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ダンジョン攻略アドバイザーは今日も呟く。  作者: 煙と炎
第三章 相談窓口は休みも働く
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第三十六話 ダンジョンでは笑えない 5

 朝から万全の体調でやって来たエナミ達5人はダンジョン「海鳴りの丘」に入って早々に、ミヤの才能「マップ作成」を使わせ、ダンジョンの内部の状況を確認した。


 昨日攻略した三十階まではダンジョン内のモンスターも沈静化している事を確認した後で、ダンジョン研究所の転移装置を使って昨日三十階でフロアボスがいた巨大なマップまで戻ってきた。

 

 エナミ達はダンジョンの三十階に転移した直後に油断なく周囲を見渡して、昨日消滅させたモンスター達の復活が起きていない事を確認してから先へと進み出した。


 エナミは当たり前の様に「海鳴りの丘」のダンジョン攻略の三十階以降もサーヤやレラに譲る事無く前線に立ち、ゴールドランク冒険者対応クラスのモンスターどもを鼻歌を歌いながら、殲滅していった。


 その光景は奥に進むにつれて数と凶暴さが酷くなっていくモンスター達とは対照的に、全く変わらないままで一言二言彼が聞き取れない魔法を呟く度に、膨大な数のモンスターが目の前から消えていくのを周りは半ば呆れて見守るしかなかった。


「……エナミさんがあんな風にしていると、このまま「海鳴りの丘」のダンジョン完全攻略しちゃいそうね」

「サーヤさん、この場ではそういう冗談にも聞こえない事は言わないようにしてもらっていいですか?そんな事したら私達の後ろにいるライアンさんがとても困ってしまいます」

「いえいえ、レラさん。僕としては構わないですけど、アルミナダンジョン国とサイテカ連合国の関係性が大きく変わってしまうので止めて欲しいって感じですね。まぁ、ミヤが昨日の内に釘を差してましたから大丈夫だと思いますよ」


 あくまでも領主であるライアンの護衛としてサーヤとレラは彼の側にいるだけで周りに何も警戒する必要が無かった。モンスターにはエナミが、ダンジョンの罠やギミックにはミヤが、それぞれどうしょうもなく優秀である為、二人は警戒心を継続して持てないでいた。


 そんな二人を慮ってか、ライアンは王立アカデミーの頃の昔話を始めた。


「エナミのヤツは王立アカデミーの頃から五大ダンジョンに実習に行くととても楽しそうにあんなふうに鼻歌を歌いながら、蹂躙してましたね」

「ライアンさんは何がきっかけでエナミ先輩と仲良くなったんですか?」

「うーん、何がきっかけって訳じゃ無いけどエナミは至上稀に見る、入学試験満点での王立アカデミー首席として浮いていた上に、前からあんな風だから別に多くの友達を必要とせずにマイペースにしていたんだよね。だから、どうしてもグループ実習で人が足りなくなるから僕が彼とマリーという二大エリートの常識を教えるというお守り役として加わったのが、始まりかな」

「エナミさんはやっぱり変わり者だったのね」


 ライアンは苦笑いしながら答える。


「久しぶりに会った僕から見たら王立アカデミーにいた頃の方がエナミは尖ってたよ。あの頃はマリーと僕が居なかったら、もしかしたら王立アカデミーを辞めていたかもしれないからね」

「先輩、そんなに問題児だったんですね」

「いや、エナミは問題児と言うより彼は王立アカデミーに来るより修練場とダンジョンを往復する時間が長かったからね。単純に単位がギリギリになってしまうから、僕らが引きずってでもアカデミーに引っ張っていっただけだよ」

「それだと当時って……」

「あぁ、ただダンジョンを破壊しつくさんとする狂人さ」


 三人は会話していながら目の前で繰り広げられる、ただの一方的なモンスターの虐殺は終わりを迎えて次の階への階段が姿を表していた。


 その階段を何のストレスも疲労も無い顔で降りていくエナミと、ため息を付きながらも付き従うように後を追うミヤを見て、サーヤとレラは王立アカデミー在籍時のマリーとライアンの苦労が想像が出来てしまい、苦笑いしながら付いていった。


 当然その後も「海鳴りの丘」を四十階を超えて攻略していても、プラチナランククラスのモンスターがどれだけ出てこようとも、エナミとミヤのコンビは大した問題は無いと言わんばかりにサクサク進んでいった。


 頻繁にある罠やギミックには後から付いていく三人は多少苦労させられたが、極力前を行く二人が破壊や安全性の担保をしてしまった為に、八割方無効化してしまった為に、命の危険を感じるような事は無かった。


 そうして現状の記録である四十二階をあっさりと更新して、更に四十五階のフロアボスクラスも一瞬で消し飛ばして進んでいった二人も、四十七階に降りていく階段の途中でピタッと立ち止まる。


「どうしたんだ、エナミ?」

「いやぁ、一応ライアンをダンジョンブレイク解決の証人にしないといけないからさぁ。追いつくのを待ってみたって訳よ」

「本当か?」

「本当ッス、ライアン先輩。この後、階段降りた瞬間にモンスターに囲まれそうだから、先に注意してるッス」

「ミヤ、教えてくれ。四十七階はどれくらいの規模のモンスターがいるんだ?」

「私が分かる範囲で2000位ッス。もしダンジョンから出てきたら、イーストケープは3日もあったら終わりッス」

「なっ……」


 あまりのダンジョンブレイクの規模に黙ってしまうライアンを前にしても、エナミはテンション高めに鼻歌を歌ったまま、階段を降りていく。


「大丈夫大丈夫、今度は今までとは違う趣向でやるからちゃんと見てくれていて。これが終わったら、俺はいよいよバカンスの始まりだからな。分かりやすい抑止って奴を見せてやるから」


 そうライアンに言い放ち、上機嫌で降りていくエナミの後ろ姿は、確かにダンジョンに取り憑かれた狂人の姿だった。












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 ここまで読んでいただいて気にいらなかったら、大変貴重な時間を使わせて本当に申し訳ない。ただそんなあなたにもわざわざここまで読んでいただき、感謝します。

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