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ダンジョン攻略アドバイザーは今日も呟く。  作者: 煙と炎
第四章 相談窓口は犯罪者扱いされる
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第二十四話 レラ・ランドールは怒る 1

 レラ・ランドールは自分がメリダダンジョンの四十階にてフロアボスであるバジリスクを倒して得た筈の高揚感がハッキリと無くなっていくのを、ダンジョンの一階で問答を行っていたエナミと査問委員会を名乗る人間達とのやり取りで感じていた。


 レラが質問した事に、エナミが珍しく彼女に対して苦い顔をして真面目に話していたのをこの後強く覚える事になったが、その時は何故エナミが査問委員会なんかにかけられなくてはならないかという疑問に対しての怒り以外は全く気にならなかった。


 その為、オッペンハイム達、査問委員会のに対して、エナミが言っていた最後の言葉の意味が分からぬまま、隣で勝手に発動してしまった自身の作り出していた魔力の暴走に飲み込まれそうになっていた。


「この件でもし、レラとサーヤ様を巻き込んでみろ。お前ら、存在すら跡形も無くなるけどそれでもいいんだな?」


 このエナミの台詞により、メリダダンジョンの一階から撤収していくオッペンハイム達査問委員会の面々を尻目に、レラの魔力暴走は一向に収まらず、隣に立つエナミすら飲み込まんとしていた。


 そんなレラの状況を自らの発言で片棒担いで作り上げてしまった責任を、十分に認識していたエナミはやるせない事だと冷静に認識していたが、査問委員会御一行様の撤収を確認した彼は直ぐに手をうつ。


「落ち着けレラ。お客さんはお帰りだぞ?」

「何でエナミ先輩が査問委員会にかけられる必要があったんですか?」

「それはな、俺にナランシェ連邦のスパイ容疑がかかっていたのさ。この前のサイテカ連合国での「魔女」ジエ・パラマイルとのやり取りが証拠だと騒ぐ連中が上にいてな」

「そんなの言いがかり以外の何物でもないじゃないですか!?」

「レラ、落ち着けって」


 まだまだ魔力の暴走をコントロール出来ないレラであったが、少しづつエナミが宥め賺して落ち着かせようとする。メリダダンジョンの一階には全く人気が無かったのが救いだが、もし万が一この場にゴールドランク以下の冒険者がいれば、普通に体調を悪くするのは目に見えていた。


「エナミ先輩は悔しくないんですか?あんなに「海鳴りの丘」のダンジョン攻略で活躍して、ダンジョンブレイクからライン地方を、いやサイテカ連合国を救った英雄なのに、こんな扱いを自分の母国で受けるってあり得るんですか!?」

「レラ、落ち着けと言ってるだろう?」

「有り得ませんよ、こんな事。ダンジョン管理事務局の上層部に言われて、あんな事をわざわざさせられて、何で向こうで偶々出会った外国の要人のせいで先輩が犯罪者扱いされなきゃいけないんですか?」

「そりゃ、俺の存在が疎ましいって奴らはダンジョン管理事務局やアルミナダンジョン国内部に何人もいるんだろうからな。しょうがない」

「しょうがないってそんな……、先輩は悟り過ぎです」

「まぁ、俺の代わりに怒ってくれてありがとうよ。俺にはこのダンジョン管理事務局に入局してから長年の経験で、もうそういう人の嫉妬とかの感覚が無くなっててな。そうやって自分の周りの人間が怒ってくれる事で何とか人の機微を理解しているつもりになれるんだ」

「エナミ先輩……」


 エナミの悲しい独白にレラは荒れ狂う魔力の暴走から落ち着きを徐々に取り戻していった。それに伴い、先程まで見られたメリダダンジョンの一階周囲へのレラの魔力による悪影響も無くなっていた。


「どうだ、レラ?少しは落ち着いたな」

「……はい、先輩。落ち着いたと思います。ご迷惑おかけしました」

「よし。んじゃメリダダンジョンの四十階でのバジリスク討伐の報告もあるし、ダンジョン管理事務局に戻るぞ」

「……今戻ったら、あの人達もいるんじゃないですか?」

「そりゃいるだろうが、あいつらはダンジョン管理事務局内部では何も出来やしないさ。査問委員会の奴らからすれば、この場で現場拘束するしか俺を確保する手が無かったからな。それくらい時間条件で追い込まれていたからな」

「時間条件って何かあったんですか?」

「今頃はダンジョン管理事務局内で、俺の査問委員会の処分発表がなされている筈だからな。俺が今回のナランシェ連邦へのスパイ容疑という疑惑が晴らされたと公示されている所だろう」

「それって……」

「あぁ、査問委員会の調査結果としてはって言うより、人事部の中で俺は無実だという決定は既に出されていたが、それを良しとしない人間がさっきの連中を俺に寄越したって訳さ」

「つまりはどういう事なんですか?」

「もう、この件で査問委員会に俺が煩わされる事は無いって話だな。だからさっきのお前のお怒りは俺にとっても向こうさんにとっても大きかったって訳だな。万が一あの場で俺を拘束して、お前の暴走が止まらなかったら、ランドール共和国との全面戦争も起こり得たからな」

「そんな事しませんよ!!私を何だと思ってるんですか?」

「そりゃ、可愛い後輩だろう?」

「もう、そんな一言だけじゃあ騙されませんよ!!」


 さっきとは違い魔力を全く表に出さずにぷんぷん怒るレラをなだめながらものんびりと笑いながら、メリダダンジョンを出ていくエナミだった。











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