ダンジョン管理事務局広報部によるインタビュー3
今回のダンジョン管理事務局の広報誌の記事は、サイテカ連合国のダンジョン「海鳴りの丘」のダンジョンブレイク解決に伴い実現した、ダンジョン管理事務局広報部の名物美人インタビュアー、カティア・モントーレと、謎多きダンジョン調査課調査主任「ダンジョンマスター」ミヤ・ブラウンとのやり取りを録音したものの書き起こしになる。
カティアにもどうにも気乗りしないインタビュー相手はいる。それはインタビューに対して後ろ向きで仕事しての義務感から受けている人では無い。そんな事よりも相手と喋る気があるが、そもそもそのインタビューで公表していいラインが分かっていない相手だ。そして今回のミヤ・ブラウンはどう考えても後者だった。
全く広報としては使えないインタビュー相手とのやり取りを、今回は非公表としてどのようなやり取りがあったかだけ、ここだけで報告する。
「さて今回は異国の地サイテカ連合国でダンジョンブレイクを解決してきたダンジョン調査団の中から、今や知る人ぞ知る、謎多き我らが誇り高き同僚、「ダンジョンマスター」ことミヤ・ブラウンにお越しいただきました。本日はどうぞ宜しくお願いします」
「どうもッス」
「さて、本日はインタビューに当たって幾つかの質問を用意させていただきました。予め質問内容はご了承いただいてるかと思いますが、大丈夫でしょうか?」
「えぇっと、事前に確認はしたッスけど、答えていいのか怪しいのが幾つかあったので、答えられる範囲は答えるし、答えられない所はところはノーコメントッス」
「ありがとうございます。今日は何故かボディーガードみたいな屈強な男性が、ミヤさんの後方にいるのが見えますが、こちらとしてはダンジョンの最前線で活躍する女性職員の代表としてインタビューを受けてもらっただけで有り難いので、ノーコメントも構いません。では早速、第一問。今回のダンジョンブレイク解決に当たって最大の難関は何処にありましたか?」
明らかに第一保安課課長のゴードン・ウエストがサングラスはしているもののニコニコした顔で、ミヤの後ろに控えていた。
最初の質問を聞いた後に何故かミヤは後ろに控えるゴードンに耳打ちし、彼が頷くのを確認してから、質問に答える。
「そうッスね、ダンジョンを最初に把握する所が大変だったッスね。自分はそれしか能が無いので、ちゃんと把握できるか緊張したッス」
「分かりました。では関連して第二問、その緊張から解放されるためにダンジョンブレイクの解決の為に支えになったものは何でしょうか?」
再び後ろに控えるゴードンにミヤは耳打ちし、彼が頷くのを確認してから、質問に答える。どうしても間延びするため、ここもカットねと、カティアは作り笑顔の内心で舌打ちする。
「まず自分的にはダンジョン調査団の一員として、ダンジョンブレイクにやるべき事をやるっていう覚悟があった事ッスね。後は…」
「カティア嬢、公式ではここまで使って下さい。ここから先はカットで」
ゴードンはミヤの答えをニコニコしたまま落ち着いた声と態度で遮り、カティアに次の質問を促す。ミヤは「あれ、ゴードンさん?ここまでッスか。しょうがないッスね」とイマイチ納得していないものの、次のカティアの質問に構える。
カティアとしては今回のインタビューは恐らくお蔵入りになる事をここで覚悟し、悟りの境地で次の質問をした。
「……では第三問、言える範囲で構わないのですが、今回のダンジョンブレイクの最終フロアでのモンスター討伐はどのようなものでしたか?」
「う~ん、読者にはつまらない解答かも知れないッスけど、実際2000匹位いたプラチナランククラスのモンスターとの戦闘はほぼ瞬殺ッスね」
「瞬殺ですか?!それはどうやって?」
流石にここまで馬鹿げた事を「ダンジョンマスター」と呼ばれる程の人間が嘘をつく筈が無いとカティアは食いつく。どれだけの事が他所の国で起きたのかを楽しげに話そうとミヤはしていた。
「それは自分のバカンスの次いでに同行したエナ……」
「カティア嬢、今回はここまでです。ミヤ・ブラウン主任は次の仕事がありますので、申し訳ありませんが退席いたします。ありがとうございました」
「……はぁ、ありがとうッス」
二人して頭を下げてくるが、カティアには全く誠意は伝わってこなかった。しかも言いたい事を何も言わせないゴードンとミヤのコンビはダンジョン管理事務局の上の方から何某かの大きな制約がある事しか彼女には分からなかった。
「そうですか、残念!では本当に最後の最後に、今後のダンジョン調査課の調査主任としての目標をお願いします!」
「そうッスね、自分としては史上初の五大ダンジョン制覇のサポートッスね。やっと五大ダンジョンのマップ作成が何処も五十階にもう少しで到達しそうだし、頑張ってやっていくッス」
「ありがとうございます。質問は以上になります。ではミヤさん、次回はもしかしたら、見事五大ダンジョン制覇のサポートが出来た際にインタビューをお願いしますね!」
「そうッスね、その時にはきっと自分、別の発表もするしお楽しみにッス」
「お〜っと、最後に意味深なコメント!!インタビューありがとうございました」
このガチガチの規制だらけのインタビューは結局の所、記事にはならなかった。カティアとしては非常に悔いが残ったが、その後に起きたエナミ・ストーリーの国家反逆罪の顛末を聞いて、ホッとしていた。
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ここまで読んでいただいて気にいらなかったら、大変貴重な時間を使わせて本当に申し訳ない。ただそんなあなたにもわざわざここまで読んでいただき、感謝します。