第十九話 エナミは約束を守る 1
仕事の都合で、年末まで物理的に時間が取れなくなる為、暫くは2日か3日に一度の更新になります。申し訳ありません。
エナミは査問委員会の一応の処分が下る前に、アルミナダンジョン国に帰国した時に、上手く情報を手にして警護についていたレラと約束したデートを遂にする羽目になる。
エナミからすれば査問委員会の処分がハッキリと無実と周囲に分かりやすく出て、この何とも言えないイシュタル・タランソワに嵌められかけた状況が落ち着いた後に、ちゃんと彼女達に説明してから遊びたかった。
しかしレラはエナミが査問委員会にかけられている状況が分かっておらず、冒険者相談窓口に出勤してきた彼の姿を見て、ウキウキしながら彼に誘ってもらうのを待っていた。
その為、この中途半端な状況での対応として、中途半端に見えるような行動にエナミは出ることにした。
「私がメリダダンジョン攻略ですか?」
「そうだ。俺としてはメリダダンジョンのダンジョンブレイクの後の確認になるし、この3ヶ月のレラの能力の上昇がどれほどのものかの確認になるし、一挙両得だろ?」
「う~ん、普通のデートが良かったんですけど……」
「それはまた今度な。それに普通のデートはいつでも出来るだろ?今回は仕事の体で、第一保安課のお前の評価を冒険者相談窓口の俺が直々にする事が出来る事なんて今回みたいな状況じゃなきゃ出来ないからな」
「何だか丸め込もうとしてません?」
「嫌なら普通のデートにするか?それとも俺にお前のこの3ヶ月の頑張りを認めてほしくないのか?」
「先輩のその言い方はズルいです!!」
エナミが査問の呼び出しをオッペンハイムにされた翌日に、ダンジョン管理事務局の地下食堂で会った彼とレラの二人の会話はお昼休みいっぱいの時間がかかったものの、翌日に研修という形でメリダダンジョンに行く形で決着を迎える。
そもそもレラがランドール共和国に帰らずにアルミナダンジョン国に残る条件として、エナミの仮初めの警護担当をするために第一保安課課長補佐として昇進した経緯があり、今回のメリダダンジョン攻略の確認はダンジョン管理事務局の上層部としては渡りに舟だった。
その為、今回の二人のメリダダンジョン攻略に関しては、非常にスムーズに保安課もダンジョン攻略課も許可を出し、その日の午後3時前には、簡単に翌日に二人で行く事が出来る様に書面による通知が出た。
こうして一度流れが決まってしまえばレラも外に不満を見せる事なく、寧ろ自分がどれだけ頑張ったかをエナミに見せなくてはと両手を握りしめて気合いを入れていた。
そんな気合満々なレラをメリダダンジョンの攻略についての書面に判子を押していた上司の第一保安課課長ゴードン・ウエストはニコニコしながら呼びかける。
「レラ課長補佐、この許可証渡しておくね。僕の判子を押したから明日メリダダンジョンに行った時に、駐在所にいるダンジョン調査部ダンジョン管理課の奴らにちゃんと渡しておいてね」
「ありがとうございます。ウエスト課長」
「いやいや、若い子の頑張りを応援するのが我々の役目だからね。それに今回は君のここ3ヶ月の努力の成果をちゃんと確認できるいい機会だ。君の元先輩に我々も感謝しかしていないさ」
そう言ってレラに許可証を渡すゴードンはエナミの査問委員会にかけられている状況について当然知っていたが、レラの心理的な負担について無理のない様に知らせないよう配慮をしていた。
この一点だけでもレラやエナミを見守る環境については、非常に繊細に管理されていたが、それを簡単に破壊しようとするイシュタル達に自分達が何も出来ない事も受け入れ、忸怩たる思いだけが増していっていた。
そんな心理状況でもゴードンはニコニコと笑ったまま、上機嫌に見えるように振る舞いながらレラに励ます様にハッパをかける。
「それでレラ課長補佐、今回君はメリダダンジョンの何階迄行くつもりなんだ?」
「一応、四十階のフロアボス倒す事を目的に潜ってこようと思ってます。エナミ先輩は何処でも付き合うって言ってくれてるんですが、私の実力的にも、メリダダンジョンの冒険者達の攻略階層の傾向的にもその辺がちょうど良いかと考えています」
「そうか、じゃあバジリスクを今回こそ討伐するつもりかね?」
「はい。ちゃんと準備出来てますし、エナミ先輩のサポートもあるので自信を持って行ってきます。それに……」
「それに?」
「サーヤさんには現状では置いてかれてますけど、これでプラチナランク冒険者としては彼女に並びますから」
「それなら、君には今回のバジリスク討伐は非常にやる意義があるね」
「はい、頑張ります!!」
この3ヶ月の努力を間近で見ていたゴードンからすれば、十分にバジリスク討伐は可能に見えた。ゴードン自身がメリダダンジョンではないがドンクダンジョンの五十階まで攻略している為、彼女の能力やスキルに関しては十分にプラチナランク冒険者相当のものがあると判断出来たためだ。
これでレラが自分自身の能力に少しでも自信を持って貰えればとゴードンは期待しながらニコニコと笑った表情を深めて、レラが明日のダンジョン攻略の準備として、装備を確認するのを見守っていた。
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