第五話 今まで見てきた夢は、これから起こる未来の予知夢だったのか
そうして、エルンストとザビーネの婚約はそのままに、ただ、ザビーネが王宮に来ることが無いまま、貴族学園に入学する日がやってきた。
エルンストは痩せた。頬はげっそりとこけて、目もくぼんでいた。
入学式であれば、ザビーネに会えるだろうか……。夢がおかしいことを、聞いてもらえるだろうか……。
入学式の行われる講堂に向かって行った時に、エルンストは「ちょっと待ってねっ!助けてあげるからっ!」という軽やかな声を聴いた。
エルンストは見た。
薄桃色の髪をした可愛らしい少女が、木の上で震えている猫を助けようとして、その木に登っていく姿を。
そして、その先の未来をエルンストは知っていた。
これから、その薄桃色の髪をした少女は猫を助け、そして、木から落ち、エルンストがそれを助け、少女の名がレナであることを知り、恋に落ちることを。
「やめろおおおおおおおおおおっ!」
エルンストは叫んだ。
レナの肩がビクリと震えた。
振り向いたレナの顔を、エルンストは知っていた。
「や、やだなあもう、びっくりしたぁ」
甘やかな声を知っていた。
「やめろっ!来るなっ!貴様など、消えろっ!」
エルンストは狂ったように叫んだ。
悪夢が、現実と化したのだと、『今まで見てきた夢』は、『これから起こる未来の予知夢』なのだと、エルンストはそう確信し、声が枯れるまで狂ったように、叫び続けたのだ。
第六話は 本日20時投稿予定です