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ダンジョン攻略アドバイザーは今日も呟く。  作者: 煙と炎
第三章 相談窓口は休みも働く
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第四十一話 エナミはゆっくりしたい 4

 ジエ・パラマイルを名乗った少女が消えた路地を二人は追いかける事無く、その場に佇む。当然スラム街の中である為、汚い街並みではあったが人が行き交ったりして騒然とする事無く、沈黙が場を支配していた。


「ラミーさん、ありがとうございました。それにしてもお早いお着きですね。というか場所がよく分かりましたね?」

「いやいやいやいや、エナミなら分かってるだろ?僕の場合は才能「危険予知」が勝手に反応するんだからさ。僕がライアン様と今後の「海鳴りの丘の」ダンジョン管理についてのやり取りしてる最中に突然嫌な感じがしたからね。そのタイミングで才能「危険予知」を使ったら、ここで何だか楽しそうな事が起こりそうなのが分かっちゃったから、ライアン様にお願いして急遽やって来たって訳さ」

「流石の「危険予知」ですね」

「まぁまぁ、君の事だから別段心配はしてなかったんだけど、僕の才能が反応した以上は何らかのダメージをみんなが喰らう可能性があったからね。慌ててやって来たら、何とあのナランシェ連邦の魔女が相手だと分かったから、こりゃちゃんと対応しないと本当に嫌な目に会うって分かったし」

「ナランシェ連邦の「魔女」……ジエ・パラマイルって名前は僕も知ってましたけど、あんな少女だとは知りませんでした。まんまと騙されて、驚かされましたよ」


 ラミーはそんなエナミのちょっとびっくりした顔に対して、苦笑いする。それ程にエナミ・ストーリーがびっくりする顔を見る機会がダンジョン攻略課にいた時には、滅多に見る事が無かったからだ。


「おっとおっと、流石のエナミもあの「魔女」については知らなかったかい?彼女はああ見えて、もう80歳を超えてるんだよ?知らないとまんまと騙させるよね。だからこその「魔女」なんだろうけどさ。ちなみに僕がナランシェ連邦にいた小さい頃、今から二十年以上前に初めて彼女を見かけた時から全く容姿については変わってないね」

「ジエ・パラマイルはそういう才能って事ですか?」

「そうだねそうだね、間違いなくね。時間魔法に特化してるって噂はあるけど、彼処まで幼い容姿を長い間維持できてるって事はその魔法適性もあるとは思うけど、他の事にも特化してると思うけどね。じゃなきゃ、態々このタイミングでこの場にいて君を殺そうなんて思いつかないし、実行できないでしょ?」

「そうですね、間違いなくラミーさんと近しいタイプの才能があるとは思いましたよ」

「だろだろ?それに君なら最初にこの地で彼女に会った瞬間に分かったんだろ?こいつは違うなって。「鑑定」なんて使わなくても彼女の違和感に気がついた筈だよね」


 ラミーは迂闊なエナミという言葉は信じられなかった。いくら念願のバカンスタイムになったとはいえ、あのダンジョン攻略課の冒険者相談窓口での彼の力を知っているラミーからすれば、あれ程の危険な存在を認識できない訳が無いと考えられたからだ。


「そりゃあ、一応はライアンのお膝元ですけど、外国ですからね。とはいえ、いきなり少女が手を引いた時は騙されても良いかなとは思いましたけど、違和感はありましたよ」

「じゃあじゃあ、分かった上で彼女の罠にはわざとハマったのかい?」

「ええ、バカンス中で気分がめちゃくちゃ良かったですからね。パラマイルがこのスラム街に僕の手を引き、あの店に連れてくる時には周辺の人間が、明らかに僕を囲んでその範囲も狭くしていった事も理解していましたしね。でも別に僕の相手では無かったし」

「すごいねすごいね、エナミは流石の自信だよね。んで、ジエ・パラマイルに狙われる理由に心当たりはあるのかい?」

「う~ん、どうだろう……」


 未だに静か過ぎるイーストケープのスラム街に二人の会話は響くが、辺りを見て会話を続けながら表通りへと歩き出した。ラミーは明らかに道が分かっているようで、スムーズに路地から店が立ち並ぶ通りへと出られた。


「それで思い出した?外国の端の地で見ず知らずのナランシェ連邦の魔女に暗殺されそうな程には付け狙われる様なイベント?」

「全く心当たりが無いですね……」


 全く自分の暗殺されそうになった事には悩んでいない素振りで、エナミは通りの店を楽しそうに冷やかす。つられてラミーも楽しそうに家族へのお土産選びもしながら付き合いう。


 表面上はバカンスモードに戻ってはいるものの二人の思考の中では何故このタイミングであれ程の大物が接触し、剰え自身らを殺すほどの行動を取ったのかについては理解出来ていなかった。


「……駄目ですね。本当に心当たりが思いつかない。ナランシェ連邦のあれ程の大物に狙われる程の立ち位置じゃ、アルミナダンジョン国の中では僕は無い筈ですよ。やっぱりまだ自分の知らない情報がいくつか有りそうです。しょうがないか。アルミナダンジョン国に帰って調べるしかないか」

「う~ん、どうだろうどうだろうね。エナミは自分の評価が低すぎやしないかね。十分に君の行動や功績は他所から見たら分かりやすい程には脅威だと思うけど。それに君の家であるストーリー家の事を考えたら……」

「それこそ中央大陸の秩序を破壊する行為では?ナランシェ連邦の外務大臣が他所の国みんなを敵にまわすような事するとは思えないんですよね」


 エナミとラミーの二人は解けない疑問を口にしながらも、ちゃっかりお土産は買い込んでいた。









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 ここまで読んでいただいて気にいらなかったら、大変貴重な時間を使わせて本当に申し訳ない。ただそんなあなたにもわざわざここまで読んでいただき、感謝します。

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