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ダンジョン攻略アドバイザーは今日も呟く。  作者: 煙と炎
第四章 相談窓口は犯罪者扱いされる
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第十二話 グレン・オッペンハイムは思い知る 1

 ダンジョン管理事務局の会議室で、一人目を覚ましたオッペンハイムはその場所が何処なのか一瞬分からなくなっていた。そして暫く混乱して辺りを見ていたが、自分が査問の為に用意したダンジョン管理事務局の会議室の一室だと2、3分した頃には理解した。


 そこで一人きりでその場にいた事から、直ぐに誰からも特別襲われたりするような危機が無いと判断できた為に落ち着きを取り戻して、先程あったエナミとのやり取りを思い出し、彼が何らかの言葉を紬いで何らかの魔法かスキルを自分にかけた事に気づいてゾッとする。


 オッペンハイムからすれば、ダンジョン管理事務局の人間が冒険者の様に粗野な態度で自分を攻撃する事は想定しておらず、ましてや査問委員会の人間とハッキリと認識していたエナミが、息をするように当たり前の態度で何らかの魔法かスキルを自分に使ってきた事が理解出来なかった。


 彼は一頻り自分の身体に異常が無いか調べる。当然彼もダンジョン管理事務局の職員である以上は王立アカデミーで学んでおり、自身の能力も分かっていて、魔法もスキルも使える為、「鑑定」を自分にかけて体調には何も変化が起こってない事を確認する。


 しかし、彼が把握出来たのはあくまでも表面上のものでしかなく、エナミにより何らかの状態が付与されていたようでオッペンハイムの体調の横には「???が付与されているが、条件で発動する」とあったが、それは彼レベルの「鑑定」には見えなかった。


 自分の体調について確認して、何も問題が無いと判断出来た後、オッペンハイムは漸くエナミが会議室にいないという状況を認識していた。


 そしてイシュタルから自分に与えられていたミッションである、広い意味でエナミの追求をするという事が何も達成出来ていないのを思い出した。それを思い出して急に慌てだした彼は一人しか居ない会議室を出て、その辺りを駄目もとだと分かっていても、捜索を続ける。


 当然の事だがオッペンハイムが目を覚ましたのは、エナミがこうなる事を理解した上で古代魔法を使った為に一時間近く経過していた。


 そして、魔法をかけたエナミ自身はオッペンハイムの事など気にする事なく、普通に官舎へと帰っていた。会議室の周囲を確認して誰もいない事を把握してから、その大柄な体に似合わない小さな舌打ちをしながら、オッペンハイムは呟く。


「くそ、イシュタル様にどう説明すれば良いんだよ」


 エナミのナランシェ連邦のスパイ容疑の手掛かりは得られなかったが、エナミから何らかの魔法かスキルによるメッセージを受け取ったと判断したオッペンハイムは周りの目を引かないよう駆け足にならない様に注意しながら、一目散にイシュタルがいるであろう王立アカデミーに向かう。


 オッペンハイムが必死になって王立アカデミーに向かっている頃、エナミの査問の報告を楽しみに待ち受けるイシュタルは、修練場で王立アカデミーの生徒達に古代文字・古代魔法の実技研修を何の因果か分からないがしていた。


「どうした、どうした。王立アカデミーの君等の大先輩であるエナミ・ストーリーは僅か2ヶ月でこの魔法を発動させていたぞ」 

「「「はい!!」」」


 普段は指導が厳しい事で有名なイシュタルが冗談の様にエナミの名前を使い、王立アカデミーの生徒達に激を飛ばす。生徒達もエナミ以外は他の誰もそんな事は出来なかった事を理解していながら、必死になって古代魔法を使おうと頑張る。


 この様な努力の促しをするのは、生徒達も卒業生のエナミの良い意味での伝説は良く知られている為、モチベーションの向上としてその名を使われる機会は多かった。


 そうして教員、生徒共にお互いに有意義な授業を終えてから、生徒達が授業後に個別に質問をする時間のも終えて、イシュタルが修練場を出ようとするとその入り口のドアの前に大柄な男が縮こまる様に佇んでいた。


 王立アカデミーの生徒達はその男が普段は見かけない類の人間だった為、訝しげに修練場の入り口の横を通り過ぎていたが、生徒の皆が出ていくのを見計らってからオッペンハイムはイシュタルに近づく。


「イシュタル様」

「早かったな。首尾はどうだった?」

「逃げられました」

「何、どういう事だ?」

「はい、実は……」


 先程の王立アカデミーの生徒達相手の授業中は冷静に見えてイシュタルは、実際の所、今日中に分かるであろうと考えていたエナミの査問の結果確認を強く待ち望んでいた。


 当然イシュタルも今回のエナミの査問に至るまでに強引な手続きを何個かした事は理解していたが、それでも想定していた流れとは全く違った結果になってしまった事が分かると、オッペンハイム相手に感情が爆発しない様に堪えるのに、非常に忍耐を要した。


 オッペンハイムとしてはそうなると分かっていたが、イナミからのメッセージの件がある為にイシュタルに直接会わざるを得なかった為、報告の最後にその事を話す。


「イシュタル様、最後にエナミ・ストーリーから貴方様にメッセージを伝える様に言われています」

「イナミからメッセージだと?」

「はい、私の雇い主にこう伝えれば、分かるはずだと言われて私には理解出来ない言葉で一言呟かれ、何らかのスキルか魔法をかけられて意識を失ったのです」

「……何だ、それは?どういう意味だ?」

「はい、それが……」


 オッペンハイムが聞き慣れない古代文字をイシュタルに伝えようとした瞬間に、彼の身体に異変が起きた。


 エナミの古代魔法「 ―時の道標― 」が

発動した。










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 ここまで読んでいただいて気にいらなかったら、大変貴重な時間を使わせて本当に申し訳ない。ただそんなあなたにもわざわざここまで読んでいただき、感謝します。

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