだっていうくらいあっさりと」


 謝罪なのか、恥ずかしさをごまかす為なのか全く分からない、流麗な早口でジュリアーナは捲し立てる。エナミはなるべくゆっくりと、さも自然な事のように丁寧に話す。


「流石ですね。いや、期待通りと言った方が良いですかね?今回みたいに自分の力量を分かった上で、結果として無理なく安全に攻略するのがヒメネス様には一番合った最速のメリダダンジョンの攻略法だと思いますよ」

「いえ、前回貴方があんな風に的確なアドバイスをしてくれたのに焦って十三階に行きたいなんて言ってどう考えても明確な問題点を突きつけられて現実から逃げた私なのにこうしてまた相談に乗ってもらえて本当にありがとうございます」

「いえいえ、時にはこうやって厳しい事を言うのも仕事の内ですから。それにヒメネス様の優秀さは分かってるつもりです。後3ヶ月もすれば、メリダダンジョン十三階の聖なる夜の灯りを手に入れられるようになりますよ」

「本当に!?後3ヶ月で!!後半年はかかると思ってたのに…」

「ええ、その代わりちゃんと私のアドバイスは守って下さいね。神官として当然の心構えだと思いますが、一度に十三階まで駆け抜けようなんて欲張らないで下さい」

「そんな事は言われなくても分かってます、あなたはやっぱり一言多いですわ」


 ジュリアーナは顔色をコロコロと変えながら、最後は不服そうも笑顔で頷く。エナミはやれやれと会話のペースの速さに一息つく。


 隣の窓口ではミゲルが相変わらずレラを過剰に褒めそびやかし、彼女にビジネススマイルを貼り付かせたまま、困らせていた。


「レラさん、ついにゴブリンマジシャンをやっつけて8階に行けるようになりました。これもレラさんの魔法耐性のマントを使えという的確なアドバイスのおかげです!!」

「ミゲルさん、何度も言いますが今回の攻略情報はあくまでも相談窓口のマニュアル通りで、私の力では無く、ダンジョン攻略課の叡智の結晶をお伝えしてるだけですよ」

「また謙遜なさって。こちらも何度も言いますが、レラさんの偉大さはそういう謙虚さから生まれているんですね。どうでしょう、今度ご飯でも食べながらその謙虚さの秘訣を教えてもらえませんか?」

「ミゲルさん、プライベートへの干渉は困ります。窓口も私の担当冒険者から外れてもらうような対応を取らざるを得ない状況になります。今後は八階の攻略の話をしていくという事で宜しいでしょうか?」

「はっはっはっ、また今度の機会という事ですね?レラさんは恥ずかしがり屋なんですね。分かりました、今日は八階の攻略の話をしましょう」


 あくまでもビジネスライクに話すレラと、彼女と一方的にどんどん距離を詰めようとするミゲル。エナミは横の相談窓口にいて、この感じは今の段階で何とかしないとしょうがないなと判断して、まずジュリアーナに一言断る。


「ヒメネス様、すいません。ちょっと隣のサポートをするので席を外します。お時間を少しもらいますが構いませんか?」

「お気遣いなく、私の方でやる事は後は九階のメリダダンジョン攻略情報の確認だけですから。以前いただいたこのマニュアルで出てくるモンスターの情報も把握してますし、マップの訊きたいポイントを貴方が戻ってくるまでに上げておきますわ」

「申し訳ございません。少々お待ちを」


 変われば、変わるものだとエナミは思いながら、既にマニュアルに視線を落とすジュリアーナに軽く頭を下げ、椅子からわざわざ大義そうに立ち上がり、隣の席のレラとミゲルに声をかける。


「すいません、ミゲル様、ご相談の途中なのは重々承知なのですが、担当のレラの方を少しのお時間、お借りしますね?」

「えっ、ちょっと」

「エナミ先輩?」

「申し訳ありません、ダンジョン攻略課内での打ち合わせが急遽入りまして、5分程度の時間お待ちいただけますか?」

「…ミゲルさんすいません。そういう事みたいで急な対応で申し訳ありませんが、少し席を外しますね。少々お待ち下さいね」

「あっ、ああ、分かった。レラさんが言うなら、何時間でも、あなたを待ってますよ」

「そんなにはかかりませんが、ありがとうございます」


 エナミはミゲルに馬鹿丁寧に頭を下げながら、レラの腕をとり、無理なく自然と椅子から立たせる。レラも自然に身を任せ、ミゲルに頭を下げ、有無を言わせぬ内に席を離れる。


 気のおけない距離に立ち、親密な様子で話す二人の様子にミゲルは不満そうな顔と視線を隠さなかった。









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