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ダンジョン攻略アドバイザーは今日も呟く。  作者: 煙と炎
第一章 相談窓口は一言多い
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第十八話 相談窓口の人は狙われる 2

「なんでお前に集った俺らに、わざわざ名刺をくれるんだよ!!」

「何でって、冒険者のスカウトは正式なダンジョン攻略課の仕事だからさ。冒険者相談窓口は冒険者の相談だけじゃなく、冒険者になろうとする奴らも相談にきて良いんだよ。なんか冒険者相談窓口は、こっちが待ってて冒険者が勝手に来てくれるみたいな噂が街には蔓延してて、こういう地道な活動もやってるのはあんまり知られてないんだよな」


 エナミはため息をつく。5大ダンジョンを攻略していく冒険者は、アルミナダンジョン国の中で特別な存在と言える。建国した300年前はまだ開拓したばかりで、冒険者とアルミナダンジョン国の関係は曖昧なものだった。冒険者はダンジョンを攻略して、そこで取れた素材類を国に落とし、その素材類の加工や売買で国が潤うという分かりやすいサイクルで動いていた。


 ただし、そのサイクルには冒険者達が大怪我などせず、継続的にダンジョンに入って攻略してくれる事が大事で、ダンジョン管理事務局は設立された当初からその辺を十分に考えて、優秀な冒険者の囲い込みを始めた。


 その中で、ダンジョン攻略部では市井の荒くれ者や、見込みある者達を積極的にスカウトする事が求められ、その担当部署として、冒険者求人課なる部署もある程だ。彼らは定期的に冒険者候補を募集する他に、今回のような、町中にいる力を持て余した者達もスカウトしていた。


 同じダンジョン攻略部管轄のダンジョン攻略課にも当然このスカウトのような職務があるが、普段からダンジョン管理事務局に勤めて内勤ばかりの彼らが街に出る事は少ない。冒険者求人課と同じように町中でのスカウトが出来るとは知られてなかったのは当然である。


 勿論このスカウトを受けたからといって、すぐに冒険者になれる訳では無い。ダンジョン管理事務局は冒険者候補を立ち合いによるテストや体力測定などの何らかの形で認めた場合、次のステップとして国営冒険者アカデミーの入学試験資格を与える。そして無事にこの試験に合格して約1年以上はかかる研修を経た後、初めてブロンズランクの冒険者として認められるのだ。


 ちなみにこの国営冒険者アカデミーに合格した冒険者候補には給与が出る。この給与も家族四人暮らしを十分に賄える程度は出るため、他に仕事を持つような立場の人間でも、基本的には受験してもらえるようにアルミナダンジョン国は配慮している。


 しかもその冒険者候補の給与がブロンズランクの冒険者の得られる報酬の三分の一以下という事実を考えれば、いかに冒険者がこの国にとって優遇され大事な存在として扱われているかが分かる。


 アルミナダンジョン国にとって、冒険者をこれだけ重宝している理由は経済面もそうだが、軍事面でも価値があるからだ。ゴールドランク以上になると万が一アルミナダンジョン国に攻め込むような何らかの敵性勢力があれば、戦力として承応義務が生じ、アルミナダンジョン国の戦力として駆り出される。


 つまりはこの国での「冒険者」と言えば、アルミナダンジョン国所属の「兵士」としての役割が生じるのだ。当然この出兵してくるゴールドランク以上の冒険者が一騎当千という事は広く知られており、よその国や武力勢力への強い抑止力として作用している。その点もダンジョン管理事務局はよく考えて冒険者の発掘と保護には勤しんでいた。


 当然どこの敵性勢力とも戦わずにいる事が最大の平和だが、アルミナダンジョン国は建国して50年位は5大ダンジョンという美味しく見える餌を目的に、近隣の大国からよく狙われていた。しかし「冒険者=国の戦力」が徐々にハマりだし、最初のプラチナランクが生まれ、西の大国ランドール共和国の戦力3万人を総勢30人の冒険者で全滅させた時に全てが変わった。


 ランドール共和国以外の国もよく分かったのだ。アルミナダンジョン国とやり合うのは非常に割に合わないと。ちょっとしたちょっかいで、いきなり国が潰されかねないと。それならあの国とは共同で利益を得られる関係になろうと。


 それからは自国にやってくる冒険者を取り込もうと努力する国(当然一番手はランドール共和国だったが)も現れたが、アルミナダンジョン国の冒険者達への待遇と、何より5大ダンジョン制覇とその名誉に替わるだけの魅力を提案できる国がある訳でもなく、アルミナダンジョン国は近隣の国々と戦力差を拡大させていった。


 現状戦力として国に所属するゴールドランク約300人、プラチナランク70人、オリハルコンランク11人。わずか400人にも満たない戦力だが、一昼夜にして、惑星カリステのどの国でも落とせると言われているこの実質的には巨大な戦力と戦おうとする国はここ100年は現れていない。


 そんな栄誉ある冒険者候補への片道切符をエナミはスラム街にたどり着いたよそ者に簡単に渡したのだ。四人組は理解が及ばないようで何か無いかと警戒しながら、挙動不審にキョロキョロと辺りを見渡す。一番大柄な男はタナカに注意を払いながら、エナミを睨んで言い募る。


「俺等は他所から来た逸れ者だぞ、何か裏があるんだろう?!」

「簡単な素性は知ってるよ。さっきもそんな事お前ら自身が言ってたろ。大体わざわざそんな奴らを俺らダンジョン管理事務局が引っ掛けて何になる?」

「確かに…」

「しかもお前らはその他所から来たせいで暇に空かせて、俺から集ろうとして、この場所の暗黙のルールすら知らずに、あっという間に人生終わらせかけてた訳じゃないか。嫌だろ、そんな理不尽?」


 四人組は脅かしてた筈のエナミの冷え切った言葉に震えた。やはり知らぬ間にこの世から消される寸前だったのだという事実が明確に提示されたからだ。この草臥れた男の緊張感がある一言で、直前に消え去る運命を変えられただけで、まだこれから先の事は分からない事も思い知らされた。エナミはカウンターに背中を預けて、ため息をついてから一言呟く。


「俺としては傲慢な言い方になってとても嫌だか、選ばせてやるよ。どうする?その名刺を受け取って、明後日の朝イチに冒険者相談窓口に来るか、今この時をもってこの世から消えていくか、どっちが良い?」


 四人組は皆同時に首を横に振り、一目散に去っていった。









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