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第二話 聞いてくれ、あの子の名前が分かったんだ!

「聞いてくれよ、ザビーネ」

「あら、エルンスト様。ごきげんよう」


王宮にて、后教育を受けていたザビーネは、突然やってきたエルンストに驚いて、それでも、流れるようにカーテシーをした。ザビーネの侍女や家庭教師も、ザビーネ同様すっと頭を下げた。


エルンストは一つ頷いた後、ザビーネの家庭教師に早口で言う。


「今日のザビーネの后教育は終わったんだろう?」

「はい。滞りなく」


家庭教師が答えた。


「じゃ、ザビーネは連れて行くよ。ねえ、ザビーネ。サロンのほうにもうお茶とお菓子を用意させているんだ。だから、また話を聞いて欲しいんだけれど」


ザビーネは、頬の上に、描いたような笑みを漂わせた。


「……例のあの夢の話でございますね?」

「そうなんだっ!聞いてくれよザビーネっ!あの子の名前が分かったんだっ!」

「まあ……」


きらきらと、まるで宝石のように輝く瞳で、エルンストは言った。


「レナ・ナルディエットっ!それが彼女の名前なんだっ!」


恋する男の瞳だ……と、ザビーネは思った。


夢に出てくる薄桃色の髪の令嬢。彼女にエルンストは恋をしている。だから、その令嬢の名を知った程度でこのように全身で喜びを表しているのだ。


エルンストは語る。

夢の中の学園の中庭で、レナの手作りのサンドイッチを食べた。あんなに美味しいものは今まで食べたことはない。

一緒に試験の勉強をした。レナは歴史や礼儀作法は苦手だが、ダンスや歌は得意なのだ。授業でパートナーとなり踊った時は胸が高鳴った。

花を贈った。ブーケのような小さな花束を。その花で押し花を作り、押し花で栞を作ってプレゼントしてくれた。


水が湧き出るように、次から次へとエルンストは語る。

どれだけレナが可憐なのか。

どれほどレナを愛おしいと思っているのか。


婚約者であるザビーネに、隠しもせずに、告げる。


ザビーネは、エルンストの話を、笑顔で聞いている。まったく動かない、張り付けたような笑顔で。





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