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1.猫が嫌いな女はいない

「なんだったんだろうなアレ」

謎の光に包まれて数秒、気がつけば柔らかい草の上に寝転がっていた。

腹の上にいる虎丸が降りてきて辺りを見渡す。それに続けて俺も辺りを見渡してみた。

「完全に……森だね」

そういえばどんな世界かどうかすら聞いてなかった。仮にモンスター蔓延る環境だと出会った瞬間即詰みも有り得るなぁ。

そんな感想を抱きいていると、轟音が鳴り響き、巨体が目の前に着地した。それはただ一言「ドラゴン」で表される物だった。

「あっ……これ死んだのでは」

なんの能力も授かって無いことは事前告知されている。それにいくら若返ったと言えどただの一般人だ。こんなデカフツに勝てるわけが無い。

虎丸は臆せず挑発を行っている。お前いっつも強気だもんな……。

「助けてー!!!!」

とりあえず叫んでみた。日本語が通じる人間がいるとも思わないけど。人の声を聞けば駆けつけてくれる者がいるかもしれない。ドラゴンは虎丸の方を警戒している様子で何か攻撃をしかけてくる様子はない。

逃げる選択肢もある。しかし危険な生物に背を向けると追ってくる可能性が高く危険ということを動画サイトで予習済みだ。虎丸をゆっくりと抱えあげ少しづつドラゴンから後退して行こうとした。だが現実は非情である。10歩程度下がった所で突如咆哮を上げドラゴンが突っ込んで来る。

「誰でもいい!!!助けてくれ!!!」

非力な俺はただ声を上げる事しか出来なかった。ドラゴンの口が眼前に迫るその瞬間。目に見える強烈な斬撃が俺を救った。

古龍エンシェント、久しく人を見るからと言って簡単に襲うな。私のような切れ者かもしれんだろ。」

ドラゴンは先程とは比べようのない速度で後ずさる。

「この状況で攻撃を続ける訳にもいかないだろう?私と一太刀交える覚悟が無いなら去ってくれ。話がしずらい」

ドラゴンは少し頷くと文字通り消えた。紋章っぽいのが見えたので魔法なのかもしれない。

「知り合いが悪い事をしたな。私はエル。人間だ」


「なるほど、水女神の宇宙から来られたのか」

俺の話を驚くほど素直に聞き入れてくれた。

「疑問に思わないんですか?」

「ああ、知り合いに高位の魔女が居てな。奴はこの宇宙の主である土女神と会話した事があるんだ。」

序盤からとんでもない人と巡り合ってしまったようだ。

エルは続ける。

「それにこの森は神域と呼ばれる危険な地だ。まず君たちのような一般人は入って来れない。更にだな」

1つ気になることがある。と言い手に持っている紙を見せてくる。そこには前いた世界には無かったであろう文字が刻まれていた。

「読めないです。」

「だろう?けど会話はできる。これも魔女が考察していた通りだ」

嬉しそうにエルは言う。

「この世界に来たばかりで行き場も無いんだろ?とりあえず私の国に来てくれ。安全は保証する。」

こうして俺たちはエルの国へと行くことになった。


エルの国オーメンはよくある城塞都市だった。もう見た。

体感徒歩30分くらいでついたのだが、そんな近隣の森にドラゴンが居ても大丈夫なものなのだろうか、心配だ。

「とりあえず私の宿舎に来るが良い」

街はそこそこに賑わっておりドラゴンを抑えた少女が通ったとて気にされる様子はない。エルは街に馴染んでいる様子であった。

通されたのは一軒家。宿舎と言っていたので自宅では無いのかな?

「私は軍人なのだが少々事情があってな、部隊をひとつ持たせて貰っている」

彼女の堂々とした佇まいには相応の説得力があった。ドアを開けて手招きされたので招かれるままドアを通る。すると

鍵が閉められた。

「さて、動くな」

その殺気が本気でない事はすぐに分かった。仮に本気なら俺は既に死んでいる。俺が立ちすくみ動けない程度の威圧に留めているのだ。

「その小動物について詳しく教えろ」

先程までとは打って変わって命令口調となり。少しの怒気を含んだような声を吐く。

「っ……こいつは虎丸、猫だ」

「……?聞き取れないな。それはわざとか?」

「そんな余裕なんてない!猫を知らないのか?」

「……なるほどな」

そう言うと殺気が緩み解放される。金縛りのように動けなかった俺の体は自由を手に入れたが腰が抜けてしまった。

「ほんにゃくコンニャク」

「……どういうこと?」

「変な単語に聞こえたか?私の予想が正しければ貴様の言葉は自動通訳されている」

「……なるほど」

一瞬この世界にもドラえもんがあるのかと思ってしまった。

「異世界人の証拠だな。異世界の住民は世界に慣れるまで言葉が同じ世界の住民に伝わるようになる。その結果表現がおかしくなることも多々あるのだ」

有難いシステムだ。

「逆説的にこの世界に存在しない、翻訳できない単語は伝わらないという訳だ」

「……この世界猫居ないの?」

「ああ、初めて見た」

虎丸は殺気にあてられ泡吹いて倒れてる。お腹はめいっぱい動いて呼吸してるようなので大丈夫だろう。

「少し無礼をしたな。気になることが少しあったのだ」

「いやいや、俺たちは外様なんだからリスクはつきものだよ。話せることはなんでも話すよ」

「そうか、なら1つの疑問に答えてくれ。そいつの魅力度はどうしてそうなってる?」

魅力度?そりゃ虎丸は魅力的だけどどういう事だ?

「あぁ悪いな、少しステータスを覗き見させて貰った。大半は想定通りの数値だったのだがその小動物だけはおかしい数値だったんだ。」

「そりゃどうして」

「……魅力度がカンストしている。魅力に特化した種族でさえその半数程度の数値しか出ない」

どうやら虎丸のステータスがバグっていたらしい。

「本来魅力度は意味の無い数字なんだ。それが、それだけがカンストしていた。これは異常だ」

「……ん?それだけ?」

「ああ、異世界人はこの世界に馴染んでないから、基本的に全てのステータスは1になる」

え、それって。

「俺のステータス全部1?」

「ああ、1だ。スライム以下のゴミだな」

……これ自動翻訳だよな?ゴミは傷つく。

「安心しろ、ステータスは全てを表す訳じゃない」

「どういう事?」

「じゃあ解説してやろう、そこの椅子に座り直せ」

こうしてエルのパーフェクト異世界教室か始まった。


「つまるところバトルステータスと一般ステータスがあるということ?」

「まぁ大体そうだな」

この世界では魂の体力と肉体の体力があるらしい。魂の体力が0になると肉体ごと霧散してしまう。肉体の体力は多少削れても大丈夫だけど魂の体力も削れていく。そんな関係だ。

「魂にダメージを与えるには敵意を持つ必要がある。じゃれ合いで殴って死んでたらキリがないからな」

敵意を持って攻撃する事で戦闘に移行し、戦闘でのみステータス上の体力は削れていく。

「つまり俺が今敵意を持って攻撃されたら?」

「まぁ死ぬだろうな」

逆に敵意を持たれて居なければ大丈夫らしい。そして

「魅力度は相手に敵意をどれだけ持たれないかの数値だ。魅力度が高い相手には敵意を持ちにくくなり、そもそも攻撃が出来なくなる」

虎丸に対しては攻撃が難しいらしい。

「だが肉体へのダメージは有効だ。例えば適当に岩を投げてどこかに反射させ当てれば攻撃は通る。」

虎丸はベットの上に寝かしつけた。想像以上にリラックスしている。凄い大物感。

「これで大体の説明が終わったな」

「ありがとう、とても助かる」

「……して、授業料はどう払う?」

「え」

対価を取られる事を想定してなかった。

「……まぁ何も持っていない者に金銭を求めるのも浅ましいだろう。ここはあの猫?とやらをモフらせる事で手を打ってやる。」

なんか撫でたくてうずうずしている顔に見える。ここで拒否したらマズいだろうしなぁ……

「虎丸さんや、起きてくれ〜」

しぶしぶ交渉する。虎丸はすっと目を覚ますとひとつ伸びをした。

「このお姉さんがお前のこと好きにしたいって言ってるんだが、頼まれてくれないか?」

グルル、と言い少し嫌そうな虎丸さん。ごめんよ、この先生き残るために必要なんだ。

「アノー、イイッテイッテマス」

「そうか!なら失礼する!」

目にも止まらぬ速度で虎丸を抱えあげ奥の部屋へと言ってしまった。流れで書き置きのようなものがテーブルに置かれる。

『そこにある仮眠ベットで寝ておいてくれ、今は外に出ない方がいいし下手に食べない方が良い。』

達筆で書かれてあった。虎丸の行く末を憂いつつもどうしようもないので素直に寝た。


「また変なもん拾ってきたんですかぁ!あの隊長は!」

大声で叩き起される。外はすっかり夜になっている用で小さなランプが光源として部屋を照らすのみであった。声の主は小柄な少女でかなりの量荷物を背負ってるようであった。

「お邪魔させてもらってます」

「これはまたご丁寧に……」

ベットから身体を起こし会釈をするとしっかりとした礼を返してくれた。悪い子では無さそうだ。

「エルさんはお部屋ですか?」

「うん、俺の相棒をもふもふしてる」

「えぇ!?それ一大事では!?相棒は命と等価なんですよ!?」

想定以上の驚きようである。それにしても命と等価とは大袈裟な。

「……もしかして相棒の事をご存知でない?」

「異世界から来たんだ。この世界の文化には疎くて」

「異世界人ですか……まぁ隊長が拾ってくる人型となるとそのくらいありそうですね」

いそいそとコップに水をいれてくれる。

「相棒はですね、魂を基に誓約を結んだ者達を言います。人間の相棒としては鳥が多いですね」

ふっ、と肩に感触を感じ振り向くとフクロウが停まっていた。だがほとんど重さを感じない。

「その子は私の相棒であるふーさんです。首にリングが着いてるでしょう?それが相棒の証になっています」

確かに首に荘厳なリングが撒かれている。

「どんな生物であろうと、相棒の契は結ぶ事ができます。人間以外でも長年の愛着と絆があれば結ばれます。気がつけば相棒になります。相棒を持った人間は一人前扱いされるって感じですです」

「ん?気がつけばってリングはどうやってできるんだ?」

「寝てるうちに生えてきますね」

生えてくるんだ……

「基本的に相棒同士は一心同体、片方が死ねばもう片方も致命傷を受けます。余程の精神力が無いと生き残ることは出来ないっすね」

「そんな重いの!?」

「どちらか片方が天寿で魂の霧散すれば回避できます。まぁ普通に生きてれば天寿まで死ぬことは無いですね」

私たち軍人くらいしか危ないことはないです、とのこと

「多分この世界に慣れたら自称相棒から本物の相棒に変わると思います。とにかく今はこの世界に慣れることっすね」

差し出された水を少し飲むととてつもない吐き気に襲われた。

「まっず!」

「そりゃそうですよ、貴方たちの世界でも異国の水は不味い事があるでしょう?異世界のモノなんて早々受け付けません、なんならその水で死んでもおかしくなかったですけど運が良い。早くそれのんでもう1回寝てください」

俺は1時間かけてコップ1杯の水を飲み、苦しみながら眠りについた。


目覚めるとエルが台所に居た。

「おはよう、昨日説明は受けただろう?この世界になれるため毒性が少ない植物のスープを作った」

薄緑色したスープがテーブルに置かれている。

「我々だと味も感じないような薄いスープだが、貴様らにとっては苦痛を伴うものかもしれない。少しづつ慣れていこうか」

サジで少し掬い飲んでみる。えげつなく不味い味だが昨日水であそこまで酷かった事を考えるとエルの料理が下手な訳ではなさそうだ。

虎丸は平気な顔で水をちびちび啜っていた。

「もしかしたら小動物の方は神のお気に入りかもしれん。順応する速度も早そうだ」

まぁ無理やりにでも転生させるくらいだもんな……と納得感はある。

亀のような歩みでスープを飲んでいると、エルからこんな提案があった。

「いつまでもここにいる訳にもいかんだろうし、貴様らには独り立ちしてもらう」

「独り立ちと言っても……俺のステータス全部1ですよ?」

「この世界に慣れたらものによっては2か3に上がるだろう。しかし仮に1のままだったとしたら早く生き抜く術を身につけないといけない、違うか?」

確かに今の俺は戦うどころか敵意を持って石を投げつけられただけでも死にかねない。

「そこでだ、貴様らにはダンジョンに出向いてもらう」

「ダンジョンて、お宝がある感じのアレですか」

「お宝と言えばお宝だな、魔法を使うために必要なものが手に入るからな」

魔法が使えるようになる、というのはとても魅力的だ。そりゃ異世界に来た以上は誰しも最強能力が欲しいからな……

「安心しろ、小さな子供が遊び感覚で行けるダンジョンだ」

「……それ本当にダンジョンなんですか?」

「周期も5-6時間で想定探索時間も1時間を切る。健康維持の散歩みたいなものだと思って行ってこい。ついでにタール。お前も着いてってやれ」

「はーい」

昨日の女の子がパンのようなものをもぐもぐしながら手を挙げていた。

かくして、俺の初めての冒険が始まった。



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