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閑話3 レラ・ランドールは努力する

 レラは今回のサイテカ連合国へのダンジョン調査団の仕事で、両国で非常に評価されていた。これは曲者だらけのダンジョン調査団の面々をラミーを差し置いて纏めていたのが評価されていた。(元々ラミーには纏める様なつもりは全く無かったが)


 こうやってレラ自身の管理職としての能力を予定外の形で発揮してしまったが、彼女はそれがあくまでもシチュエーションが限定されるもので、自分の力の無さを十分に理解していた。


 分かりやすく個人の実力が問われる保安部第一保安課に所属している為にレラより強い部下もおり、自分がまだまだ弱いという事を思い知らされてばかりだった。


 この日も保安部にはよくある修練場で課長や部長達がいる前でトレーニングに励まざるを得ない中で、つい弱音を吐きそうになっていた。


 しかしライン地方のダンジョン「海鳴りの丘」でダンジョンブレイクをあっさり解決するエナミを思い出して、何とか踏ん張っていた。そんなレラを見て、現第一保安課課長のゴードン・ウエストはニコニコしたまま声をかける。


「レラ課長補佐はやっぱりダナン付きだったから、根性があるね。もう少しトレーニングしておくかい?」

「はい、頑張ります!!私は負けたくない相手がいるんで、もう少しやらないと……」

「ライバルでもいるのかい?」

「はい、普通にやったら敵わないですけど、私は彼女に負けたくないんです」

「ほう、ランドール家の長女にして、このダンジョン管理事務局の中でもだいぶ速い出世街道を進んでいる君がそこまで言うなんて、よっぽどの人材だね」

「ええ、冒険者の方なんですけど……」

「冒険者?」


 ゴードンは少し言い淀むレラを見て、あまり深くは聞かないほうが良いかと思いながらも、彼女のモチベーションの源がそこにあるのが分かっている為、ついつい追求してしまう。


「はい、私が勝手にライバルと思っているのはサーヤ・ブルックス。「始まりの七家」のブルックス家の長女にして「春雷」の二つ名を持ち、今最年少のプラチナランク冒険者としてメリダダンジョンの五十階を攻略するほど活躍している才媛です」

「あぁ、あの……」


 ゴードンはニコニコした表情のまま少しと言うには足りない程に今回の質問をレラにした事を後悔していた。自分が関わった事は全く無いがサーヤの若くしての活躍ぶりは自分の耳にも届いていたからだ。


 ましてや「始まりの七家」であるブルックス家となれば要人警護で関わる事も十分に有り得たから、自然と第一保安課としても情報を集めていた。実際に彼はサーヤ以外の面々とは何度か警護対象として関わった事もあった。


 当代当主のケビン・ブルックスは傑物であるのは十分に分かっていたが、三人の息子達もそれぞれに癖はあるが、その商人としての能力の高さは周りに知らしめていた。


 他方で、サーヤに関しては十二才を過ぎた頃から急に冒険者として活動する為に、ダンジョン管理事務局に関わる様になったので、別のルートで第一保安課として情報が入ってきていた。


 十分にサーヤがどの様な怪物か分かっていたゴードンはレラにどんな言葉をかけるか言い淀んでいた。


「レラ課長補佐、君には君の……」

「分かってます。私にはサーヤ・ブルックスさんみたいな才能が無いのは。今回のサイテカ連合国でのダンジョンブレイク解決の為に「海鳴りの丘」の攻略を一緒にした時にそれは痛感させられましたから。でも私は負けたくないんです」


 「海鳴りの丘」では、最初のうちやモンスターが氾濫していない所では二人で前衛を務めていた為、実力差やダンジョンに対しての実践的な理解の差を分からさせられていた。


 特に実践的な理解の面では、レラ自身がダンジョン攻略課で冒険者相談窓口をやっていた為に、少なくともサーヤに負ける事は無いだろうという自信があったが故に、その点でも劣っているとはっきりと理解させられて、落ち込んでしまいそうになった。


 それでも彼女は前を向いて、自身の実力を付けようと思っていた。何故ならそこにはエナミ・ストーリーがいたからだ。あれ程の才能と能力を持っているにも関わらず、自身の出世には全く興味を示さない彼を見て、自分の悩みの小ささに恥ずかしくなるくらいだった。


 エナミが自分の人生を満喫している姿を見て(彼自身もこのバカンスが初めての事だったが)、レラはランドール家の長女としてこのアルミナダンジョン国の人質としてやっていくしかないと考えていた自身のあり方を見つめ直す良い機会になっていた。


「サーヤさんはダンジョン調査団での帰りの列車で、史上最年少のオリハルコンランク冒険者を目指すと宣言されてました。そんな彼女に私は少しでも追いついて、自分の力のあり方を示したいと思っています」

「そうか……、ならば私が君を止める訳にはいかないな。頑張り給え」

「はい!!」


 若者が無茶をするのはどの時代も特権だが危うさも同居する。しかしレラはその家柄やランドール家の状況から、あらゆる危険などは排除されていたから無茶も分からないのだろう。


 ゴードンはその考えに至ってからは、レラがどれだけ無理なトレーニングをしていても決して止める事は無かった。


 何故なら彼女のライバルはそれ以上の無茶なトレーニングをしているであろう事を想像できたからだ。









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 ここまで読んでいただいて気にいらなかったら、大変貴重な時間を使わせて本当に申し訳ない。ただそんなあなたにもわざわざここまで読んでいただき、感謝します。

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