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第四話 嗚咽だけが、部屋に響く

そうして、一か月二か月と時間だけが経過していった。


王宮に登城しないままのザビーネと、レナとの夢を見続けるエルンスト。


夢の中では、貴族学園に通っているエルンストとレナが着実にその愛を深めていった。


夜、眠るたびに、エルンストは見る。


夢の中では、レナという薄桃色の髪をした男爵令嬢が「ザビーネ様に苛められた」と、涙ながらに訴えてくる。エルンストはザビーネを憎々し気な瞳で睨む。


そうして、夢の中ではあっという間に時間が経過し、エルンストは卒業パーティでザビーネに婚約破棄を叩きつける。


「私はレナと婚姻を結ぶっ!愛するレナを虐げ続けたザビーネ・フォン・メルヴァーイング!貴様との婚約は破棄だっ!レナに謝罪をしろっ!」


さらに夢は続く。


エルンストはザビーネを許せず国外追放にする。


別の夢では国外追放ではなく、ザビーネを娼館に売る。


また別の夢では、ザビーネを断罪するだけでは怒りは収まらず、あれこれと罪を捏造して、ザビーネを断頭台に送り込んだ。


集まった大勢の民衆が「殺せ殺せ」と狂ったように叫びをあげた。裾のほつれたみすぼらしいワンピースを着せられ、艶やかだった金の髪をバッサリと切られたザビーネが断頭台に乗せられる。木枠で首を押さえられたザビーネが、懸命に顔を上げ「エルンスト様……っ!」と叫ぶ。その悲痛なザビーネの叫びを、絶望に濡れたエメラルド色の瞳を、エルンストは嗤いながら、レナと共にゆったりと貴賓席に腰を掛けて眺めていた。


そうして、金属が滑る音がして、夢の中のザビーネの首が切り落とされた。


「やめてくれ……っ!」


叫びと共に、寝台からエルンストは跳ね起きた。


毎夜毎夜見る夢に、吐きそうになる。


「何なんだ何なんだこの夢は……っ!」


もはや、レナとの夢に、甘い恋に、浸ってはいられなかった。あからさまにおかしい夢。


けれど、何故このような夢を見続けるのか、どうしたら見ないで済むのか。わからないまま今日もエルンストは夢を見る。


「もう見たくないっ!やめてくれ……」


寝なければ、夢は見ない。


そう思ってはみても、起き続けることは不可能だ。そして、眠れば夢を見る。


レナとの愛に浸り、ザビーネを断罪するエルンストの夢を。


「もう……、やめて、くれ……」


エルンストの嗚咽だけが、部屋に響いた。



お読みいただきまして、ありがとうございます!

第五話は明日の8時予定です。どうぞよろしくm(__)m

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